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第20話:脱獄開始!

「心理戦でも始めますか?」

 決まった!


 完璧だ。これは、きっといい絵になっているだろう。


 俺、かっこいいしれな.....


「うぜぇ!」

「ふがぁ、」


 何故か蹴られてしまった。


 痛い.....


 まさか、心理戦の前に肉弾戦が始まるとは.....


「とにかく早く牢屋を出ろ!」

 そういってまた看守が蹴ってくる。


 地味に痛い。


 もう、蹴られたくないし早く出るとしよう。


 牢屋の外へ出ると手錠をかけられた。


 魔術ですぐに外すことはできる。


 なんの意味があるんだ?


 まあ今回は一人で逃げる訳にはいかないから外さないが.....


「付いてこい。」

 そういって看守が歩き出した。


「早く歩け!」

 後ろから違う看守がまた蹴ってきた。


 戦争中にも礼儀ありにしてほしい。


 人権を尊重すべきだ!いや動物愛護法なのか?いやでも.....


 うん!細かいことは気にするな!


「入れ。」

 前の看守はしばらく歩き、一つの扉の前で止まった。


 全く、出したり入れたり面倒臭いな。


「早く入れ!」

 また後ろから怒鳴られた。


 そして、蹴りが飛んでくる。


 俺はしっかり避けた。


 かなり睨まれたが問題ないはずだ。多分。



 部屋の中には中々偉そうな奴が座っていた。


 顔には不敵な笑みを浮かべている。


「お前がラーファルト・エレニアか。座れ。」

「あ、はい。」

「さて、お前は技巧級二種魔術師だそうだな。」

「さあ?どうでしょう。」

「次、その返答をしたときは指を切るからな。」


 ひぃ。こわぃぃ。助けてぇぇ。


「さて、お前に聞くことは三つだ。」

「そういえば、あなたの名前は名乗らないんてすか?」

「流石、技巧級二種魔術師。この状況でその質問が出るとは。」


 何故か感心された。純粋な疑問なんだけどなぁ。


 分からないことを聞く受験勉強の癖だろうか。


「俺の名前はバースだ。」


 へぇ。そうなんだ。


 まあ、分かった所でなんだけどなぁ。


「なんか言えや。」

 バースからもツッコまれた。


 こいつ意外と話が通じるタイプかもしれない。


「まず、一つ目だがお前らの配置を言え。」


 配置?そんなもの言われてない気がする。


 強いて言えば.....

「俺が避難隊を護衛しています。」


「そんなの見れば分かるわ!馬鹿にしてんのかぁぁ!?」

 うぉっと。バースもちゃんと怒るタイプだ。


「いや、本当に知らないんですよ。情報を洩らさないためですかね?今みたいなので。」


「チッ!」

 分かりやすく舌打ちされた。


 ざまあみろ!


「では、二つ目の質問だ。お前は脱走を計画しているか?」

 正直に聞いてくるとは。面白い。


 やはりこれは心理戦なのか?


 いいだろう。のってやる。


「そんなことを計画していると思いますか?」

「思っているから聞いている。」

「ふーん。計画していたらどうするんですか?」


「うーん。牢屋の鉄格子に禁忌魔術でもかけておこう。壊れないようにな。」


「へえ。それは逃げにくそうですねぇ。どうにか隙でも作ってくれませんか?」


「作るわけないだろう。人質は出来る限り殺さんが逃がしはしないぞ。」


 バースは笑っている。余裕の笑みだ。


 まあ「出来る限り殺さん」という単語が出た時点で生かしておくのは基本確定なんだよなあ。


 それはラノベの話だけど.....


 そして「逃がしはしない」という単語は負けフラグだろ......逃げられるやつやん。


 嬉しいねえ。


 それもラノベの話だけど.....


「それじゃあ、三つ目の質問だ。お前、仲間になれ。」


「どうしてですか?」

「強いからに決まっているだろう。」


 ”強いから”か。


 俺の評価も上がったものだな。


 流石、ファルゴ公認なだけはある。


「その取引による俺のメリットは?」


「それは、お前がこちら側につかなければ分からない。決まった未来などないからな。」


 決まった未来などない。


 その通りだ。


「残念ですが、お断りします。」


「ほう、なぜだ?俺はお前らを捕らえているのだぞ?いつでも殺せる。」


「嘘ですよね?もし殺すことができても多大な損害がそちらにはでます。」


「......」

 お、黙り始めた。もっと言ってやろう。


「俺の夢なんだと思いますか?」


「さあ。世界最強の魔術師になることか?」


「自由に生きることです。」


「なら、牢屋になんかいたくないだろう。出してやれるぞ。」


「あんな牢屋、すぐに脱獄できますよ。禁忌魔術でもなんでもやって頑張って対策してくださいね。」


「チッ!」

 また舌打ちをした。よほど悔しいのだろう。


「戦争は自由と真逆の行為です。人を殺さなければならない。避難しなければならない。何かしなければならないことばかりなんです。戦争には直接、関わりません。」


「.....」


「もし、俺を仲間にしたいのなら、どうぞ頑張って力ずくで。出来るものならやって下さい。」


 そう言って俺は立ち上がった。



 ふう、言いたいことは言った。


 相手はどう出るかだな。脱獄計画を練らなければならない......


 またしなければならないことだ.....


 自由ってのは何なんだろうな.....


 まあ、とりあえずは脱獄囚になってやるか.....!!



ーーー



「いいですか?行きますよ。」


 《タワークラフト!》


「な、何!?」

 俺は、鉄格子との間に壁を作った。


 これで、簡単に衛兵は牢屋の中には入ってこれまい。


「急いで!!!」

 総勢百人以上。


 この人数で脱獄するのだ。


 全員で。生きて。



 避難民は次々と”床に開いた穴”から逃げていく。



 ”ドンドン!”


 壁を殴る音がする。


 兵士に後をつけられる訳には行かない。


 ここで足止めをする!


 最後の一人が穴の中に入った。


 ”ドガーン!”


 同時に、壁も破られる。



 バースが中へ入ってきた。


「やってくれたな。」

 床に穴が開いていて一人しかいないのを見てそう呟いた。


 百人が入っていた牢屋だ。戦うには十分な広さである。


 もっとも、百人入るには狭いが.....



 それは置いておくとして.....

 

 足止めをする。


 一人も、この穴の中には入らせない。


「こうなったからには容赦しないぞ。複数人で攻めつぶす!」


「臨むところですよ。」


 何人だろうと通しはしない!



 バースは剣を持っている。剣士だろう。


 何の魔術を使おうか。複数人に対して有効な魔術は.....


 そんなことを考えているとバースが構えた。


 俺も構える。


「ガルス流、奥義」

 《一閃》


 容赦のない攻撃......だが、遅い.....!!


 《ローリングリテイン!》


 自分の立っている場所の土を巻いて回避する。


 ガルス流、奥義の「一閃」は見たことがある。


 ”カールさん”


 ガルス流技巧剣士の彼の太刀に比べればただの劣化版だ。


「これを避けるか....!!」


 こっちも反撃を.....!!


 なっ......!!


 《ファイアーサイクル》


 後ろからウォーターガンが飛んできて咄嗟にガードする。


 そうだった。多対一の戦いなのだ。


 どうにか反撃の糸口を見つけなければ負ける。


 何か策を考えるのだ。



「うおおおおおおお!!!」

 数名の兵士が突っ込んできた。


 まずは、時間を稼がなければ.....!!


 《アイスフィールディング!》

 兵士の足の自由を奪う.....!!


 時間を稼ぐのだ.....!


 そして作戦を......


 ん?


 よくよく考えれば反撃などしなくてもよくないか?


 時間を稼げればなんでもいい。


 つまり、これを続ければいいのではいないか。


 無理に倒さなくてよい。


 無理はせず、出来る範囲で敵の数を減らす。



 何分時間を稼ごうか......


 うーん。

 

 まあ、長い時間戦っておけば何とかなるか.....



「うおおおおおおおおお!!!」

 兵士は無数に突っ込んでくる。



 何人いるのだろう......


 バースもこの兵士の中では強敵だ。


 油断はできない。


 流石に長すぎるといつか怪我を負いそうだな。


 

 「ふう。」

 俺は息をつき、深呼吸をして敵を真っすぐ見据えて口を開いた。


「何人でもかかってこい.....!!誰も床の穴には入れさせない!」

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