第205話:告げられたその名は
「何でも言ってくれ。私に分かる限りは答えよう。」
「.....まず、俺、ミサール・ノイルは本名ではない。ラーファルト・エレニアと言う。」
そう明かすが、エミルが特段驚いたと言う様な様子はない。
「ラーファルト・エレニア.....確か、カリストの街辺りで事件を起こしたな?指名手配されているはずだ。」
「.....詳しいな。」
「ああ。指名手配されてる奴は誘拐か何かをして、そいつを売ってる奴が多いからな。」
なんか、そいつらと並べられてる指名手配犯なの嫌だな.....
「なら、ラーファルト・エレニアの素性は知ってるか?」
「いいや。それに関しては知らねぇな。詳しくは調べてないもんで。」
「ラーファルト・エレニア.....俺はジャック王国の隣国、ルインド王国の出身だ。」
と、そう告げた段階で少しエミルは考え込み始めた。
「ルインド王国か.....確か、10年以上前にこの国と戦争をしたか?」
「ああ。した。その時の俺は宮廷魔法使いだったよ。」
「宮廷魔法使い.....ラーファルト・エレニア.....おおっ。思い出した。思い出したぞっ!」
とエミルは少し興奮したように話し始めた。
「確か、ジャック王国内で、当時の戦争における一番の脅威になり得るなんて言われてた。史上最年少で、ルインド王国の宮廷魔法使いになった、無詠唱魔術の使い手だな。」
「.....詳しいじゃないですか。」
さっきまで、詳しくないとか言ってたのに.....
「すまん。普通に忘れてたわ。そうか。それで捕まった仲間を取り返しに、個人として、戦争後に乗り込んだとか?」
「.....勘がいいですね。それで、俺は指名手配されました。」
「この国は、こういう姑息な部分があるからな。国民としては何も害がないから言わねえが、そりゃ他国から見れば厄介だろうな。」
この国の問題点としては、そういう他国の人権や尊厳を踏み躙る行為が、軍の中で浸透しているような部分だろう。
ただ、軍の中でバースはそこに嫌気がさして、こっちの味方になってくれたんだっけか.....
「そこで俺に質問に来たってことは奴隷についてだろうな。その戦争で連れ去られた家族を探している?どうだ?正解か?」
「はぁ.....ほんとに、勘はいいですね。」
「ああ。昔からなんだ。それで、その時期の奴隷か.....エレニアって苗字の奴隷の名前は聞いたことねぇな.....」
ま、この国には膨大な数の奴隷がいるだろうし、それは仕方ないだろう。
「何か、その時期の奴隷が多い家なんて無いですか?」
「うーん.....10年前だろ.....その頃に奴隷を沢山買ったクソ野郎がいたんだよなぁ.....誰だったか.....」
どうやら、心当たりはあるようだ。
「ああ。思い出した。」
「それは.....どこの、誰ですか?」
告げられたその名前は、食い気味に聞く、ラーファルトを黙らせた。
「魔神聖だ。」
その名は、ラーファルトのトラウマの象徴。
かつての、旅の仲間。ジェット・ノイルを殺した者の名前だった。




