第204話:全力の一段下
一対一の空間を作り出す、敵の世界構築。
サナとミアはこの世界構築の外側にいるのだろう。
「ガルス流!長剣!」
《突!》
悪くない速度だ。だが.....
《ムーブドウインド》
かわすのは容易い。
『戦闘掌握を発動しますか?』
そうだな。さっさとこの戦いを終わらせて情報も聞き出したいし、頼む。
ただし、今の俺の全力の手の内を明かさない程にしてくれ。すべて明かして使った技が漏れた時が面倒だ。
『了解。剣士において最も重要な要素は何でしょう。』
おい、クイズ形式かよ。確かにこれなら全力を出さずに出来るかもな.....
無駄に考えやがって。
『愚痴を言わずにさっさと答えてください。倒すのが遅くなります。』
足だよ…..
『はい。よくできました。ということで、足を止めましょう。土魔術でしてください。』
氷じゃないのはなんで?
『全力出さないんですよね?』
いや、そうだけどこの技は土魔術の方も二年前までは使えなかったりしたんだけどな......
《マッドステイク》
「むっ.....」
とエミルは厄介そうな反応を見せる。それもそのはず。この魔術はいわゆるまきびしだ。
忍者の撒き散らすやつだ。それから発想を得て、地面から大量のミニマッドスピアをはやす。
俺が独自に編み出した敵の機動力を奪う魔術。まあ、まきびしを知っていないと思いつくことは少ないだろう。
「ガルス流!空!」
《鳥殲!》
地面の様子をみて、エミルは上からの攻撃に切り替える。ただし、地面で走って攻撃する時よりも速度も威力も落ちている。
当然だ。空中に浮いているときの体の使い方は地面にいるときの体の使い方と全く違う。
『だから、攻撃を当てることも簡単ですよね?』
煽ってんのか?
『はい。もちろん。圧倒的な水を当ててやりましょう。』
《ウォーターフォール》
滝のような量の水が空中のエミルに直撃する。その水の質量はエミルを地面に叩き落した。
勿論、叩き落す部分のマッドステイクは解除している。運が悪いと変なところに刺さって死んでしまうからな。
『叩き落したことで、敵は自分の今いる位置を見失います。そこで、周りを見えなくしてやって下さい。』
はいはい。あれね。
《ギブラック》
習得難易度は技巧級以上。サナが冥神ハデスに使用した魔術。
敵の視界を奪い、黒の世界を見せる。
黒の世界とは、己の最も恐れる者が映る世界。
「うぬっぁ.....!!」
効果は抜群の様だ。
『視界を奪った相手に魔術を放てばゲームセットです。』
《ウォーターガン!》
エミルの頭にそれを当てる。
「俺の勝ちです。」
そう言って、エミルの視界を元に戻す。
「.....完敗だな。」
そう呟いて、世界構築をエミルも解除した。
「ラーフ!お疲れ様。」
「うん。ありがと。」
と、話しかけてきたサナにそう対応する。
「さてと、ミサール・ノイル.....聞きたいことがあってここに来たのだろう?」
本題に入るまでが早い。かなり助かる。
「ええ。」
「何でも言ってくれ。私に分かる限りは答えよう。」
そう、誠実にその男は待っていた。




