第203話:一対一
「ここは?」
「この街の役場さ.....で、エミルさんはここの奴隷撲滅課にいる。」
「ちなみに、その奴隷撲滅課って誰が作ったんですか.....??」
俺の人生において全く聞いことのない単語だ。
「もちろん、エミルさんだ。」
ですよねぇ.....
「あの、エミルさんと一緒に活動している人はいないんですか?」
と、サナが久しぶりに会話に入ってきて質問をした。
「ああ.....実はいないんだよな.....エミルさんは強いからいいんだけど、並の人じゃ、返り討ちに遭うだけだからってことだ。」
それぐらい、弱い人ではないと.....
「よし、それじゃ、入るぞ。」
とトコトコと男は入っていく。それに俺たち三人もついていった。
ーーー
「エミルさんに会わせたいやつがいるんだ。至急。」
「出来ません。正式な手続きの元、時間を合わせて、後日お越しください。」
「そんな硬いこと言わずに.....ミサール・ノイルってお姉さん知ってるだろ?頼むよ〜。」
「.....い、如何なる人であろうと要望には答えられません。それも、この街の人でないのなら尚更.....!!」
いや、少し揺れてるな。
って言っても、そんな簡単にルールを破らせる訳にもいかないし.....
「ほうっ。ミサール・ノイル。私の部屋にに来ることを許可しよう。」
「えっ。」
と後ろからした声に驚く。
気配がしなかった。
ここまで骨のありそうな相手は久しぶりだな。
それこそ、ミア以来なんて感じだろうか。
ミアは戦った時、強かった。
その時のミルと少なくとも、同等の強さはあるだろう。
「し、しかし.....」
「構わん。責任は俺が取る。」
おお、かっけぇ。
「わ、分かりました。」
「うむ。着いて来い。」
と歩き出す。言動がいかにもリーダーという感じで素晴らしい。
素晴らしいんだけど.....
「.....あまり強そうには見えないわね。」
「剣士としての筋肉はあるけど、ひょろいおじさんという感じに見えるね.....」
エミルに聞こえないようにそうしてサナと会話する。
「ここだ。入ってくれ。」
「失礼します.....」
『攻撃です。』
《ディスクリート》
キィンという音が鳴る。
「ほぉ.....やはり、腕は立つ様だな。」
「ま、一応、ミサール・ノイルだから。」
「無詠唱魔術に攻撃されても崩さないその冷静さ。その恵まれた能力を用いて、奴隷たちを解放してきたという訳か。」
今の攻撃には殺意がしっかり籠っていた。
自分に殺される様な相手では、ミサール・ノイルではないとでも言うかの様な殺意だ。
「今の攻撃は失礼ながら、ミサール・ノイル本人か試すための様なものだ。」
「ええ。私は全然構いません。」
「そうか。ならば、もう一戦、お願い出来ますかな?」
「.....構わないけど、なんで?」
「今度は俺の腕試しと言う様なものだ。」
途端に、そいつは空気を変え、狩人の目を俺に向けてきた。
この威圧.....静かに攻撃するミアとは正反対だな。
同時に右手に握る剣の先端を左手で舐めるように滑らせれば、その動きに呼応する様に俺の周囲が包まれる。
《真聖剣道》
これは.....世界構築.....
『荒野の覇者以来の使い手です。』
あれはもう十年以上前なのか.....こんなのがあるって忘れてたぐらいだ。
確かこれは.....
『自身の精神世界を基礎に物理世界にもその影響をもたらす技です。この世界内では相手が超強化されます。』
「安心しろ。俺のこの技は俺と、ミサール.....二人で一騎打ちに持ち込む舞台のようなものだ。一対一が俺の得意なもんでこんな世界構築になってるだけだ。」
そうか.....まあ、確かにこれなら建物への心配なんてないな。
もう、言葉は要らないだろう。
杖を持ち、ニヤッと俺は笑う。
カチリと音を立ててエミルは剣を構え直した。
「始めよう。」
その声と共に二人は動き始めた。




