第202話:エミルさん
「時は来た。今こそ、我の敵、ラーファルト・エレニアを地獄に落とす。」
「.....」
ーーー
「.....このカイクの街で一番の奴隷商人はどこにいる?」
フードを被った三人はそう告げた。
「あぁん?あんちゃんらは知らねぇのか?」
そのギャングの様な容姿から放たれる鋭い眼光は、己がこの街一番の奴隷商人だとでも言うようだった。
しかし、その後発された言葉は想像と真逆だ。
「この街ではなぁ、御法度なんだぜ、奴隷商売。たとえ裏市場でもだぜぇ。
「それは、何か理由が?」
フードを外しながらそう話す。
ラーファルトが話している相手に顔を見せ、警戒心はもう既にないことをしっかりと相手に見せる。
奴隷商人の可能性があったからこそフードで顔を隠していたのだ。
そしてフードを外してはサナとミアと顔を見合わせ、聞き出した話と少し異なることを確認する。
「そりゃ、エミルさんのお陰だな。十年以上前か?あの人がこの街で奴隷商売を行うやつを叩き潰していくもんだから、そりゃもうこの街からは奴隷商人は消えるってもんよ。」
「そういえば、聞いたことがございます。ジャック王国には奴隷商売の行われない街が一つ存在すると。」
ミルの情報とも一応照合は取れた。
『記録としては残っていませんが、確かに奴隷として売られる数はこの地域は極端に少ないです。』
よし、Sariがそう言うなら間違いは無さそうだ。
「この街では奴隷商人がいないのか。なら、都合が良い。エミルさんに会わせてくれ。」
「おいおい、待て待て。そんなななサクッと会える相手じゃねえんだぞ、エミルさんは。」
困ったなぁ.....あ、そうだ。
「お前、ミサール・ノイル知ってるか?」
「ん?ああ、もちろん知ってるとも。この街では、奴隷を買う奴を潰すのが、ミサール。売る奴を潰すのが、エミルで浸透してるレベルだぜ。」
なら、話は早い。
《トリックフェイス》
「俺が、ミサール・ノイルだ。」
ミサール・ノイルは一応、ジャック王国内で指名手配されている存在だ。
ただし、それはラーファルト・エレニアの指名手配ほどのものではない。
なぜなら、奴隷を解放するという行為は普通階級の人々にとっての善行であるからだ。
故に、人相書きが広まっても今まで追われなかった。
「.....ほぇーこりゃすげぇ魔術.....それも無詠唱.....」
ちなみにラーファルト・エレニアの指名手配の内容ではは普通に市民から捕まるだろう。
それを防ぐためにフードを被っているのだ。
「もちろん、タダでとは言わない。給料一年分なんてどうだ?」
「交渉成立だ。」
ニヤッとしたかと思えば、その男はついて来いとでも言う様に歩き始めた。




