第198話:揺らす
ミアに通信は通じない。
そして、忘れかけてたがこっちには救うべき奴隷が二人。
『目の前の強いとは言い難いけど倒すのが面倒な敵のことを考えすぎるのは仕方ないですが、忘れないでください。』
おっしゃる通りです.....
ということで、三分で救出する。
ウォーリアが音波を発生させる間、ミアにはその二人を守ってもらいたい。
俺は音波の効果を無効化しながら敵へ攻撃する。
ということを伝えたいのだが.....Sariさん.....
『.....了解しました。』
脳波ってやっぱりかなり便利だ.....
数秒後、戦いの中ミアの目が俺と合う。
作戦内容は理解したとでも言うようにキリッとした目をしたと思えば、剣を握り直し、敵へ向かう。
「ガルス流!重!」
《十連》
ここで連撃.....??連撃を放つミアの意図.....
この連撃の時間内で奴隷を救出しろ.....だろ.....!!
無茶言うなぁ.....連撃の時間はおよそ三秒もない。
三秒の中に、10回もの太刀を放つ十連。
その最後の剣技の後には大きな隙が生まれる。
それのカバーも考えれば救出までの時間は二秒。
「調停の技」
《霹空》
一瞬で消え、そして敵の後ろに回る。
そりゃ焦るだろうな。奴隷という人質がいたからこそ、雀の涙程度でも抑止力はあるはずだ。
そのアドバンテージが消える。
《ウォーターカット》
水の防壁を作りこれで恐らく大体二秒。
《音の炎槍!》
九連目か十連目か、丁度ミアが剣を振り下ろし終わったそのタイミングでその早さを持つ攻撃は敵へ当たる。
最も、攻撃の継続的な効果は薄い。
ただし、瞬発的に、敵の攻撃を防ぐという意味では結構大事だろう。
「.....舐めやがって......!!」
そう低く唸るように敵は言い捨てる。
奴隷を使うような奴がそんな偉そうなことを言うな!
それは、そうと、もうすぐ三分。
あとどれぐらいだ?
『三分まで残り三十秒。いつ音波の攻撃がきてもおかしくありません。』
了解。
ここに来た時、音波攻撃に手も足も出なかった。
魔力が多ければ多いほど効果が多くなるもので、その影響が高いのは仕方がない。
今、この音波攻撃を無効化して、この敵を攻略することに意味がある。
今、ミアと共に戦うことに意味がある。
意味のない行動などない。
戦って、戦って、そして、俺が俺の己の価値を見出して、納得したいんだ.....
『音波攻撃は同じ周波の音波攻撃へ対処できます。』
久しぶりの感触だ。これは禁忌魔術か?
『サウンドキャンセリング、そう言う名前の禁忌魔術です。』
ミルとの旅の時もこんな風に魔術を放つことがあったっけか.....
何にせよ、今、倒すのだ。
そこに価値を見出すために....
数秒後、その戦場を音波が揺らす。




