第196話:屋敷の奥へ
「俺たちを奴隷として扱う奴がいるだろう.....そいつは、その指輪が無ければ倒すことが出来ない。」
「この.....魔壊の指輪のことか?」
「ああ、そうだ。その指輪が無ければここの主には勝てない。」
俺なら、自分を倒すことのできる魔道具など近くに置いておかない。
ましてや、それを奴隷に渡すなど.....
「うむ.....ここのボスは馬鹿なのか?」
「さぁな。ただ、ボスはこいつが自分を倒す可能性について知らない。」
「それは、迂闊だな。」
「ああ。俺もこの戦いが終われば、これを用いて逃げようと思っていたさ。」
信憑性しかないというような情報ではない。
しかし、完全に嘘だと決めつけられるような情報でもない。
「もう一つ聞こう。なぜ、その指輪がなければ攻撃が通らないのか、分かるか?」
「ああ。色々調べたからな。あいつの魔力は特別でな。あらゆる攻撃を無効化.....とは言わねえが、軽減しちまう特性を持ってる。魔界の指輪の効果.....分かるか?」
確か.....音波がなんたらと.....
『指輪から出る音を魔力によって音波変え、敵を不快にします。』
ロードリング優秀だな。
てのは除いて、この説明.....
「この指輪は相手の魔力も掻き乱す。そうか?」
「ああ。よく分かってんじゃねーか。」
理由までは明確に基本説明できるし、理論的な間違いはないよな?
『観測結果、魔道具の性能や敵の性質など、全てこの世界で起こり得ることです。』
「しゃーないか。」
ウォーリアは短くそう呟くと、そいつの縄を解く。
「いいのか?」
「俺の勘だが、お前は奴隷だからな。」「.....勘のいいやつは嫌いだな。」
「あ、二人とも起きたんだ。」
と、唐突に声をかけられた。
サナだ。こういう状況でこんな感じに声をかけられるのは珍しいな。
ウォーリアに声をかけるのは両者にとって普通だが、先ほどまで捕まえていた者にもサナは声をかけているのだ。
「ああ。良い情報を聞いた。」
「騙されてる、なんてことはないの?」
とサナかジト目で奴隷のそいつの顔を見た。
当の本人はさあ、どうでしょうとでも言うような顔をしているが、その目に嘘の気配はない。
「ま、なんでもいいか。ウォーリアはその情報を元に今から動いて。ただし、危険を感じたら無理しないこと。いいね。」
「ああ。分かった.....良かったな。リーダーのお墨付きが出たぞ。」
「ふんっ。この後裏切る可能性でも考慮しとけ。」
と毒を吐くがその表情を心なしか緩くなっているように見える。
「では、行ってくる。」
そう言い残し、ウォーリアはラーファルトいる屋敷の奥へ走り出した。




