第195話:舌打ち
「ミア.....??」
そう名前を呼ぶ俺に彼女は一瞬ビクッとして、怪訝そうな顔をする。
名前を知っていることを不思議に思ったのだろう。
そして、少し考え込み、途中でハッとしたような表情をするとカキィンと音を立てて剣を落とした。
「ら、ラーファルト様.....なのですか?エレニア家の.....約十年前、ルインド王国の宮廷魔法使いだった、ラーファルト・エレニア様なのでしょうか.....」
そう尋ねる彼女の声はわなわなと震えていて、その表情はただただ信じられない。信じられないほど嬉しいとでもいうようなもので満ちていた。
「ああ。そうだよ。ラーファルト・エレニアだ。今はフローハットというパーティーで活動してる。今回の奴隷解放もその活動の一環だよ。」
「左様で.....助けに来て頂きありがとうございます。」
そう深々と頭を下げる彼女に全く戦う意志などない。
いや、あるはずがない。
「お礼はいいから。とりあえず早く転移してここから.....」
「おやおや、裏切りですか?ミア・アルハイン?」
彼女の後方からそう声がした。
「.....ミアそいつは?」
「ここのボス。クズです。」
当たり前だけど当たり強えな。
「強いのか?」
「そうですね。強いです。」
ま、そうだよな。じゃないと、ミアがここに留まる理由がない。
「最も、今は負けませんが。」
そう言って、チラッと俺をみる。
期待してくれるねぇ.....なんだかんだ、ミアと共に戦うだなんて初めてだな。
確か元々冒険者だったらしいし、この実力なら結構優秀な部類だったのだろう。
「ミア。ここにいる残りの奴隷は?」
「彼の後方にいる二人。それでここの奴隷は最後です。」
「じゃあ、早くこいつは捕えて昔話でもしようか.....!!」
ーーー
長い長い夢を見ていた。
それは、俺が世界を旅する夢だった。
いや、この夢は、俺の幼い頃夢見た人生だった。
「うぐっ.....!!」
「.....起きたか。」
生きている。
俺は敗北し、地に伏した。なんら、死んでいてもおかしくはない。
いや、むしろ普通なら殺していて当然だ。
傷のある体は治癒魔術で最低限生きていられるほどに回復している。
最も、敵として立ち向かったのだ。警戒されない方がおかしい。
「.....なぜ生かした。」
「そーいう方針だ。ノリノリで俺たちのことをお前は殺しにきてたが、奴隷の可能性も捨てきれなかった。」
その見解は間違いでない。俺はこんな感じでも一応奴隷として扱われている。
人を殺す?倒す?
反吐がでる。
「チッ.....」
と思わず舌打ちがでた。
「おい。情報をやる。信用するかしないかもお前の自由だ。」
「.....聞こう。」
その剣士はこちらに向き直り、その鋭い眼差しを向けた。
「俺たちを奴隷として扱う奴がいるだろう.....そいつは、その指輪が無ければ倒すことが出来ない。」
今回の話で番外編などを含めると200エピソードとなりました!
ここまで読んで頂きありがとうございます!
これからも14浪生転生記をよろしくお願いします!




