第194話:謎多きメイド
「ガルス流進手」
《斬》
フードを深く被る敵は自身の技の名前以外何も発さない。
そいつはその顔さえ見せず戦っている。
寡黙で、自身の素顔は見せない。秘密主義と言った所だろうか。
奴隷として俺たちを攻撃してきたあいつは、戦っては駄目だと忠告して来た。
確かに、並の剣士や魔術師では到底及ばない相手だろう。
《ムーブドウインド》
敵に言葉数が少ないのならば、いちいたて俺が話す必要性はない。
Sari、どうした方がいいと思う?
『.....』
Sari?
『捕まえた方が良いでしょう。ただし、出来るだけ傷付けない方向で。』
少し、考える間があったな。珍しい。
《ウォーターフォール》
ま、そういうことなら任せろ。
「.....」
放たれる敵の斬撃を避けながら技巧級の水魔術が放たれる。
無詠唱魔術師と戦うことが無ければ避けながら高威力の魔術を受けることなど無いのだろう。
基本、一瞬は動きが止まる。
敵の頭が攻撃を攻撃だと認識するまでの時間だ。
《ロックショット!》
絶え間なく注がれる水の一瞬の僅かな隙間にその攻撃をねじ込む。
水であまり見えないがらキィーという音がした。
剣士と堂々と正面から相対するのは面倒だが、今は敵の状態の確認が最優先.....か。
とウォーターフォールを解いた瞬間だった。
「ガルス流光剣」
《急手》
しっかりと俺の首筋を狙って体の左側から剣が伸びる。
「.....っ!!」
《マッドスピアー!》
地面から槍を出し、敵がこれ以上俺に近付けば逆に勢いを利用し、倒してしまえるように魔術を放った。
今の、太刀。戦闘慣れしている。戦闘の才能。それ自体は子供の頃から磨いて来て、無詠唱魔術を利用する俺に軍配があがるだろう。
ただ、こいつはそれをしっかりとカバーしてくる。
やり切れそうでやり切れない。
これは思ったより長引いて、大変な戦いになりそうだ.....
「手加減は無しでいこう。」
「.....」
俺の発言にも決して動じないと.....戦う者としての心構えは完璧なようだ。
こいつを捕まえるのは至難の技だろう。
いっそ倒す覚悟で戦い、ギリギリのところで捕まえるか.....??
「ガルス流重」
《十連》
連撃か.....基本、反撃の飛んでこない魔術師。
それに対し剣士が攻撃するのに連撃はかなり重要だ。
連撃後の少し隙の見える段階を突かれることは基本ない。
だからこそ.....俺はそこを突く.....!!
《ディスクリート》
《ディバシーウインド》
と連続で魔術を発動し、少しはその攻撃を防ぐ。
まだ四連。
あと六連は.....
《ウォーターソード!》
「ガルス流!堅巖!」
《時止》
意地で止める....!!
ガルス流では珍しい防御の技をラーファルトが放つ。キィンという音と共に敵の攻撃は終わる。
ここ.....!!
《バブル》
しなやかな水の壁。それを破るのは簡単ではない。
よって、魔術を使用したものの中では拘束力の強いものに分類される。
閉じ込めたことで半分、戦いが終わったかのような雰囲気が流れた。
だが、敵はそこで小さく呟いていた。
「ガルス流黎撲」
《貫絶剣》
半分、油断していたラーファルトの横をその攻撃が通過する。
ギリギリのところでラーファルトは避けたのだ。
何度かこの技は見た。ミルの使っていた技だ。その分攻撃を予感し、避けることが出来た。
が、これはガルス流で四番目に難しいと言われる技。
目の前にはバブルを破って立っている敵の姿がある。
はぁ.....どうしたものか。
敵の体は濡れている。
ウォーターフォールとバブルを俺が当てたからだ。
それでは服が重いだろうと俺が思うと敵もそう思ったのか、フードに手をかければ、その人は顔を晒した。
言葉が出なかった。
知った顔だった。
今、改めて見てみると気付く。濡れてピチッとした服から、サラシを巻いている雰囲気が分かる。
その大きさといえば、かなり豊満で、その、顔といえば、侮蔑の視線が思い浮かぶ人物。
「ミア.....??」
エレニア家の謎多きメイド。ミアが、目の前に立っていたのだ。
満を持して、実に180話以上登場しなかったエレニア家のメイド謎多きメイドが再登場.....!!
物語はどの方向へ動くのか?!14浪生転生記をこれからもよろしくお願いします!




