第189話:キーンという音
「覇者の天からのお告げ.....それって.....」
サナがそう呟く。
「天からのお告げか。前にもこんなことあった気がするな。」
「うっ、くっ.....」
と魔物は苦しそうな表情をしている。
《ロックショット》
魔術を用いて止めを刺した。
「おーい。どうダァ〜。なんか分かったか〜。」
そんな風に声をかけてくるのはジャガーだ。
「また、天からの声らしい。」
「はあ.....ここまで来ると災難ってより狙われてるわね。確実に.....」
シーアの言う通り、俺たちを狙っているやつがどこかにいる。
なぜ、狙ってくるのか。何が目的なのか。
全く分からないが......
「うむ。まあ、構えていても仕方あるまい。俺たちは目の前の敵を倒すだけじゃよ。」
「それもそうね。フローハットとして、みんなで乗り越えるわよ。」
ウォーリアの発言にサナはそう反応し、前を見据えた。
その先に見えるのは今回の任務地。
奴隷のいる場所。
必ず.....必ず救い出す。
ーーー
《トランスペアレント》
体を透明化させ、侵入。
バレることもあるが、ある程度の実力の者までは有用である。
とりあえず一番の課題は奴隷と敵の人数だな。
『魔力の反応から推察したところ、敵は十五人以上。奴隷は十人以上と推定されます。』
Sariった魔力の反応から敵の数とか前は割り出せなかったよな?
『そうですね。Aランクになったことで出来るようになりました。』
最高かよ。じゃ、これからもじゃんじゃん働いちゃって下さい!
と暇なのでSariと会話を交わす中、敵の横をしれっと通過する。
最も、Sariは少し機嫌が悪そうで、
『無賃労働は犯罪です。』
などとほざいている。
うるさ.....
「んっ.....!!わっあっぐっあっああああああああああああああああああ......!!」
思わず声を抑えられずそう叫んだ。
耳が痛い。
突如鳴り響いたキーンという音で魔術を保っていられない。
透明化が解除され、皆の姿が露わになる。
「ラーフ。落ち着いて。落ち着く。落ち着くの。」
「うっ、ああああああああああああああ.....」
サナの呼びかけもあまり聞こえていないようだ。
「はははははははっっっ!!!大当たりじゃねえか!!!」
そう叫ぶ男が目の前にいた。
「あなた.....ラーファルトに何をした.....」
シーアがそう聞けば敵はニヤッと笑って口を開いた。
「何もしてねえよ。はっはははははは!!」
指輪を嵌めた手をバンバンと叩きながらそう大笑いすれば、ラーファルトの顔色は悪くなるばかりだ。
唇は紫色になり、ビクッと数秒に一回痙攣を起こしている。
「うっ.....」
「おいっ、サナ!」
ジャガーがさらなる異変に気付き声をかけた。
ラーファルトほどでは無いが少々苦しそうに頭を抑えてサナは蹲った。
「だ、大丈夫。とりあえずあいつを.....」
「ははははははは!!!これは予想外!二人も倒れるとはなぁ!!!!」
彼が大笑いする度にラーファルトが苦しみだし、サナも辛そうな表情を見せる。
何が二人を苦しめるのか全く分からない。
ただ、一つ分かるのは.....
「このまま放置は流石にまずいのぉ.....」
そうウォーリアは呟き、剣を構えた。




