第187話:あの荒野へ
「任務の場所はどの辺なんだ?」
「ジャック王国の南東辺りよ。」
ジャガーの質問に対して答えたのはサナだ。
南東.....ということはカリストの街にはあまり近くない。
誰かと会う可能性は限りなく低いと言ってもいいだろう。
しかし.....南東あたりか。
いくら転移魔術が使えるとはいえ、実は敵の近くに転移するのは得策ではない。
急いでいる時.....例えばサナの救出の時は策など考えず、限りある中での最短の速さで救出に行った。
だが、今は違う。
もちろん奴隷の人たちの身の安全を一刻も早く確保する必要はあるだろう。
だが、その前に俺の.....俺たちの負傷などがあってはならない。
だから、少し遠くへ転移し、バレないように行くのだ。
「着いたけど.....」
「荒野だな。」
サナの言おうとしたであろう言葉を俺が発する。
荒野。黒殲の獄のメンバーが思い出される。
ジェットとミル。そして俺。
このどこまでも続くように見える荒野を超え、森を越え、王都へ進んだ。
あの荒野に。
始まりの地に今、戻ってきたのだ。
「それにしても魔物がぁ多いなぁ。」
ジャガーはそうして辺りを見渡す。
「確かに、視界が開けている分、見やすいわ。」
シーアもそう言うが、ルアは気を抜いていないようだった。
それもそのはず.....
「全員、戦闘準備!下よ!」
サナの掛け声で、全員の集中力が一気に上昇する。
この地での戦闘は慣れている。
体に染み付いてる.....頭に染み付いている.....!!
「最速で!倒せ!」
この荒野には魔物が多い。
大大陸の魔物が集まっている感じだ。
だから、最速で倒さなければ魔物が集まってしまう。
《アンダーフローズン!》
敵の足元を凍らせる。
三人で旅している時は更に剣士のサポートに向かうところだが.....
《ロックショット!》
重ねて技を放ちながら敵の方へ走り出す。
今の俺の役割は前線でのサポート及び、戦闘だ。
そこは履き違えないように考えながら.....
「ジャガー!!」
「おうっ!ガルス流!燐!」
戦うことが幸せだというような表情で魔物にジャガーは襲いかかる。
戦闘をしっかりとイメージしていた証拠だろう。
まだ、攻撃の到達には時間がある。
一丁お膳立てでもするか.....!!
「ルア。」
《雷砲!》
ほれをルアに放つ。
「全く.....危険を.....」
といいながらひょいっとそれを操っている。
《ウォーターソード》
剣を生成し、敵へ突進する。魔物といえどそれを見逃すわけがない。
俺の動きに合わせ、攻撃を封じようと動く。
「ふんぬっ」
しかし、ウォーリアは技も使わずそれを止めた。
「アリス流!主技!」
《懐流!》
更なる追撃も慣れた手つきでシーアが捌き切る。
「ルア!サナ!今!」
「大地から湧き出る大河となる熱よ。その聖霊よ。我が手にその熱をもたらし、相手の手札を溶かすほどの強大な力を分け与えん!熱よ!相手の防御を打ち砕く、最大の鉾となれ!ああ、神よ。その熱を線として、放出し、世界の敵を溶かし尽くせ!!!」
《マグウィップ!》
サナの放った炎の鞭が俺の剣に纏わりつく。
「ラーファルト。頼むよ。」
ルアも俺の放った雷砲を操り攻撃に乗せたようだ。
ただ、シンプルに。
「ガルス流!急手!」
《光剣!》
その剣は敵の足より下を切り裂いた。
「反撃はない。潰せ。」
《炎輪!》
ジャガーの一撃は敵を貫いていた。




