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14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第十章:再会

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第158話:ありがとう。

あとがきは物語の余韻に浸ってほしいのでなしで前書きに一言失礼します。


ラーファルトの物語において最も重要と言える回の一つです。


ぜひ、ブクマ、評価、感想等お願いします!

 俺の振るった《縛縄》がオアフ帝王の傷に触れる。


 途端に俺の持っていた縄はしねり、形を変え、敵を絡めつけた。


 同時に敵の技も止まる。


 命の契約の効果も消えた。


 が、寿命の全てを使い切った訳ではないようでまだ生きているようだ。



 封印する道具なのだ。全ての技を強制的に止められたのだろう。


「.....やられたな。」


 そうオアフ帝王が呟く。


 縄に縛られて完全に動けない状態だ。


『小さくする時は「結び」と唱えてください。』


「聞きたいことは山ほどあるが、それは後だ。結び。」


 縄が光ったかと思えば次の瞬間にはそれは小さなブレスレットに変わっていた。


「さて.....」


 そう呟くと俺は振り返って駆け出した。


「サナ!」


 意識はない。


 息も浅く、顔は以前より少し痩せこけ、青白い顔をしている。


「ルア。治療を頼む。」

「ええ。任せて。」


 そう言って彼女は詠唱を始める。


 シーア、ウォーリア、ジャガーも治療を手伝おうとしている様子だ。


 《トアブルック》


 そうして俺はゲートを開く。


「帰るぞ。この場所から離れる。」



 ーーー



「サナ.....」


 サナは目の前に眠っている。


 あの頃の、あの時の面影の残る顔だ。


 俺はあの日彼女を、村を守れなかった。


 守りたかった。



 その皺寄せがここに来たのだと思う。


 またしても好きな人を危険に晒してしまった。


 その事実にいたたまれない気持ちになる。



 三日。彼女は眠ったままだ。


 医師によると危険な状態は超えたようでいずれ目を覚ますらしい。


 だが、それでも不安は残る。



 本当に目を覚ますのだろうか。


 三日。その長い時間が俺の心をどんどん蝕んでいく。


「サナ.....」


 そうして彼女の名前を呟いたのは.....呼んだのは何度目だろうか。


 不安でしょうがない。


「サナ.....頼むから.....」

「ら、ラーフ.....??」


 そう、俺の名前を呼ぶ声がした。


 幻かと思った。幻影かと思った。


 前にもこんな声を聞いたことがある。


 不安で、俺に頼ってくれているような声だ。


 サナの声だった。


「サナ.....」


 目の前に目の開いた彼女がいた。


 そこに彼女は存在していた。


 存在を諦め、生きているはずがないと絶望していた。


 それでも、彼女は生きてそこにいる。


 今、俺の目の前にいる。その事実に目に涙が浮かんだ。


「ラーフ.....あの.....」


 起き上がり、俺に何かを彼女が何かを告げようとしている。


 が、俺はもう彼女の発言など待つことは出来なかった。


 バサッ


 と音を立て俺は彼女に抱きついた。


「ラーフ.....??」


 うわずった声で彼女はもう一度俺の名前を呼んでくれた。


「ごめん.....あの日、守れなくてごめん。」


 鼻水と涙を垂らしながらラーファルトはそうサナへ謝る。


「うっう.....何度も何度も.....危険な目に遭わせてごめん.....」


 謝り続けるラーファルトの声をサナは黙って聞いていた。


「約束。守れなくて.....ごめん.....ううっ.....」


〔俺はね、サナをおいて行ったりなんかしないよ。行く意味のない場所にはいかないし、もし、行くと決意したとしても、必ず戻ってくるから。だから、笑って、怖がらないで。俺はいつだってサナのこと考えてるから。〕


 ラーファルトがいなくなることに怖がるサナに言った約束だ。


 ラーファルトは守れなかった。ラーファルトがサナのいる故郷へ帰ることは無かった。


 そして、これからもその故郷に帰ることはないだろう。


 帰ることの出来る場所はもう燃やされ、無くなっているのだ。 



「ごめん.....ごめん.....」


 泣きながらそう謝り続けるラーファルトをサナは強く抱きしめて口を開いた。


「破ってんなんかないよ。約束。今、ラーフは私の目の前にいてくれてるから。」


 ラーファルトに更に涙が溢れてきていた。


「私ね、寂しかったよ。ラーフがいなくて。でもね、ラーフがいなかったからこそ私は成長出来たと思うの。」


 12年。それがラーファルトとサナの別れていた時間だ。


 ラーファルトとサナが共にいた期間は短いものだった。


 それでも、サナの胸の中にはいつでもラーファルトがいた。



 ラーファルトの様になりたい。


 そう思っていた。


 それでも、ラーファルトと共にいたらラーファルトに頼ってしまう。


 だから、今は離れるんだとそう言い聞かせて過ごした。


「辛い日々も楽しい日々も、私はラーフと出会ったから生きてこられたの。」

「サナ.....」


 弱々しい声でラーファルトはそう彼女の名前を呼ぶ。


「ラーフ。助けてくれてありがとう!」


 ラーファルトの脳裏に幼少の記憶が巡っていた。


 サナと過ごした日々。


 フィックス先生と過ごした日々。


 家族と過ごした日々。


 かけがえのない記憶が、思い出がそこにあった。


「サナ。生きててくれて、ありがとう。」


 絞り出す様な声で、涙を流しながら笑い合う二人の姿がそこにあった。



【記録:人魔暦19年】ラーファルト・エレニアとサナ・ラスファントが再開した。

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