第146話:分かれ道
「作戦はどうする?」
「なしでいく。」
「は?」
ジャガーがそんな間抜けな声を出したが俺の推奨するその意見を曲げるつもりはない。
サナ奪還作戦の作戦計画は「なし」だ。
「正直、サナという全体を見れる統率者がいる中では俺たちは作戦内で動き回った方が強い。」
だが......
「だが、サナがいない今は各々が最適の動きを考えた方が最速で敵を制圧できる。」
それが俺たちの今の立っている地点だ。
サナの様に後ろで一歩引き指示をゆっくり出せる人物がいない。
俺の場合は先走りがちだ。指示の前に俺の体が動く。
距離の問題もあるが、ある程度までは俺が動いた方が速いから指示は基本出さなくなっている。
俺が単独で行動した期間が長いのもあるだろう。
「なるほどな.....だが、一つだけ決めておきたい。」
とウォーリアが言った。
「もし、分かれ道があったらの話だ。どう分かれる?」
「いくらでも分かれ方はあるけど.....ルアとジャガーとウォーリアで一つ。シーアと俺で一つと分かれるべきだと思う。」
理由はいくつかあるが......
「サナを見つけた時に治癒魔術を使える人が一人は必要だ。それに、ジャガーの戦闘スタイルには常に回復してくれる要員と防御に特化してくれている要員がいるべきだからな。」
「なるほど、ならそれで行こう。くれぐれも安全第一で行くぞ。」
「ああ、全員で生きて帰るぞ.....!!」
反対意見はない。皆が何か決まるたびに頷き、賛成を示していた。
ーーー
衛兵は30人程か.....行けそうだな.....
「3、2、1.....今.....!!」
《ウォーターフォール!》
これは屋敷.....
いや、元屋敷といえる様な場所にいるらしい。
これは俺がこの屋敷を攻め落としたからだろう。
ここから奴隷を解放した証拠だ。
「な、なんだ.....!!み、水が.....!!」
まあ、この程度で死にはしないから安心しなよ衛兵さん。
「調停の技」
《霹空!》
よし、とりあえず門は抜けた。
「.....あの、ラーファルト?」
「何ですか?」
「霹空使うならあのカウントは何だったのよ......」
確かに、なんか流れで言っちゃった。
とシーアの指摘に思わず頷いてしまう。
「おいそこ、喋らんぞ。集中せい。」
そうだな.....
「ああ。分かった。」
集中しないといけないレベルの敵だ。
結構大きな屋敷だが、いつ目の前にオアフ帝王が現れるかなど分からない。
「ドア、開けるぜ.....」
攻め気のあるジャガーがそう言ってドアの前に立った。
敵の対応の速さは分からない。
少なくとも衛兵を30人配置しているのだ。ある程度の速さを覚悟する必要があるだろう。
ぼさっとしてられない。
「入ったら最速で。」
《ムーブドウインド!》
バアアンッ!!
と俺の魔術の発動と同時にジャガーが勢いよくドアを突き破った。
敵は.....見えない。
で、右と左に道.....
「分かれるぞ......!!俺とシーアは右に行く。」
「了解!」
ーーー
「来たか。お前を助けに来たぞ。あの方の臨む生贄が。」
「はあ.....はあ.....」
サナの意識はすでにない。
既に虫の息だ。
「助けに来た事.....後悔するがよい.....」
不敵な笑みと共にオアフ帝王は部屋を出た。




