第145話:救ってくれたのは
集中。
周りの風の音が聞こえる。
ルアの緊張した雰囲気が伝わってくる。
今日が三日目。
今日までに成功させると宣言した日。
試行回数は数えきれない。
「次元と次元を繋げる.....ふう.....」
深呼吸をし、意識すべきことを思い出す。
サナのイメージでは今、俺の目の前にある魔力とサナのいる場所の魔力をつなげるイメージ。
繋げるとは?
考えろ。
考えて、考えて、考え抜いて、俺なりの答えを導き出せ。
言葉をイメージに。
感覚もイメージに。
全てを一点に集中させるんだ。
イメージが出来たら現実にそれを持ってこい。
「.....見えた。」
《トアブルック》
目の前にゲートが現れた。
「.....成功?」
とルアが呟く。
「俺が確認してくる。」
俺は一呼吸を置き、覚悟を決めそのゲートに足を踏み入れた。
ーーー
「これは.....」
目の前には俺の考えたそのものの場所があった。
成功だ。
「よし.....!!これで.....!!」
これでサナを全員で助けに行ける。
尽くせる手は尽くした。
あとは勝つだけだ。
Sari、オアフ帝王の対処法については任せる。
勝率を常に上げ続けてくれ。頼んだ。
『勿論です。マスター。』
それにしても「トアブルック」か.....間違いなく今まででも最難度の魔術の習得の難易度だった。
禁忌魔術な分、文献が基本はないってのもあるが、基本感覚でどうにかするタイプの俺が苦戦したんだ。
薄々思っていたがサナってどれだけの魔術師なんだ?これ以上の精度の転移魔術も使えるようだし.....
なんにせよ.....俺は、俺たちは.....必ずサナを取り戻す。
ーーー
サナ視点
「はあ.....はあ.....」
全身に力が入らない。
何もされていない。何もされない。何もしてくれない。
だからきついのだ。
もう意識を保つことさえ難しくなってきている。
食料も水分も、もう随分長い間取ることが出来ていない。
「何が......目的なんだ......」
私を殺すことなのか......⁇
いや、それなら邂逅するや否や殺されているに決まっている。
それなら、私の誘拐と始末はついで......
私が生きていることはルアやシーア、ジャガーのトリックフェイスが途切れないことから分かるだろう。
私が生きていると分かれば......私の居所が分かればラーファルトたちはここに助けに来る。
助けに来させることが目的なら......
「罠......」
もし、あの場で殺せない理由があったのなら納得がいく。
今、この場でなら殺せるというルールがあれば納得できる。
でも、それでも.....助けてほしい。
「お願い.....お願いだから.....」
生きてさえいればまた会える。
そう信じているから.....
助けて、ラーファルト......
ーーー
「行きますよ。準備は完璧ですか?」
「ああ、勿論だぜ。」
「うむ。」
「ええ。」
「大丈夫よ。」
全員の回答に俺はコクっと頷いた。
《トアブルック》
もう失敗しない。
もう誰も失いたくない。
必ず救うのだ。
ジェット.....ふと、ジェットが俺のことを救ってくれたのはもしかすると今のためなのかもしれないと思った。
絶望も希望もこの世には存在する。
ジェットを失った絶望と、サナと再会出来るかもしれないという希望。
ゆっくり話したい。
サナと別れてからの年月を。
確かな思いと共に俺は一歩を踏み出した。




