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第12話:謁見

 感動の別れを遂げた。


 だが、涙は決して流さない。これは俺の選択だからだ。


 俺自身で決めたこと。


 自由な選択肢の中から俺が決めたのだ。


 俺が泣いてはいけない。


 自分で決めた道を行くために。


 自由のために。



 三年。


 俺は三年間で成長を遂げる。そのために宮廷魔法使いになるのだ。


 自由を掴む。


 守る為の力を手に入れる.....!!



 ルインド王国、王都”ピクルス”俺はそこで宮廷魔法使いとして働く。



 そう考えながら転移魔術のブラックホールのような場所を歩いている。


 前世から来た時の俺には意識がなかった。


 だが、今は違う。


 この漆黒の世界にはすべてが集まっている。


 あらゆる場所と繋がっている。俺は今ならどこへでも行けるのではないだろうか。そのような感覚に陥る。


 1分ほど歩けば出口のような所についた。


 眩しい光を我慢してそこを通り抜けた。目を開けると目の前におとぎ話で見るような光景が広がっていた。


 王宮なのだろうか。俺が見とれていると宮廷軍の者たちは歩き出した。


 呼び止めたいところだが名前を知らない。


「あの、えっと、宮廷軍特別部隊の方......」

「お前は今から宮廷魔術師になるのだろう?それならば私の本名を教えよう。」

「ルインド王国宮廷軍特別部隊隊長のフリード・カールだ。以後よろしく頼む。」

「あ、えっと、よろしくお願いします。」

 なるほど、身内になれば名前を教えてもらえるシステムなのかか。


「ラーファルトさん。私はいいですが国王には”えっと”なんて使わないでくださいね。」

「はい!気を付けます!」

「では、仲間の自己紹介もしたいところですが、国王がお待ちですので。」


 いつの間にか物々しい雰囲気を持った大きな扉の前にいた。


「国王陛下!新たな宮廷魔法使いを連れてまいりました。謁見の許可を求めます。」

「よかろう。」

 低く、しわがれた声が聞こえた。


 ドアがゆっくり開いた。



 ドアの向こう側は今までの王宮の光景とは比較にはならない程豪華な部屋だった。


 いや、部屋と言っていいのかすら分からなかった。広場というべきなのだろうか。または、大広間と言える。


「進め!」

 思わず立ち止まってしまい、衛兵に注意されてしまった。


俺は国王の前まで行き、跪いた。

「お初にお目にかかります。ラーファルト・エレニアと申します。」

「ルインド王国国王のファルゴ・ルインドだ。少しは礼儀も知っているようだな。」

 そうやって話すファルゴ国王は老いているが貫禄はあった。


「貴様は何級の魔術師だったかね」

「技巧級火魔術師であります。」

「ほお、その年で技巧級とは。かなり優秀なようだ。その実力を見てやろう。トーマス!杖を持ってこい!」

「はっ!承知しました!」


 国王のそばにいるトーマスと呼ばれた宮廷魔術師が杖を走って取りに行った。


 パシリなのか.....かわいそうに.....


 それにしても実力を見てやろう?このおじいさんが?まずまずなんで?というより、いきなりすぎないか?


「今のうちにルールを決めておこう。」

 様々な疑問を持つ俺をガン無視してファルゴはルールの説明を始めてしまった。


 こういうところが王様というような感じがする。


 王様って自分勝手なイメージなんだよなぁ。


「まず一つ目、この部屋の壁には結界魔術をかけているが、ある程度の攻撃までしか耐えられない。よって高火力攻撃は使用禁止とする。」


「具体的にはどの位の......??」

「そうだな......一応上段以上は控えようか。」


 上段を控えるとなると正確性の必要な戦いとなるだろう。


 やだなぁ。


 魔術を正確に扱うのって難しいんだよなぁ。


「それでは二つ目、相手の精神を操る魔術の使用は禁止する。」


 そんなものは使えるわけがない。俺には関係のないルールだなぁ。


「ルールは以上だ。これに違反しなければ何をしても良い。」

「承知しました。」

「陛下。杖をお持ちしました。」

 そう話していると息を荒くしたトーマスがやってきた。


お疲れ様パシリさん.....


「では、杖も来たんだ。始めよう。」


 こうして、俺と国王との戦いが始まった。


 トーマスは剣ではなく、杖を持ってきた。つまり相手は魔術師だ。


 ならばやるべきことは一つだ。

 《ロックショット!》

 こうして発動した魔術は国王の元へ飛んでいく。


 魔術は基本、先手を取ることが重要だ。これで優位に立っているということだ。


「無詠唱魔術か。まずまずだ。」


 そういうファルゴと俺の魔術の距離はもう殆どない。


 あっけなく勝ってしまうのではないか。


 そう思った矢先。ファルゴが腕を動かした。


「水の精霊」

 《ウォーターガン!》

 国王の発動した初級水魔術。


「詠唱短縮......受け流した......」

 俺が魔術で飛ばした石の軌道を水で変えたのである。


「来ないのならこっちからいかせてもらう。」


 ファルゴの魔術の正確性に驚き、立ち尽くしていた俺にそう言った。


「水の精霊の形成する大河よ。その集積たる海を」

 《ライクオーシャン》


 俺の知らない魔術だ。相手の魔術が到達する前にこっちも攻撃を。


「.....!!??」


 そうして攻撃を繰り出そうと杖を前に出した俺だったが途端にバランスが崩れた。


 いや、地面が崩れたようだ。


 いや、それも違う。水で浮いたのだ。


 部屋が海水で埋め尽くされていた。

「中段水魔術か。」

「御名答。賞賛に値する。」

 水に浮きながらそう答えると称賛してもらえた。


 悪い気分ではないものだ。


 それはともかくバランスを保たなければならない。


 《エアーアセンド》

 本来は上昇気流を生成するのに使う風魔術を水をどかす用途に応用する。


 《タワークラフト》

 一度地面に降り立ち、水面より上に土魔術でタワーを形成し足場を形成する。


「ふむ。流石になかなかやるようだな。」

 海水で冷えてしまった。

 《ルームフロア》

 炎で水を蒸発させる。

 《ロックショット!》

 だが、相手に攻める隙は与えない。


「お前もまだまだ未熟なようだな。」


「せせらぎの谷に現る精霊よ。」

 《コールドウインド》


「...!!??」


 刹那、冷たい強風が襲った。

 炎は風で消火され、ファルゴに放ったはずのロックショットは俺の方へ飛んできた。


 魔術で迎撃を.....!!


 駄目だ間に合わない.!!


「くそがあああ!!!」

 俺は自分がタワークラフトで作った足場を咄嗟に崩した。


「ぐっ...!!」

 高いところから落ちれば水も痛い。


 《アイスフィールディング》

「なっ....!!!」

 詠唱は聞こえなかったが、俺が落ちている間に唱えたのだろう。


 俺の周りの水が氷になってしまった。身動きがほとんど取れない。


 これがあの猪の魔物の気持ちか....!!


 動けないって虚しいなぁ.....!!


 《ファイアーサイクル》

 自分の周囲50センチほどの氷を溶かし、逆に、凍った部分を足場とする。


 反撃を.....!!


 上を見上げた。


「霧........!!??」

 いつの間にか広がっていた霧でファルゴの位置が全く捕捉できない。


 《ウォーターガン》

 背後から放たれた初級水魔術は無残にも俺の頭を濡らした。


 勝負は早くも決したのだ。

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