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第123話:シーア

 シーア(⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎・⬜︎⬜︎⬜︎)視点


 私の物語は無だ。


 物心ついた時には奴隷としての英才教育が行われていた。


 自我なんてものは存在する余地を、与えられなかった。


 私の人生に自由なんてあの日まではなかっただろう。



 ーーー



「言葉を知れ。俺たちの指示に従え。」

 そのために言葉を覚えさせられた。


「働け!動け!へばるな!」


 そう言われれば、馬車馬のように働いた。


「強くなれ!我らを守れる存在となれ!」


 そう言われれば、戦えるように働いた訓練を行った。


 子供の力じゃどうしようもないことが多々あった。


 だから、子供でも、女でも。


 それでも戦える流派の剣術を特訓した。



 アリス流。全ての攻撃を受け入れ、それでも死なないように受けながす。


 まるで私だ。


 生きることを知らない。


 自由を知らない。


 ただただ、奴隷として生きるのみ。



 私に名前はない。


 名前を知らない。



 名前も、自由も、生きることも知らないのに私は本能のままに生き延びようとしていた。


 そうやって努力していた。



 ーーー



 今考えてもなぜか分からない。


 でも確実に言えるのは、あの時の私は無知だった。



 何も知らないからこそ、あれが普通だと思っていた。


 だから耐えることが出来ていた。


 多分、ミサールが助けに来なければ、何も知らない無知な奴隷のまま一生を終えていただろう。


 今、世界を知ってしまった私にとってあの場所は地獄でしかない。



 だから、純粋に私は私の仲間をすごいと思う。


 私と違って他の者は一度世界を見てきた者だった。


 世界を知っているのに耐え抜いた。


 自分が生きることにしがみついてここまでやってきたのだ。



 ずるいな。


 と私は思う。



 みんなは一度奴隷にされたことを恨んでいるだろう。


 もちろん私もだ。


 でも、多分それはみんなと違うベクトルの怒りなのだ。



 家族と放された、好きな人と放された、仲間と放された。


 もちろん、扱いに対しての怒りもあるが、自分の慕う者とはがされたことへの怒りが大きいと思う。


 私は時間を取られたことに怒りを覚えている。



 こんなにも世界は広いのに。


 一生かけても全てを知らないこの世界の中でほんの少しの狭い場所に留められたことに怒りを覚える。


 もっと早く知りたかった。


 無知をやめたかった。



 奴隷にならなかった私はどんな人生だったのだろう。


 私を売ったのは誰なのだろろう。


 親なのか、それとも人攫いなのか。



 でも、そんなこと考えても仕方がない。


 過去を見ても、何も変わらない。


 過去は大事な私を形作る要素だ。


 今を形作る要素の一つだ。



 今を生きていること。


 それが過去を見ていることだと私は信じる。


 今を生きることは未来を作ることだとも私は信じる。



 《ロックショット!》


 ミサールが技を放った。


 結界張りながら攻撃なんてほとんどの魔術師にはできないだろう。


 実際、ルアは今、結界を張ることに精一杯の集中をしている。


 どれだけ見ても底が見えないポテンシャルだと思う。



 彼に助けてくれたことを感謝していると私は考えた。


 でも、それは間違いだったかもしれない。


 世界を知らせてくれてありがとう。


 そう思えてくる。



 私は今を生きよう。


 シーアの声は誰にも届かない。


 ルアが音を打ち消す結界を張っていたからだ。


 故に音波による敵の攻撃は来ない。



 そう事前に皆で決めていた。


 仲間がいるそれがこんなにも良いことだと知ったのだ。


 今更戻れるか。


 戻れない。


 今、戦え。



 敵が技を受けながら突進してきた。



 アリス流(えい)


 《原水(はらみず)



 敵の攻撃に合わせて技を放つ。


 命令されて覚え始めたこの剣術.....後悔したことなんて一度たりともない。


 この剣術と出会ってよかったと思う。



 私は、今、戦えているのだから。



 敵の腹から血が飛び散る。



 敵の通る道に剣を置いていたのだ。


 敵の勢いを利用して斬る。



 ミサール!


 という声は聞こえていない。


 音を遮断されている。


 が、通じる。


 《ウォーターフォール!》


 敵へ水が落ちた。



 〔〇〇〇〇.....〕



 声は聞こえないがライナは詠唱しているようだ。



 私の役割はあくまでこのパーティーのサポート。


 地味だと言われればそうかもしれない。



 だけど.....


 《盾立(たてだち)


 ウォーリアがライナに飛んで行った敵の遠距離攻撃を止めた。



 《光剣》


 敵をジャガーが斬った。


 傷が入り怯んでいるようだ。



 行け.....!!



 何を思ったのか敵は私に突っ込んでくる。



 《ウォーターエクスプロージョン!》


 水が炸裂した。


 敵の体制が崩れる。


 ミサールだ。


 《バブル》


 今度は詠唱を終えたライナの攻撃である。


 敵を拘束した。


 今......!!



 みんなで紡ぐ。


 繋げる。


 そうやってパーティーは成り立つ。



 自分の戦い方に、生き方に後悔なんてあってたまるか。



 アリス流封目(ふうもく)


 《立華(りっか)



 敵の反撃の来ないように深い傷を与える。


 だが、私の火力では致命傷にはならない。



 だから、行け!


 倒せ!



 《獄断》



 ジャガーがその時には既に敵を斬り終えていた。

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