第117話:ジャガー
ジャガー(◾️◾️◾️◾️◾️・◾️◾️◾️◾️)視点
俺は不甲斐ない奴だ。
自分一人で成せることなどたかがしれてる。
情けない。
助けられてばかりで、それに甘えたからこそ、いざというときに何も出来ない。
それが俺だ。
ーーー
中央大陸の南部に生まれた俺はその日の運命なんて何も考えていなかった。
「うおー!」
そんな感じで声をあげて周りを見渡していた。
珍しい品の並ぶ市場に魅了されていたのだ。
「◾️◾️◾️◾️◾️。こっちよ。」
後方から声がした。
母さんが俺を呼んでいた。
「ママ!ママ!これ見て!」
「ええ、見てるわよ。◾️◾️◾️◾️◾️は何が買いたい?」
「うーん.....もうちょっと選ぶー!」
「ふふふ。そう、分かったわ。」
あっちにも、そっちにも、子供の目からは宝石のように映るものが売られている。
宝石の道とでも形容すべきだろうか。
俺はそれに連れられ、どんどんと先の方へ歩いて行った。
「あ、これ!これ欲しい!」
剣に赤色の宝石が埋め込まれていた。
それがどれほどの価値なのか当時の俺には知る余地もなかった。
「ママ?」
振り返るとそこに俺の母さんの姿はなかった。
「ママどこー?」
「あ、ママ!」
俺を探す母さんの姿。
それが俺の見た最後の母の姿だった。
「うっ.....」
と衝撃を受けたかと思えば俺は気を失っていた。
ーーー
気付けば俺は檻の中に入れられ、奴隷として売られていた。
金のことしか考えていないようなやつが俺を見て笑っていた。
否、金に囲まれる自分の未来を笑っていた。
気持ち悪い。
心底反吐が出る。
「買おう。」
狐のようなその顔をそいつは愚弄するわけでもなく、簡単に受け入れた。
ーーー
売られた俺への選択肢は二つだった。
働くか死ぬか。
働け。
◾️◾️◾️が死んだ。
働け。
◾️◾️◾️◾️が殺された。
働け。
◾️◾️が死んだ。
働け。
◾️◾️◾️◾️が消えた。
「◾️◾️◾️◾️◾️、お前の働きは見ていた。これからは鍛錬をしろ。戦える奴隷になれ。」
働く。
俺は働く。
これも俺の仕事。
働く。
働く。
はたら.....
「これであの老いぼれ用心棒の役目は終えさせられると言うわけだ。」
老いぼれ用心棒.....??
俺が強くなれば、そいつか死ぬ?
いやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだ。
死なせたくない。
殺したくない。
俺のせいで.....そいつが死ぬなんて。
耐えられない。
許せない。
そんなことするぐらいなら俺は.....
ーーー
「おい!どういうことだ!もう一年だぞ!」
「も、申し訳ありません。」
俺は鍛錬をサボっていた。
強くなんてならなくていい。
俺の命を守るよりも、周りの命に懸命になった方がよっぽどいい。
「もうよい、お前は.....」
ドォォォォォン.....!!
轟音が鳴り響いた。
雷でも落ちたかのような音だ。
「い、今のは.....??」
「いいか!貴様ここから動くなよ!分かったな。」
「しょ、承知致しました。」
ーーー
「.....誰かいる?」
部屋に入って来たのは知らない人だった。
「何のご用しょうか?」
「いや、君たちを助けに来ただけだよ。」
ーーー
ミサール・ノイル。
それがそいつだった。
そして用心棒.....◾️◾️◾️◾️◾️。
いや、ウォーリアと呼ぶべきだろう。
それが彼だった。
俺は何をしていたのだろうと思う。
俺はウォーリアみたいに強くない。
彼は自分で自分を守る術を持っている。
でも俺は違う。
俺は俺の役割さえ全う出来ない。
かっこ悪い奴だ。
守っているようで、守られているだけ。
守ろうとしているだけで、守っているように見えるだけ。
俺は不甲斐ない奴だ。
目の前にいる敵。
「はは、ははは.....!!」
キィンと攻撃を弾く。
手刀だけで敵の攻撃の重さが分かる。
死を目の前に感じる。
それでも死ねない。
死ねないのだ。
死にたくない。
俺が守られた分、もっと多くの者を守りたい。
不甲斐ない俺を払拭したい。
「クリス流理」
《掴》
「ほう.....」
敵にウォーリアが攻撃を繰り出す。
防御だけでなく攻撃まで.....
ほんとすげえよ、俺とは大違いだ。
そのおかげで一瞬隙ができた。
「うおおおおおおおお!!」
「ガルス流」
俺は不甲斐ない。
何も出来ない。
だからこそ.....!!
「クリス流!真」
《砲》
周りを頼れ。
今こそ、頼って助けてもらって.....
そして次は俺が助ける。
だから今は.....
「ジャガー.....」
声が聞こえる。
ウォーリアが俺の背を押す声が。
そして.....
『ジャガー.....』
繋ぐべき相手の声が。
「見切り」
《合わせ太刀》
「何.....??!!」
相手へ防御を強制させ、俺もそれに合わせ打ち込む。
俺が決め切ると予想した相手には隙ができる。
そうだろ.....!!
決めれなくてすまんな。
繋いだ。
後は頼む。
「ミサール.....!!」
「調停の技.....」
冷静な、冷酷な。
一撃で仕留める覚悟の顔をした彼が。
ミサール・ノイルが敵を見据えていた。