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第116話:ウォーリア

ウォーリア(◾️◾️◾️◾️◾️・◾️◾️◾️◾️)視点



 俺は中央大陸のドワーフの村で生まれた。


 田舎の村だった。平和に暮らしていた。


 その時の人生は楽しかったと思う。



 齢10の時、村が襲撃を受けた。


 敵に真っ先に立ち向かった父が一撃で死んだ。


 俺の手を引き、弟を抱えていた母の背中が裂けて目の前で死んだ。


 弟は倒れた母と地面の間に挟まって動けなくなり、恐らく焼け死んだ。



 俺は死ななかった。


 殺されなかった。


 理由など知らない。知りたくもない。


 それでも生き残ってしまったという確かな事実がそこにあった。


 今でこそ彼らに対して憎悪を感じることはあるが、あの時そんな感情はなかったのだろう。


 ただ怖かった。


 体が動かなかった。


 その程度の人間だったから、俺は生かされたのかもしれない。



「こいつは使えそうだ。」


 敵は俺を見るなりそう言ってニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。


 捕えられた俺は奴隷として魔大陸の市場に売られた。


「齢はまだ10ですが、見てくださいこの体つき!今後に期待が持てる体です。戦闘させれば.....」


 そう俺のことを紹介するそいつの顔が忘れられない。


 人を金として見ているような目が離れない。



「買おう。」


 そう言ったあいつの目は俺のことを駒としてしか見てなかった。




 ーーー



「ここがお前の部屋だ。」


 連れて行かれた場所はさぞ狭い場所だった。


 俺が二人しか入れないような部屋だ。


 歳を重ね更に大きくなれば俺一人分しか入らないんじゃないだろうか.....



 一人だった。



 俺は、なぜ生きているのか分からなかった。


「戦う練習をしろ。」


 命令される時、目は相変わらず人を見ていなかった。


 それでもその指示に従った。


 生きるのが辛いのに、死ぬ勇気ぐ出なかった。


 戦闘訓練はきついものだったが、それ故にある程度戦える奴隷になった。


「皿洗って。」


 そういう奴隷の目は人を見ていない目というわけではなかった。


 だが、俺を見ているわけではない。


 それは死者の目。


 生気を失った目だった、


 皿洗いをお願いしたその奴隷はある日、家の花瓶を割っていなくなった。




 ーーー



「シュワール様、こちら本日の朝食です。」


「.....」


 返事はない。


 いつものことだ。



 気づけば二十五年が経過していた。


 俺はここで一番年上の奴隷になっていた。


 戦える奴隷ということで重宝されたところもある。


 奴隷同士の私的なコミュニケーションは基本的に禁止されていた。


 共謀して謀反を起こさせないためだろう。


 故にそこらの新人奴隷のことなんて殆ど知らなかった。



 ーーー



「◾️◾️◾️◾️◾️!◾️◾️◾️◾️◾️!」


 ある夜名前を呼ばれていた。


「仕事だ。用心棒。」


 乱暴に無理やり外へ連れ出された。


 名前を呼ばれるなど何年振りのことだろう。


 そう思いながら俺は外へ出た。



「おい!あいつを!あいつを倒せ!」


 その者の周囲が燃え盛っていた。


「おい!あいつ.....ぐっ.....!!」



 《デスマジックパワー》


 短くそう呟いて彼は俺の方を見た。


「君、名前は?」


 俺を見てくれていた。




 ーーー




 ミサール・ノイル.....


 それが彼の名前だった。


 俺をあの地獄の日々から解放してくれた。



 今、彼と旅して思う。


 誰にでも心があるのだと。


 彼は衰弱していた。


 あんなにも強く、聡い者でも心を壊すことがあるということ。


 それをまざまざと見せつけられた。


「クリス流理」


 《掴》


 クリス流では珍しい魔術を使わない技。


 だが、俺はそれを多用する。



 ドゴンッ。


 と音を響かせ、敵の攻撃は止まる。


「ほう.....」



 止める。


 守る。


 守りたいものを守るべきものを守る。



 地獄の日々はもう生きたくない。


 だから守る。


 拾ってくれたこの命の穏やかな生活のために守る。


「うおおおおおお!!!」


「ガルス流!」


 それでいい.....!!


 敵はその動きに対処しようと試みる。



 が、それは俺がさせない。


「クリス流!真」


 《砲》


 流れるような早さの突きを冥神に放つ。


 ジャガーへ攻撃はさせない。


「ぬぅ.....!!」


 それでも敵は攻撃をしてくる。


 剣を横にし、気合いで耐える。


 いや、耐えなくてはならない。



 それでいい。耐えろ。



 俺の役割はそれだけだ。


 任せるぞ。お前も気合いで攻めろ。


「ジャガー.....!!」


 心があるから、俺たちは弱い。


 心がある俺たちは弱い。


 だから、俺たちは強くなれる。

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