第114話:止めてやる
「貴様、剣術も使うのか?」
剣を作り、敵を見据えた俺を見てそう声をかけてきた。
「さあ?どうだろうな。」
こちらの攻撃手段をそう簡単に渡すはずはない。
「ジャガー!行くぞ!」
「おう!分かってら!」
敵からの攻撃に怯まず、ジャガーが前へ動き出した。
怖い者知らずといった様子だ。
これはジャガーの強みなのかもしれない。
《ロックショット!》
ジャガーを後方から狙う魔導弾を炸裂させる。
ジャガーを援護する。
「シーナ!」
「アリス流!縁緑!」
《突返!》
飛んできた魔導弾に対し、絶妙威力で突きを放つ。
炸裂は.....しない.....!!
魔導弾の威力を保ちつつ、逆方向.....つまりハデスの方向は突き返した。
「ガルス流!大剣!」
「おいおい、それは御法度だ.....」
そう呟いた冥神の口調に全員が震撼した。
敵の目が変わった。
《目論見》
「一度見せた攻撃だぞ。」
冥神が一瞬でジャガーの懐に潜り込んだ。
シーナの突き返した攻撃の方向から既に冥神は姿を消していたのだ。
「くっそ.....!!」
間に合うか.....??
いや、間に合わせるしかない.....!!
ジャガーの放とうとした技は大剣。
大振りだ。
ただでさえ敵の攻撃に対処できないのに、懐に入られるともう為す術がなくなる。
「調停の技」
《霹空!》
ジャガーと今にも振り下ろされる手刀との間に割って入る。
間に合った.....が.....
くっそ.....!!
手に持っていたウォーターソードを用いて技を繰り出す。
「アリス流!主技!」
《懐流!》
カウンターを繰り出し、敵の攻撃をいなす.....
ことは出来ない。
いなそうと敵を斬ろうと試みるが、このレベルの敵は攻撃に対処してくる。
特に俺の剣術はまだ未熟だ。
相手の力の入れ具合だけで剣が押し返される.....!!
敵の正面に俺、後ろにジャガー.....
優先すべきは.....
《マッドシールド!》
《コールドウインド!》
マッドシールド.....他の防御よりも脆いが生成が早い。
最低限の防御のために一瞬で生成する。
同時にコールドウインドでジャガーを後ろへ。
アタッカーの彼が倒れたらキツくなる。
更にコールドウインドで俺の体も冥神から遠ざける。
今出来るのはこのくらいか.....
ドスッ.....!!
と鈍い音がしてマッドシールドが崩れる。
鮮血が流れる。
ラーファルトの体が斬られ、血が噴き出す。
吐血したラーファルトに追撃がくる。
が、その一瞬の間にもラーファルトは思考を閉ざさなかった。
『マグ.....』
《マグウィップ!》
Sariに言われるまでもなくその技を展開する。
最速。
最速の技の出だ。
傷を負わせた直後に来た攻撃に冥神の判断は一瞬遅れる。
自身の予想外に冥神は笑っていた。
楽しんでいた。
「いいな.....!!いいぞお前!」
冥神の腕が同時に焼け飛ぶ。
他の者の入り込む余地のない攻防が二人の中で繰り広げられている。
やや冥神有利。
だが、ラーファルトは傷を負った。
「ガハッ.....!!」
血がラーファルトの口から噴き出る。
その一瞬の隙を冥神が見逃すはずもなく、ラーファルトに渾身の一撃を繰り出す。
《冥星》
「くっ.....!!」
「調停の技」
《守羅!》
その防御の強度はかなりの物だ。
が、冥神の渾身の一撃とも言えるそれは止められない。
威力は落ちる。
だが、全く足りないのだ。
重力を敵に対し収束させ、限りなく速く、重い殴りを実現した。
通常なら敵の腹が抉れるどころではない。
その余韻で四肢が爆散する。
ドォォォォォン.....!!
音を立てて、ラーファルトが吹っ飛ぶ。
谷の壁にぶつかり、その体は動かなくなった。
「ミサール.....!!」
「うおおおおおおおお!!!ガルス流!」
「ジャガー!お前、馬鹿!」
ライナのミサールを心配する声が聞こえたかと思えば、ジャガーが冥神へ突っ込んでいった。
ラーファルト.....彼の中ではミサールと言うべきだろうか。
ミサールの怪我に対しジャガーは責任を感じていた。
自分のせいだと.....それ故の独断特攻。
「つまらん。」
そらを冥神は見るや否や、そう一蹴した。
「ガル.....」
まだ技を言うことも出来ていないのに、冥神は彼の目の前まできていた。
ガキイイイン.....
金属音を響かせ、その技は止まる。
「ジャガー.....お前は本当に馬鹿だなぁ.....こいつの攻撃は受けるたびに生きた心地がしなさそうだろうが.....」
そう言って、ニヤッと笑い、止めていた技を弾く。
「ウォーリア.....」
「ジャガー.....俺がこいつを止めてやる。攻めろ。」
ウォーリアは尚も不敵に笑い、敵を見据えていた。