第113話:背中に
ドォォォォォン.....!!
と轟音が谷に反射して響き渡る。
土煙が舞う。
「どうだ.....!!」
ジャガーが俺たちのいるところまで下がってきてそう言った。
敵の反応は今のところはな.....
『攻撃です。防御を推奨します。』
《ディスクリート!!》
全員の前に防御を展開する。
「いい反応速度だ。」
「それはお互いでしょう.....!!」
「貴様、名前は何と言う?」
「.....ミサール・ノイルだ。」
風が巻き起こり、あたりの土煙を散らす。
敵の傷は.....まあ良く分からない。
恐らく右腕に怪我を負ったのだろうが、もう既に回復しているし、元から血まみれなので、新たに血が滴っているのかも分からない。
つくづく面倒な奴だ.....
「貴様らの強さは分かった。褒美だ。今の俺の全力で相手してやろうぞ.....」
今の全力.....!!
「全盛期の強さじゃないだけましって言ったところね。」
どうやらライナたちもロードリングから冥神の情報は入手出来たようだ。
精神と肉体を分けて考えられるか.....
唯一の打開方法と言える物なら、それは恐らく肉体を消し炭にすることだろう。
『肉体を灰にして、冥神の精神の憑代を無くす。もちろん回復させるはずもない。』
そういえば、肉体の無くなった精神ってどうなるんだろうな.....
『基本、それは死を意味します。死者の魂は世界樹へ向かうとされています。』
それは興味深いな.....
ただ今回、冥神の精神は自分から肉体を抜け出して、渓龍の肉体を器にここに来た模様だ。
渓龍の肉体が消えれば、自分の肉体に戻るしか方法はなくなる筈.....
《魔導弾》
魔術の弾.....!!
それも複数か。
面倒だな.....
「全員!避けて!危ないのはミサールが叩き落とすのよ!」
ドドドドドド.....!!
と地面に魔導弾が突き刺さる音が響く。
幸い、俺のデスマジックパワーのように見えない攻撃ではない。
紫に色づいている。
魔力操作が使えたら余裕なんだけどなぁ.....
現在、顔を変える魔術を常時使用している。
魔術の使用中は魔力探知が使えない。
《ロックショット!》
逸らすなどではない。
むしろ、当てに行く。
地面に当たった強い衝撃を与えることで、爆発させる。
狙い通りに空中で爆発し、紫色の結晶が降り注いだ。
「危ない.....!!」
何個か捉えるのを失敗したようだ。
魔力探知が出来ないため、完璧な精度ではなかったのだ。
俺たちの後方に魔術は飛んでいく。
「いや、任せろ。」
「クリス流斬魂」
《廻斬!》
…..!!
ムーブドウインドで動きながら、剣で攻撃を防御する。
守れる範囲の広い技だ。
「ナイスだ。ウォーリア。」
ライナがそう言う。
通常は詠唱が必要な魔術師のライナはこの攻撃に長く対処はできなかっただろう。
結界を張っているシーアに関してはそのライナ以上に対抗策がない、
そう考えるとやはりウォーリアが後ろに回ったのは正解だった。
魔術師の俺には防げない部分はウォーリアが確実に防いでくれる。
その安心感を背中に感じるのだ。
《ウォーターソード》
剣を生成し、俺は敵を見据えた。