第111話:反省会
「はい!それでは.....第一回フローハット戦闘反省会〜!」
と何とも元気なライナの声から反省会がスタートした。
俺が入ってから初めての戦闘だった割には上手くできた部分も多かったため嬉しいのだろう。
「今回の戦いでの反省点を挙げていきましょう。それではジャガーから!」
「まあ及第点は超えたな。連携は悪くねぇ。ただ、俺自身の動きが一番面倒を引き起こしてたぜ。剣術の性質上ある程度は仕方ないとはいえ、怪我も他に比べて多いし、そこは反省点ろうな。」
まあ、この中でジャガーが一番危なっかしい動きだったのには異論ないが.....
「それだと私の仕事が無くなっちゃいますからどんどん怪我してくださいよ。」
とルアが話していた。
仕事が無くなるのはむしろ良いことなんじゃ.....
「怪我云々は後衛の私じゃあまり分からない部類ね。」
「アリス流は怪我をあまりしない剣術ですからね.....ガルス流は怪我を代償にしてでも攻めて、攻めて勝ち切る剣術ですからそのままでも良い気はしますが.....」
ライナとシーアがそう話す。
怪我を代償に.....か.....
「多分、それ違いますよ。」
「どういうことだ?」
俺の発言に対してジャガーがそう質問してくる。
ガルス流は怪我が多い剣術だ。
ただ、怪我を代償に攻撃する剣術でもない。
ガルス流の使い手であるミルも怪我はあったが、危ないという怪我は言われてみれば見たことがない気がする。
「ガルス流は多分.....手数で攻める剣術です。今のジャガーは一撃で倒そうと攻めを意識し過ぎている状態なんですよ。ガルスの強い所はかなりの威力の攻撃をある程度連続して放てる点です。」
かなりの威力の攻撃.....ミルはこれをどうやって使っていただろうか.....
敵を自身が無傷のまま倒せる確信があれば技を放っていただろう。
敵に体制が整っていたのなら.....
「攻撃は防御です。敵の攻撃をその威力と手数で上回って、その隙を倒すんですよ。」
手数が増える分、ミスも増える。
怪我の多さの所以はここだろう。
だが、その本質を理解出来ないものは捨て身で向かっていくだけだ。
ミルはそれを理解出来ていた。
だから怪我を最小限にしながらも敵を倒せていたのだ。
「なるほどな.....要するに突っ込む部分を考えろってことか.....」
「まあ、大体合ってます。逆に魔術を使う私やライナにはそこが課題ですよ。敵の攻撃に対して俺たちがもっと対処出来れば突っ込みやすくなりますから。」
この人らとの連携は初めてだったからな.....
今回はデータの少なさも相まって戦闘掌握も本来の精度ではなかった。
俺が魔力探知を使えない分周りへ気を配らせているのも要因の一つだろう。
敵の攻撃と味方の動きを読む力をもっとあげなければならない。
「あと、明確に分かるのは、戦闘の中心はジャガーにすべきだ。最も手数と攻撃の多いジャガーをサポートしつつ、裏から攻撃。それが理想だよ。」
「.....その戦闘の方法なら俺から提案がある。」
その発言をしたのは考え込みながら今まで話を聞いてるだけだったウォーリアだった。
「ミサールは後衛ではなく中衛にすべきだ。基本は魔術師とはいえ、剣術も使える。更に無詠唱魔術なんだ。後衛にいさせるのが勿体無い。魔術でジャガーをミサールにサポートしてもらいながら遊撃。裏からの攻撃も狙える。」
「それに.....その構成にするなら私も注意を分散しやすくなる.....カウンターが決まりやすいわね。」
「俺としても援護がより近くから来るって考えると楽だな.....」
前衛で剣士をするジャガーとシーアもそう発言した。
「そして、その体制をとるなら俺は、中衛と後衛の間。不意打ちに備えてそこにいる。どうだ?」
「.....」
「.....ライナ?」
ウォーリアがライナにそう質問するが、深く考え込んでいるようで顎に手を当てて悩んでいるようだ。
「.....この構成にしたとき、ウォーリア.....あなたのタンクとしての役割は半分失われたようになるのは理解して言っているの?」
「.....!!」
タンクの役割としての基本、前衛で攻撃を受ける。
それを放棄するようなものだ。
「.....ああ、分かってるさ。だがなぁ、俺たちは渓龍を相手にするんだろ。生身の体じゃどうしても厳しい部分もあるんだよ.....」
ウォーリアの体は大きい方だが、龍からすればそれはもうアリの様に感じるかもしれない。
龍はそれほど大きく、力のある生物だ。
「そう。ならいいけど.....」
何か思うことのありそうな顔をしながらもライナは渋々といった様子で了承した。
渓龍の討伐が始まる.....!!