第109話:ジャイアントエレファント
「こいつ.....大きくないか.....」
『ジャイアントエレファントと呼ばれる魔物です。式神を召喚する技を使うことが特徴です。』
つまり、敵が増殖するようなものか.....
「行くわよ.....!!」
『聖なる息吹は、そなたの息遣い。与えられたる風の恵みは豊潤なるをもたらす。目前に迫る災いを打ち砕く力を与えよ。ああ、風よ。世界よ。緑を生やせ。命を紡げ。幾億が紡ぐその過程を発散せよ。』
《エアーボム！》
風技巧級魔術.....!!
まあまあの技といった所だろう。
バオオオオオオオオン.....!!
技の直撃を受け、魔物は鳴き声をあげる。
無傷.....とまではいかないが、そこまでダメージが入っている様子はない。
結構硬いな.....
といっても硬いだけで問題はそこまでない。
「予想以上の硬さね。敵の攻撃に警戒しながら死角から攻めるわ！」
そうライナから指示が入る。
事前に決めていたことがある。
敵の正面から攻めるのは、アリス流の使い手であるシーナとタンクのウォーリアだ。
ジャガーが動き回り、死角から攻撃を行う。
ライナと俺がその全般のサポートを行う。
ルアは、とにかく治癒魔術。
ちなみにルアには結界などを張ってもらう場合もあるとのことだ。
《ロックショット！》
ドォン.....!!
と鈍い音と共に敵にその攻撃が当たる。
敵の移動は遅い。
当てるのは簡単だが、やはり硬くて面倒だ。
今の攻撃でも敵にほとんど出血はない。
「無詠唱なのね.....確かに私たちを助けたときも思った記憶があるわ.....」
と、小さな声でライナが呟いていた。
恐らく、俺が無詠唱なのは今思い出したのだろう。
何気に魔術を見せるのは俺が彼女たちに助けられてからは初めてだ。
「どんどん攻めていきましょう.....!!」
『敵の攻撃が来ます。』
敵が長い鼻と牙を活かし、攻撃をしてくる。
この大きさだ。
まともにくらえば即死だろう。
とは言っても全員ロードリングを装着している。
余程のことがない限り攻撃をかわせないことはない.....!!
だから、このまま.....!!
《フローズンエリア！》
敵を凍らせる魔術としてはかなり高階級な部類。
だが、敵の大きさなどを加味すると絶命までには至らないか.....!!
「でも.....」
今は.....ここにいるのは俺だけじゃない.....!!
「ナイスアシストだ.....!!」
「ガルス流龍！」
《二連斬！》
俺の凍らせた足が二本落ちる。
敵の体制が崩れた.....
が、足を落とした程度では死にはしないようだ。
「このまま攻めたて.....」
ライナの指示が響きわたろうとするが、突如、風が吹く。
「くっ.....!!面倒ね、敵の準備が整ったようよ.....」
準備.....??
『式神の召喚の準備です。』
刹那、魔法陣が出現する。
「式神.....!!」
思わずそう呟く。
「ミサール！式神が出現と同時に最大火力をそこに打ち込んで！」
「了解。」
仲間に当たる可能性を考えて封印していたが、打てと言われたら打つしかない。
今はライナがリーダーだ。
「今.....!!」
《雷砲》
そこに現れたのは魔物の群勢といった感じの奴だ。
だが、一個体ずつはそこまで強くない.....!!
ゴオオオオオン.....!!
と轟音を響かせ、その攻撃は敵へ直撃する。
が、敵の影が土煙の中に見えた。
まずい.....!!
攻撃が俺の方に向かって飛んでくる。
まずい.....!!
「マッドシー.....」
駄目だ間に合わない.....!!
咄嗟に目を瞑り防御体制を取る。
が、衝撃は来ない。
恐る恐る目を開けると、ウォーリアが目の前に立っていた。
「クリス流」
《止》
「ウォーリア.....!!」
「攻撃を受けるのは俺の仕事だ。お前はお前の仕事をしろ。」
「そうですわよ。」
その声の主が俺の横を走り抜けた。
「アリス流厳」
《霞太刀！》
声の主はシーナだった。
敵が攻撃のモーションに入った瞬間、剣を振るう。
攻撃をさせない攻撃。
敵は防御の時間さえ与えられずに斬られる。
どちらも強い.....!!
「おりゃああああ.....!!」
「ガルス流重！」
《十連！》
「.....!!危ない.....!!」
ジャガーが連撃を繰り出し、敵を倒す。
が、この敵の量だ。
たった十回の攻撃では殲滅など到底出来ない。
「うおっ.....!!」
連撃の後には隙ができる。
その隙を敵が見逃す筈もなく、ジャガーは怪我を負う。
「任せてください。」
「大いなる災いに体を蝕まれ、立ち上がることも出来ぬ、このか弱き一命を天の名の下に変えさせたまえ！」
《エクストラヒール》
中級の治癒魔術でルアがジャガーを治療した。
怪我は酷くない。
あの状況で十連を選択するジャガーは剣士としてはまだまだ未熟っぽい。
案外ミルの方が強かったりしそう。
そう考えるとミルってだいぶすごかったんじゃないか.....
何はともあれ、どうやらそこまで強い敵が召喚された訳ではないようだ。
だが、それでも俺の攻撃に耐えた.....
ならば.....
『呪いの森と同様、または似通った呪いだと推測されます。』
なら、解析頼むぜSari…..!!
『了解。戦闘掌握も同時に開始します。』
