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第108話:似ている

「それで、魔大陸では何をするんだ?まあ、いつも通り自由にやってもいいけどよぉ。」

「魔大陸となりゃ中央大陸よりも生活は過酷になりますわ。色々計画は立てておいて損はないわね。」


 ジャガーの声にシーアがそう付け加えた。


「大丈夫よ!何せ私たちには転移魔術があるからね!」

「転移魔術で任務地へ移動し、任務を達成。もし、危ない場面に陥ったら街などへ逃げ帰るってことですか?」


 ライナの言った大丈夫の根拠についての予想をそう話す。


「その通りよ。よく分かったわね。」


 どうやら正解のようだ。


 まあ、調停の技の中の霹空もそんな感じで使えるから予想しやすいものであった。


 転移魔術ではないものの道さえ知っておけば移動を高速で行える。



「それで、最初の任務はこれよ.....!!」


 とライナがいい、手を広げるが何も起こらない。



「ん?」

 とハテナマークを頭に俺は浮かべていた。


「なるほど、渓龍の討伐か。そりゃあ報酬も高くなりそうだ。」


『渓龍とは、魔大陸中央部に存在する冥界の谷にいる龍です。七体存在し、それを天地七龍と呼ぶこともあります。』


 でも谷を守っているだけだろ?なんでそんなのに討伐依頼が?


『渓龍は七体.....一体は討伐されたため、六体のうちの三体ほどが冥界の谷を守っています。そこだけなら害はありません。ただし谷をでると凶暴化し、ただの魔物へなります。そこではただの迷惑だから討伐しようということです。』


 その一体倒したっていうのは.....


『パーティー名、ブレッドシャワーにより一体が討伐されました。』


 なるほど。


 まあ谷を守っているって強そうだしな......まだまだ個体数が残っているのは面倒だ。


 でも、一体倒したときに実害は出ていないんだろ?


『冥界の谷とは古の遺跡跡と言われています。倒したところでほとんど影響はないでしょう。』


 うん、そりゃ討伐依頼が出ても仕方がないな。


「ねぇ、忘れてたんだけど、ミサールのロードリング対応してなくない?」

「あ、はい。多分してないですね。」




「え、じゃあ、さっき私が[これだ!]みたいに言ってたの意味分かんなかったんじゃないの.....??」

「あ、はい。そうですね。はじめは正直何やってるんだろと思いました。渓龍って単語で理解しましたけど.....」

「っ.....!!」


 ライナがだいぶ顔を赤くして恥じらっている。


 なんか恥ずかしさを刺激してしまったようだ。


 ま、俺は悪くない。 


「ろ、ロードリング.....ミサール・ノイルと連携を.....」


 それでもなんとか俺のロードリング.....即ちサラと連携を取ろうとするが.....



「あれ、連携取れない......どうして.....」



 それは多分俺が偽名だからだろうな。


 なら、俺が彼女に送ればいいのか.....



 ロードリング頼む。ライナに送って。


『送信中.....失敗しました。』


 なんでやねん!!!


 と言いたいが、ライナたちも奴隷だったから追手から逃れる為に偽名を使用している可能性がある。


 うーん.....その可能性が高いな.....


「まあ、思念伝達出来れば連携はなくても大丈夫じゃないですか?」

「なるほどその手があったわね。」


 と俺の提案であっさりこの議論については終了した。


『ちなみにロードリングの追加機能はアップグレード後にしか使えませんのでご注意を。』


 ああ、そういえばそんなのあったな.....


 呪いの森での戦いの後にアップグレードしたんだっけ.....


 ってことはライナたちってやはり実力者なのでは.....??


『ライナが転移魔術を使えますのでその可能性は高いです。剣士の体格もかなり洗練されています。』


 いや、強そうだな.....


 まあ、強くないと渓龍を討伐なんてしようと思わないか。


 本当にことパーティーに世話になってもいいのかな.....


 ま、なんとかなるか.....


「うーん.....話すことと言ったらこのくらいね。それじゃ.....行くわよ。」

「え?もう行くんですか?」


 恥ずかしさで赤くなった顔も衝撃的な切り替えの早さで元の表情に戻したライナがそう言った。


「流石にまだ渓龍の討伐じゃないわよ。まずは練習。魔大陸最大の魔物を倒しに行くわ。」


 そう言うとライナは目を閉じ、杖を前へ向ける。


 目を閉じ、静止し、じっとしたままでいた。


 思わず、その真剣な表情に見惚れ、あっけに取られていた。


 ジャガー、シーア、ウォーリア、ルア.....皆が一言も発さず、その時を待った。


「.....見えた。」


 そう呟くいた後、ライナは詠唱を開始した。


「今、この時、目前に道は開かれる。見えぬものを感じ、聞こえぬものを知覚し、己を知り、祈りを捧げる。」


 ライナが杖を高々と掲げた。


 同時に空間が歪んでいるような景色が見える。


「これは.....」


 これはすごい.....!!


 ホールの異空間転送をする転移魔術か.....??


『推定するにその通りだと考えられます。』


 徐々に、通れそうな穴が目の前に空き始めている。


 ワープのタイプではなく、歩いて通るホールのタイプなのだろう。



「世界を繋ぎ、異空と交信し、標を示せ。我の描く世界よ。廻れ。進め。新たなる道を創造せよ。」


 《トアブルック!》


「ふう.....」


 少し疲れた様子でライナが息をついていた。


 目の前に広がるのは光のないゲート.....


 これって.....俺がこの世界に来たり、王宮に行ったりしたときと同じやつな気がする.....


『少なくとも王宮に行った時よりも難易度の高い魔術です。』


 どうして.....⁇


『行く場所が定まっていなかったからです。今回は目的の魔物がどこにいるか分からないけれど、そこの場所にまで座標を誘導しています。』


 なるほど、王宮に行ったときは王宮という座標が元々定まっていた分簡単であったってことか.....


 以前見た時よりも「すごい」と感じた理由はこれなのかもしれない。


「すごいですね。このゲート.....」

「えへへ。ありがとう。」


 その瞬間の彼女の笑顔が何故か美しくて、綺麗でたまらなかった。


 思わず、はっとして見惚れてしまっていた。


「それじゃ、行きましょう!」


 そう元気にライナは自身で作ったホールのゲートへ足を踏み入れる。


「しゃー!行くぜ!」


 と言い、元気に後をついていくジャガーの少し後方で俺は先程のライナの笑顔を思い返していた。



 ほんの一瞬、似ていると思った。



 サナの笑い方に.....

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