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第106話:フローハット

「ん.....」


 鳥の鳴き声が聞こえた。


 朝日が昇っていた。


 窓からその光が差し込んでいた。


 そして、それを俺は見ていた。



 そのまま昨日のことを思い出す。



 救ってもらった。


 今を見ることを考えさせてもらった。


 過去に囚われ、足踏みさせせず、蹲っていた俺を立たせてくれた。



 これから歩めるかは俺次第だ.....



「行こう.....」


 そう呟いて俺はドアを開けた。




 ーーー




「門の下って.....ここか。」


 確かここって.....


『魔大陸の中で中央大陸に最も近い街。ニアバ村です。』


 俺も以前来たことがある。


 俺—ラーファルト・エレニアが指名手配されていることをここで俺は知った。


 まあ、今となっては偽名のはずのミサール・ノイルも指名手配されている.....


 が、ラーファルトと違って、顔を敵に知られないように戦っていたためそこは大丈夫だろう。


 ラーファルトとして指名手配されて、俺がそこは拘っていた。


 いちいち、魔術で顔を変えるというのも面倒なのだ。


 まあ、毎回ライナたちの前で顔が変わるのもおかしいし、この顔をデファルトにしようと思う。


 迷惑はそうすれば変わらないのだ。



「あ、おはよう。ミサール。早いね。」


 噂をすれば.....だ。


「おはよう。」

「お、おはよう。」


 ライナの挨拶に少ししどろもどろしながらもかろうじて挨拶を返す。



「ほら、堂々としてて。あなたはパーティーの一員になるんだから。」

「そうだぜにーちゃん。」


 いつの間に来たのか、そう背後から声をかけられ、一瞬びくっとする。


 常時トリックフェイスにより顔を変えている俺には魔力探知の使用が出来ない。


 魔力探知は魔術を使用していない時に機能するものなのだ。


「ほんと.....驚かせないで下さいよ!.....ジャガー。」


 こういうのはSariが気配を察知して教えてくれる筈なのだが、驚かせるみたいな親密度表明イベントっぽいのは教えてくれない。


 大体教えてくれるのが、殺気.....と.....ん?


 ほぼ殺気な気がする。



 まあ、何はともあれ、Sariにはそういう気配についてへのリソースを割いてもらってる。


 故に他のことへの対応は控えめだ。


 以前よりも周りに注意深くしている分、脳内で喋ってくることも減り、気持ち悪く.....


『何か言いましたでしょうか?』


 いえ、何も言ってません!


 と、一応聞こえているので注意しよう。



「ほんとですよ。怪我でもしたらどうするの?ジャガー.....」


 と、そう俺たちの会話を聞いてそんな声の人物が話しかけてくる。


「別にいいだろルア.....こんなん男同士の戯れさ。」

「もし怪我したら治癒するのは誰なんだい?」


 多分、冗談なんだろうが、なんかルアの目が据わっている。


 怖.....


「この度は大変申し訳ありませんでした。今後は安心安全な人間関係の構築と、ルア様のお手を煩わさないような.....」


 と、ジャガーがビビって謝罪している。


 おもろい。


「はあ.....二人ともいつものノリでやらないの!ミサール混乱してるから!」

「はいはい。分かったよ。」


 と、ルアは案外あっさり引き下がった。


 が、ビビりすぎてその様子に気づいていないジャガーは念仏のように謝罪し続けていた。


「今後の対応につきましては.....私の気持ち一つ一つと相談しつつ.....」

「おい、何やってんだ!」

「いでっ!!」


 ジャガーが殴られた。


 謝罪してたのに理不尽だ.....ま、大丈夫だろうけど。


 愛のある一発(?)のはずだ。


「すまんな。ジャガーのノリは一々ついていけんのだ。」

「あ、来たわね。紹介するわ。タンクのウォーリアよ。ドワーフなの。」

「ウォーリアだ。うちのジャガーがすみませんな。」

「いえ、案外こういうのも楽しいです。ミサール・ノイルです。」

「ミサールよ。その件は世話になった。おかげで俺は今も立派な生活を.....」

「はあ.....辛気臭いわねぇ。」


 俺とウォーリアが話しているとまたも背後からそう声をかけられた。


 ほんとなんていうか心臓に悪い。


 びっくりしちまう。


「シーアよ。よろしく頼むわ。」

「ええ、よろしくお願いします。」


 これで.....全員か。


「よし、揃ったわね。じゃあ、これからの旅の説明をするわ!パーティー名.....フローハット!新しい旅の始まりよ!」


「おー!!!」


 とみんなでライナの声に合わせる。


 パーティー名、フローハット。


 リーダーは魔術師のライナ。

 剣士はジャガーとシーア。

 タンクがウォーリア。

 治癒魔術師がルア。


 そして、俺がこの中に入る。


 魔術師のミサール・ノイル。



 ここから、また旅が始まる。


 この仲間たちとの新たな旅が幕をあげる。



 また、自由を夢見て進んでもいいのかもしれない。


 答えははっきり出ないけれど、立ち上がって、歩きたい。



 自分が何をすべきなのか考えたい。


 知りたい。


 だから俺は歩む.....


 一歩ずつ.....見ていてくれよジェット.....



 ラーファルトは空を見上げた。


 雲の切れ間から覗くように太陽が見えていた。




 ーーー




 声は呪いに。


 呪いは行動に。


 行動は感謝に。


 感謝は声に。


 声は救いに。


 救いは行動に。


 行動が何かに。



 繋げる。


 紡ぐ。


 絶やさず、真っ直ぐ。


「人と人とはそうやって絆を深めるのだよ。」

「じゃあ、ラーじいとサーばあもそうやって仲を深めたの?」

「ああ、そうだよ。正にこの言葉の通りに紡いで、繋げてきた。」


 彼は思い出すように窓から空を見上げていた。

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