表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第九章:過去を見つめて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/195

103話:過去に囚われた者

更新遅れていてすみません!

二日に一回投稿再開します!

「終わりだ。潔く死ね。」


 何も出来ない。


 そんな時間が流れる。


 ジェット!ジェット.....!!


 目の前でジェットが血まみれで倒れている。


 声も出せない。

 体も動かない。



「はあ、はあ、はあ.....!!」


 ただ呼吸だけが荒くなる。


 汗が体中から滲み出る。



 その光景が目の奥に焼きついて離れていなかった。




 ーーー




「うっ......はっ.....!!はあ、はあ.....」


 夢.....??


 俺はベッドに寝転んでいた。


 死んではいない.....よな.....



 ラーファルトは握り拳を作る。



 ドシュッ.....


 っと鈍い音を立てて頬を殴った。



 痛い。


 生き.....てる.....



 なんで.....


「あ、起きた?」



 誰かが部屋に入ってきた。



 この人が俺を助けた人か.....



 初めて.....会ったはずだ。


 初対面のはずだ。


「ねえ、あなたミサール・ノイルでしょ。」


 ミサール・ノイル.....魔大陸、鬼大陸、中央大陸において、奴隷解放を進める者。


 ラーファルト・エレニアの偽名.....


 Sari、今のラーファルト・エレニアの情報は?


『ジャック王国への侵入、及び、その拠点の壊滅を企んだとして全世界指名手配。ただし、魔大陸、鬼大陸ではそこまで気にされるほどではなく、本人も指名手配されていると気付かず、ダンジョン攻略や魔大陸一周に勤しんでいました。約4年の間行方不明。』


 今も状況は変化なしってことか。


 指名手配、面倒だ。


 関所等の場所では指名手配された者がいないのか必ず確認されている。



 だから俺は偽名を名乗っている。


 ミサール・ノイルだ。



 そして、更に見つからないようにトリックフェイスを用いて顔を変えている。



 全く、面倒なものだ。



 元はといえばジャック王国側がルイスを捕まえたことから始まった。


 そこを全て隠蔽するとは.....



 また、この件に関してはルインド王国側も動くことは出来ないだろう。


『ルインド王国がマスターを庇えば公にジャック王国と敵対すると言っているようなものになります。』


 って言ってた。


 虚しいよな。



 ルイスたちが結局生き残れたどうかさえ分からない。


 もし、そうでないなら.....


 俺は.....俺たちは.....



 何をしに行ったのだろうか.....



「あの、どうかしましたか.....」

「あ、いや、なんでもない.....ですよ.....ありがとうございます。」

「ねえ、どうして取り繕うの?」

「え?」


 取り繕うって.....


「私ね。びっくりしたのよ。」

「なんの話をしてるんだ?」

「私があなたを助けた時の話。」


 森の中で俺がうずくまって死のうと考えていたところか.....


「私もね、あの様子を見てたから分かるのよ。」

「何が.....分かるんだ.....」

「絶望よ。」


 絶望.....


「じゃあ.....どうして助けたんだ.....俺はもう死にたかった。死のうと考えた。やっと楽になれるって思ったんだよ.....なのになんで.....!!」

「人生ってのはね、絶望ばかりなの。私もそうだった。私も死にたいって何度も思ったことあるよ。」

「それなら.....!!尚更.....!!」

「でも、私は救われた。他でもないあなたによ。」


 俺が.....??


「いつ、俺は君と会ったんだ.....??」

「きっと覚えてないわ。三年程前、あなたは奴隷だった私を解放してくれたの。」


 確かに俺はここ何年も奴隷を助けるために各地を巡った。


「私はね、あなたに言われたの。泣きながらあなたに抱きついて、怪我もしていて、混乱していたの。今より髪も伸びていて顔も見えてなかったと思うわ。」


 奴隷の扱いなんてそんなもんだ。


 正直、今のこの清楚な感じとは似ても似つかないだろう。


「その時、あなたに言われた言葉に私は救われたのよ。」


 [下を向いてはいけない。周りが見えなくなる。過去のことを考えてしまう。周りを見渡して、今すべきことを考えて、未来を描いて、夢を持って、自由に生きるんだ。俺はそのために.....]


「って。私はその言葉に救われたの。」


 確かにそんなことを言った覚えがある。



「怖い。怖い。痛い。怖い.....!!」


 と言って泣きついてきた。



 俺にもできていないことを偉そうにと思いながらそんな言葉を言ったはずだ。


 サナがいなくなって、ミルと二人で旅している時、俺はそう考えて乗り越えていた。


 一時的なものかもしれない。


 でもそこが基盤となってなんとか出来るようになるかもしれない。


 とそう思って声をかけていたはずだ。



「でも、あなたも出来てないみたいね。」

「.....そうだな。」

「安心したわ。」

「安心?」


 変な感じだ。



 情けないところを見せて、それで安心だなんて言われるとは.....


「私ね、あなたみたいになりたいって思うの。かっこいい人。同じ感じの人をもう一人知ってるんだけどね。」

「どんな人なんだ?」

「強くて、優しくて、大人っぽくて、一緒にいると楽しくなるような人だよ。」


 へえ、そんな完璧みたいな人いるんだな.....


「あなたも同じよ。強くて、優しくて、大人っぽくて、一緒にいると楽しくなるような人。そして、更にあなたは弱いところもあるのね。」


 きっと、その人は弱いところを隠していたのだろう。


 弱くない人なんていない。


 弱いから人と人は話して、自分の強みを共有して、生き延びようとする。


 時には弱さを見せて慰めてもらえる。


 でも俺の弱さの見せ方は駄目なやつだ.....


「俺は.....」

「私はあなたが駄目だなんて思わないのよ。」


 ラーファルトの言葉を遮って彼女はそう声を発した。


「どうして?」

「私も弱いから。弱みを見せた。でもだからこそ、あなたに強くしてもらえた。今度は私があなたを強くしてあげるの。」

「それは余計なお世話だな」

「ええ、でも必要なことよ。顔を見れば分かる。辛そうで、死にたそうで、過去しか見れていない。私があなたを今に連れてくるの。」

「くっ.....!!」


 ラーファルトは歯を強く噛み、鋭い目つきで彼女を睨みつけた。


「必要ない。過去について俺は話さない。」

「話さなくていいわ。」


 ラーファルトには衝撃の一言が返ってきた。


「過去を話さなくても、会話するだけで今を知れる。今を見れる。」

「だからってなんだ.....過去を知らないと語れないことだってあるだろ.....!!」

「それでも、あなたは前を向いてと私に言ったの。過去を見ず、今を見るんだって。だから私もそれをあなたに要求するわ。あなたは、今、周りを見て、何を思うの?何がしたいの?」

「.....分からない。俺は.....もう何がしたいのか分からないんだ.....だから.....」

「なら、一緒に探しましょう。あなたの希望を。」


 ラーファルトの言葉を遮り、彼女はその手を差し出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ