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第101話:10年

更新再開!9章開幕!!!

《命の契約-転》


ラーファルトは何もない荒野に転移させられた。



意識はもちろんない。




「ガルルルル.....」

と付近にいた魔物が唸り、突如現れたラーファルトへ向かって威嚇している。


が、当然意識のないラーファルトが反応することはない。



「グルオオオオオ.....!!」


そのラーファルトの様子に痺れを切らしたのか一体の魔物が襲って来た。




キィン!


と音が鳴る。



《ウォーターソード》


魔物の歯をラーファルトが止めている。



『戦闘掌握-自動殲滅モードを開始。』


ラーファルトの口からその声が発される。


ラーファルトの意識とは全く関係のない発言だ。


Sariが脳波へ干渉し、ロードリングの装着者.....ここでいうラーファルトを守るように自動で戦闘を行う。



Sariがレベルアップしたからこそ出来るようになったことだ。


ただし、人道的観点かはこの機能は命の危機の際、更に助けられる仲間が周囲にいないときに限られる。



無論、それはラーファルト自身も理解することは出来ない。



『敵の能力等、把握済み。駆逐します。』



《雷砲》



容赦なく魔術を放つ。


Sariの見立てではこの技を避けることな到底不可能と判断したのだ。


その予想が外れることはなく、そのまま技の方向にいた魔物は消し炭にされる。



「グルアアアアアアア!!!」


残党が同時にラーファルトへ襲いかかるが、Sariは動じることなどない。



その全ての動きを読んでいた。


「ガルス流奥義」


《一閃》



ラーファルト.....戦闘掌握を行ったSariにより、最適化された一撃は敵を討つ。



『敵の生体反応消失を確認。戦闘掌握を終了します。』


と言うと同時にラーファルトの体は地面に静かに横たわる。



体の方はとっくに限界を超えている。


意識のないラーファルトがその荒野に転がっていた。




ーーー




10年後———


「調停の技」


《霹空》



「おお、ここは.....」

「おい、ほんとだったんだ.....」

「逃がしてくれる奴がいるって.....奴隷から解放してもらえるって.....!!」

「本当にありがとう.....!!ありがとう.....!!」


感謝を述べられたその人物は微笑を浮かべながら背を向けた。


「いえ、私のことは忘れてくれて構わないので。では.....」

「ちょ、ちょっと.....!!」


「調停の技」


《霹空》



森の中。


ポツンと佇む家の前に彼は移動していた。



《ロックショット》


横から襲いかかろうとしていたその魔物を一撃で葬る。



同時にそれを今日のご飯にしようと考えた。



《ブロードフレイム》


魔物を焼き、一口食べたところで彼は口を歪めた。


「やっぱ何年経ってもこの土地のものには慣れないな.....」


と言う声に応える者はいない。


「Sari。」


『はい。何かご用でしょうか。』


彼の脳内にはそんな声が響いた。


「俺がこの魔大陸に来て、何日だ?」


『3650日。10年です。』



仲間と言える者は誰も作らず、10年。


長い月日が経過した。


あの日から.....





ーーー




「う.....」


目を開けると見知らぬ藁の天井があった。


全身が痛い。


体を動かしにくい.....



そうだ、ジェット.....!!


ジェットは.....!!


「あ、起きましたか?」

「ジェットは.....!!」

「それ、誰のことですか?」


勢い余って、目の前にいた子供へそう聞いてしまった。


髪色は黄緑。


そして牙がよく目立っていた。


よく見ると縞模様の尻尾もついている。



「あ、ええと.....」


『魔族の一つ。エルフォ族です。』


「エルフォ族.....の人だよね?」


そう俺が声をかけると、「知っているの?」と言いたげな表情を向けて来た。



その顔に頷くと、彼は口を開けた。


「その、どうして倒れて.....」

「それは.....」


いいかけた所で口を紡ぐ。


「それよりここはどこなんだ?」

「え?エリジウム村ですけど.....」

「あ、ええと.....そうじゃ.....」


『魔大陸北西部に位置するエリジウム村です。』


Sariによりそう教えてもらえたため、俺は質問を中断する。


「その.....倒れてたので、そのまま放置していると危ないと思って.....」

「ああ。ありがとう。手当までしてもらって.....」


俺は相当な出血量を伴う怪我をしていた筈だ。


かなり手当に時間はかかっただろう。



《フェアリーヒール》


上段の回復魔術を使って怪我を治す。


「え、無詠唱......??」

「ん?ああ。そうだよ。」


無詠唱魔術に驚いたような素振りを見せたので、俺は否定などせずに答える。


「その、どうやって.....」

「うーん。魔力の動きって感じられる?」

「魔力の動き.....??」

「魔術を使う時に体内で魔力が動いてるのを感じるんだ。それが分かれば、才能があるよ。」

「感じられたことないかも.....」


いや、まぁ感じられる方が珍しい。


この世界の人々にとってそれは生まれた時からある普通の感覚だ。


異世界から来た俺にとって、その魔力の動きは違和感だった。


だから無詠唱魔術を使えた。


ただ、それだけだった。



「あの.....」

「こら、シャーク!それぐらいにしなさい。」


家の中へ大人のエルフォ族がはいってくる。


「こんにちは。ごめんね。シャークが色々ちょっかいかけて。」

「いえ、こちらこそ助けて頂きありがとうございました。」


『敵意あり。警戒が必要です。』


え、敵意.....??


「さて、シャーク。私はこの人に大事な用があるの。ちょっと出ていってくれる?」

「うん。分かったお父さん。」


お父さんなんだ。


とラーファルトは敵意があった状態でもそう思う。


シャークは俺の寝ていた場所からいなくなり、そのエルフォ族と二人きりになる。


「それで、話って?」


敵意がある以上、端的に話を終わらせたい。


そう思い、単刀直入に言う。


「とぼけるなっ!!」


《ロックシールド》


敵のふるった剣を受け止める。


「なっ!」

と敵の動揺する間に俺は更に魔術を放つ。


《アンダーフローズン》


「怪我が酷くて、何日も寝ていたとしても俺がお前に負けることはない。」


敵意が剥き出しすぎる。


確かにこいつは強い。


が、父としての振る舞いを終えた後は、眉間に皺を寄せ、睨み、軽蔑するような表情を見せていた。


これでは、攻撃しますと言っているようなものだ。


俺にSariが敵意ありと教えてもらわなくてもこの攻撃は防げただろう。


「だ、誰かぁー!!!」


うわっ、だっる。


こいつ.....


「どうしたぁー!!!」


という声と共に足音が近付いてくる。


『逃走すべきです。敵の人数的に怪我を負わせてしまう可能性があります。』


うわっ、めんど。


「はぁ.....お前。なんでこんなことしたのかは知らねえが助けてくれたことには感謝してるよ。礼言っといてくれ。」


「礼ならシャークに言え。人間風情の貴様の伝言なんて伝える価値などないわ。」


「でも、シャークの父はお前だろう?」


「.....」


俺の言葉に反論は出来ないようだ。


伝言伝えてくれるだろう。



よし、じゃあ出発.....



「貴様.....!!」

「悪いが戦うつもりも、争うつもりもない。」


ラーファルトはそう告げると魔術を放つ。


《マッドスロウ!》


その魔術に目を瞑りながらも剣をふってきた。



大雑把な攻撃だなぁと思いながらラーファルトは体制を整える。


《ディスクリート!》


キィン


と鈍い音と共に敵の剣は止まる。


今....!!


とタイミングを見計らい、ラーファルトは移動を開始する。


《ムーブドウインド!》


敵の真横を高速で抜け、物を壊すことなく、律儀に入口から抜けていく。



外を見て俺は唖然としていた。



そこには荒野が広がっていたのだ。


何もないような荒野。


人の生きることができる環境とは到底思えない荒野だ。



これが魔大陸か.....



が、呑気にそんなことを思っている暇はない。


敵はまだいるのだ。



敵の基本は剣士.....


なら、剣を潰すか.....



いや、敵は一応、俺を助けてくれた筈だ。


なら損害は出さないであげよう。



ただ、このくらいは許してくれよ.....


《ゴーレム!》


「敵を足止めしろ。」


そう命令し、ゴーレムに戦いを任せる。


《ディスクリート!》


俺へ飛んできた攻撃は全て防御.....


うーん、攻撃飛んでくるのも面倒だな.....


『トランスペアレントを使えば良いのでは?』


確かに.....!!


《トランスペアレント!》


「おい!消えたぞ!」

「どこに行った!!!」


という声を後方に聞きながら俺は村を離れた。





ーーー



歩いても、歩いても、無限に広がる。


その光景。


荒野。



その光景が懐かしかった。


空の色。土の色。そんなものは全く違った。


だが雰囲気がどことなくあの荒野に似ている気がした。


『ここは魔大陸北西部の地です。』


Sariがそう告げる。


それ、さっきも聞いたな。


知ってるよ。


ジェットがここまで逃がしてくれた。


ここはあの荒野じゃない.....




「うわあああああああああああああああああああああああああ........!!」


俺は泣き叫んだ。


思いを吐き出すように。


後悔を吐き出すように。



人目が消えた。


人目が消えると、何もかもが溢れ出す。


溢れ出てしまう。



体の中に残る後悔が一気に溢れ出る。



涙が、汗が、鼻水が.....後悔の結晶の様に流れ出てくる。



ただ、その後悔は一切消えない。



「後悔を糧に生にしがみつけ。その絶望に希望を見いだせ。」



ジェットの言葉が脳内に鮮明に蘇る。


きっと一生この声が脳から消えることはない。



後悔は消えない。



死にたい。


死なせてほしかった。


こんな後悔を感じたく無かった。




それでも.....それでも.....!!


生にしがみつけとジェットから言われた。


託された。


「うわああああああああああああああ......!!」


尚も泣き叫び続ける。



魔神聖.....ディオロの狙いは俺だった。なのにどうして.....


その思いが駆け巡る。



「はあ.....はあ.....」


泣き叫び疲れ、地面に涙を浮かべながら寝転がる。



「死ねないじゃないか......」



死にたいほど辛く、非情なこの世界を......


生きる事を託されたら.....


「死ねないじゃないか!!!!!」



大声で二度目を言った。




希望の見えない絶望の未来。


今、ラーファルトに見えているのは自由などではなくその景色だった。



「太陽が荒野の先に登り始める。」


光がラーファルトを照らす。



心は暗い影に覆われている様だ。


光がラーファルトを照らしても彼の表情は明るくならない。


いや、明るく見えない。


「行こう.....」


ラーファルト・エレニア。



彼は、重い足をあげ、歩みを止めまいと一歩を踏み出した。



【記録:人魔暦9年】

ラーファルト・エレニア。魔大陸へ転移。


【記録:人魔暦10年】

ラーファルト・エレニア。魔大陸をソロで旅する。


【記録:人魔暦12年】

ラーファルト・エレニア。そろでいる魔大陸一周の快挙を達成。


【記録:人魔暦14年】

ラーファルト・エレニア。鬼大陸にてソロでダンジョンを攻略の快挙を達成。


【記録:人魔暦15年】

ラーファルト・エレニア。姿をくらます。同時にミサール・ノイルが歴史に顔を出す。


【記録:人魔暦16年】

ミサール・ノイルが奴隷解放を始める。


【記録:人魔暦19年】.....




10年。



その月日を経て、ラーファルト・エレニアの物語が再び大きく動き始める。

これから二日に一回投稿と致します。

休むことも所々あると思いますがご了承ください!

14浪生転生記の9章以降もよろしくお願いします!!!

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