The other side:いつかまた会うその日まで
ラーファルト.....あなたはいつも私の先を行く.....
ーーー
「ラーファルト!」
ラーファルトが寝泊まりしていた部屋に私は突撃した。
会いに行く理由なんてない。
でも彼と私は一緒の時を歩みたい。
これからもずっと歩んでいきたい。
実力不足の私にとって、ラーファルトの隣で歩むかことは困難なのかもしれない。
それでも、私はラーファルトを好きで。
好きで、好きで堪らなくて。
だから、ラーファルトを救うために何でもしてあげたいと。
したいとずっと思っている。
「え.....」
なのに.....
なのに.....!!
ラーファルトは私を頼ってくれない。
どうして、どうして部屋にいないの!
昨日まではいたのに!
どうして.....どうして.....!!
私はあなたの隣にいたいのに.....!
「カール!ラーファルトは?」
「.....私は.....」
「答えなさい。今すぐに。」
ミルは廊下を探し回っているときに出会ったカールへそう尋ねる。
「.....」
それでもカールは苦渋の表情で話すのを躊躇っていた。
「.....カール、あなたの立場は.....??」
以前のカールの立場はルインド王国宮廷軍特別部隊隊長。
だが.....今は.....
「.....王女、ミル・ルインドの護衛、及び、側近担当であります。王の命令に背くこうと、あなた様の命令が優先されます.....」
「なら、分かるわね。答えなさい。命令よ。」
王の命令でも、王女は側近にのみ、その命令を上書きできる。
ルインド王国での独裁を防ぐための一環として作られている法律に定められている。
「ラーファルトは.....ここを発ちます.....ミル様一行による吉報を待っていたルイスらが捕えられた可能性があるからです。」
ルイス.....私たちを助けてくれた。
ラーファルトの命を救ってくれた相手だ。
ラーファルトが助けに行こうとするのも当然.....
ならなんで私に言わなかったの.....
どうして.....
どうして.....!!
分からない.....分からないよ.....!!
言って欲しい。
頼って欲しい。
ルイスが捕まるほどの敵だとしても.....
余程の敵だとしても、私は話して欲しい。
例え危険でも私はついていきたい。
「今.....ラーファルトはどこ?」
「ミル様!いけません!」
「答えなさい。どこ?これは命令よ!」
「.....くっ.....」
「分かった。もういいわ。」
ミルは走り出した。
「お、お待ちを.....!!」
カールはミルに対しそう声をかけるが、ミルは走った。
カールは止めるのを諦め、その場に立ち尽くしていた。
ーーー
ロードリング!ラーファルトは今どこに!
『検索不可能。プライバシーロックがかかっています。』
ラーファルトは本気だ。
本気で私と別れようとしている。
誰のためでもない。
私のためにだ。
どうして、そんな自分の気持ちを押し殺して.....
そんなにいつも自分が傷つくことを選択するの.....
どうして.....!!
私が.....
「ラーファルト!待って!」
王宮から出ようとするラーファルトを見つけるや否や、そう叫ぶ。
「.....」
ラーファルトは私の呼びかけに答えない。
「ラーファルト.....おい.....」
ラーファルトの側にいたジェットもそう声をかけた。
が、それでも彼は動かない。
ジェットが側にいるということは.....ラーファルトはジェットを付いて行くことだ.....
私は置いて行こうとしていたのに.....
私を大切に思ってくれているのは分かる。
私を守ろうとしてくれているのも分かる。
でも、それでも.....!!
「ラーファルト!私も連れて行って!」
言っても彼は聞いてくれない気がする。
いつもラーファルトは自分より周りを優先するから.....
私は弱い。
ラーファルトを守れない。
旅を通して強くなった。
だけど、足りない。
「.....調停の技」
ラーファルトが私の前から消えようとしている。
やめて.....
いなく、ならないで.....
「ラーファルト!待って!ラーファルト!」
技が止まる。
「ラーファルト.....私はそんなに.....弱いの。」
ラーファルトみたいに何かしようって。
守ろうって。
救おうって。
その気持ちは他でもないラーファルトから学んだ。
あなたがしてくれた分返したいと思った。
でもそれが出来ないほど私はまだ.....
「.....弱くないよ。」
「ならっ.....」
「でもミルではこの戦いに勝てない。」
「そんなのラーファルトも.....」
「.....」
ラーファルトも.....
勝てない。
その声を飲み込む。
彼が答えることは何もなかった。
何か答えて欲しい。
勝てるって言って欲しい。
帰ってくるって約束して欲しい。
でも、ラーファルトはそれをしないだろう。
きっと、それが私を悲しませるって思ってるから。
帰って来なかったら私が絶望の淵に立たされるって知ってしまってるから。
記憶を無くしたラーファルトを見て、私は泣いた。
絶望した。
この世界の色が無くなった気がした。
その時の私をラーファルトは知っている。
「調停の技.....」
彼は技を発動させようと再び試みる。
もう彼は止まってくれないだろう。
止まればまた私が傷つくと分かっているから。
好きだから。
私も好きだよ。
「ラーファルトぉぉぉ.....!!」
叫びながらラーファルトの方へ走る。
走る。
走って。
喰らいつくように。
貪欲に。
私が付いて行くかどうか.....
私と別れようが、離れようが。
もう、今ならどうだっていい。
せめて.....
せめて.....!!
「ラーファルト!必ずまた!戻って来て!」
《霹空》
そう私が言い終わる前にラーファルトの姿は消えていた。
「うわあああああん.....うわあああああ.....」
ラーファルトの消えたその場所で。
離れたその場所で私は一人で泣いた。
ーーー
「ぐすっ.....ぐすん.....」
「落ち着きましたか.....?」
「カール.....」
目元の腫れた私に彼は話しかけて来た。
「行ってしまったのですね。」
「ええ。」
沈黙が訪れる。
私はついていけなかった。
私が弱いから。
私が王女なのもあるだろう。
不自由だ。
でも、それでもこの地位は捨てられない。
置いて行かれた私の居場所は今、ここにしかない。
実力不足の私は行けば命を落としているかもしれない。
これはラーファルト貰った命なのかもしれない。
生きろというメッセージなのかもしれない。
ならば、今、私がすべきことは.....
「カール。私。強くなるわ。ラーファルトに連れて行ってもらえるぐらい。」
「.....そうですね。強くなりましょう。」
守る者は強い。
以前カールが教えてくれた言葉だ。
「守りたい。ラーファルトと私の時間を守りたい。だから強くなるの。」
「ええ、なら、私の師範を紹介しましょうか?」
「いいの?その人って確か.....」
「帝王級ガルス剣士リューザン。私が紹介すれば受け入れてくれるでしょう。」
帝王級.....
「お願いするわ。」
「命令ですか?」
「いえ、あなたの弟子としてのお願いよ。」
その私の発言にカールは少し驚いた表情をする。
「また、大人になりましたね。」
「え?何が.....??」
「いえ、では戻りましょうか。」
そう言ってカールは背を向ける。
ラーファルト。
私は強くなる。
あなたはいつも私の先を行ってしまう。
それでも私はあなたの背中を追い続ける。
頼ってもらえる人になる。
最後に.....
あなたなら生きて帰ってくれると信じてる。
だから.....
だから.....!!
いつかまた会うその日まで、お元気で。
次回から9章!
.....ですが!
今後も安定して更新を行って行くために一週間程更新をお休みさせていただきます。
学生の身のため、テスト期間などの更新を楽にするために、キリのいい今、更新を滞らせておこうという考えです。
決して更新をやめるなどではないのでご安心ください!
今後も14浪生転生記をよろしくお願いします!