第96話:拠点
「このレベルの魔物がどうしてここにいるんだ.....??」
「何はともあれそいつは俺たちの方へ真っすぐ進んで狙ってきているんだろう?」
「ええ。そうですね.....」
距離はまだそこまで近くない.....が、明らかに俺たちを認識し、近付いてきている。
「ならば倒すしかあるまい。こんな所で躓いていては生きて帰れないからな。」
「ええ、集中していきましょう。」
ーーー
「さあ、いくぞ.....」
いつになく、気合いの入ったジェットが剣を抜いた。
頼もしい。
そう感じながら俺も魔術を放つ準備をする。
「荒野独流!」
《魔終斬!》
斬撃を魔物に向かって放つと同時にジェットは走り出した。
ゴロロロロロロ.....!!
と唸り声をあげて、魔物も迎え撃つ体制だ。
斬撃によりれ多少の傷はあれど、致命傷には全く至っていない。
ここらの魔物にしてはなんか強いな.....
『魔大陸にいる魔物に匹敵する強さです。その特徴も魔大陸に似通っております。』
九尾の狼だな.....毛が立ち、怒っているのが分かる。
十分気をつけないと.....
「うおおおおお!!!」
だが、ジェットなら大丈夫だな.....
その背中が逞しい。
目の前を走り、危険を犯しても自分の責務を全うしようとする姿に思わず見惚れてしまうようだ。
といってもいつまでも感傷に浸ってなんかいられない。
《ロックショット!》
隙を見て魔術を敵に命中させる。
距離はそこまで近くない。
敵の動きが早いため、ある程度の距離を取らなければ魔術師の速度では反応できない可能性がある。
それでも、敵の注意は一瞬俺に映るのだ。
《デスマジックパワー!》
そして、その瞬間に魔力の攻撃を放つ。
見えない攻撃だ。
これもまた敵にダメージを与える。
見えない攻撃に敵はさらに俺を警戒するようになるだろう。
《ムーブドウインド!》
移動をしながら俺は次の一手を考える。
一つの箇所に留まっていては狙われてしまうからだ。
「荒野独流!」
《怒轟天!》
ジェットの攻撃に敵が吹っ飛ぶ。
《デストロイフレイム!》
俺はそこに向かって魔術を放った。
炎に焼かれ、敵は満身創痍といった様子だ。
それでもまだ生きており、俺たちを狙っている。
「荒野独流!」
止めを刺すためにジェットが動いた。
敵は動きの鈍い足を使って交わそうとする。
が、俺がそうはさせない。
《ロックショット!》
杖で放ったその一撃。
その風圧に、杖についたキーホルダー状の魔道具が揺れる。
魔力消費は二倍、ただし威力は三倍になる。
その一撃が敵の足を奪う。
初めのロックショットが高い威力でもここまでではない。
敵の動きを完全に奪う攻撃ではなかったのだ。
しかし、今は違う。
敵の足は動かすことが不可能なレベルまでの攻撃を受けたのだ。
《零雷一閃神聖斬!》
ジェットが無慈悲に技を放ち、敵は息絶えた。
ーーー
「中々強かったですね.....」
「ああ、負ける程ではないが、ここらではあまり見ない強敵だった。」
確か、魔大陸の魔物と特徴が似てるとか.....
『敵拠点出現、要警戒。』
敵拠点.....!!いきなり.....!!
《ディスクリート!》
Sariの報告を聞くなり、一瞬にしてバリアを展開する。
同時に拠点の方から飛んできた魔術がバリアに当たって弾かれた。
「一旦撤退しますよ!」
「.....ああ、分かった。」
不意をつかれたことに少々不満気であったジェットだが素直に従ってくれるようだ。
《ビルド!》
こちらも魔術を用いて、拠点を出現させる。
案外攻めにくい設計にさせていただいた。
日本の城と似た構図だろう。
14浪していただけあってある程度の知識は一通り蓄えられているからな.....
もうこの世界に来て8年以上が経過しているのもあって忘れていることもあるが.....
それは置いとくとして.....あとは.....
《ソイルハード!》
土を固めておく。
敵の攻撃をできるだけ防ぎたい。
防御を固めておくのに損はない。
「さて、どうしていきなり拠点が出現したかですね.....」
『魔物にトリガーがあったと推測されます。魔物が死ぬと思ったのと透明化が解除されるなどの呪いの一種の可能性があるということです。』
呪いか.....
確かにあの魔物は強かった。
それに匹敵する強さはあっただろう。
可能性が高いなと思い、俺はジェットに同じ内容を話す。
「それは面倒なことになるかもな。」
ジェットが俺の話の後にそう言った。
「敵が魔物を従えていた可能性がある。あの魔物は俺たちの方に真っ直ぐ向かってきていた。」
「つまり、完全に服従させられていると.....躾されていると言いたいんだな。」
『様々な可能性を考慮すべきだと考えられます。』
そうだよな。敵は十超神聖の一人である魔神聖なのだ。
油断は禁物.....
「では魔物が出てきた場合は、俺が対処します。雷砲で一撃で消しますので、注意をして下さい。」
「ああ、分かった。」
《トランスペアレント!》
透明化し、敵拠点へ歩き始めた。
必ず、ルイス達を助ける.....!!
その決意の下、敵拠点への潜入は始まった。
ーーー
我の集めた魔大陸の魔物の中でも低い実力だったとはいえ、あれを短い時間の間に倒すとは.....
侮れんな.....ラーファルト・エレニア.....
「お前を殺す.....ラーファルト・エレニア.....」
黒いマントをなびかせて、魔神聖.....ディオロは歩き始めた。
「すべては、あの声の主の為に.....」
そう呟くと、彼の口角があがり、ニヤッと笑っていたのだった。
エピソードとしては96話ですが、投稿話数はこれにて100話となりました。
エピソードとしての100話でもあっと驚くような話が展開を続けていけるように心掛けながら一話一話を執筆していきたいと考えていますのでよろしくお願いします!
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今後とも14浪生転生記をよろしくお願いします!