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第6話

第六話


ある日、デネブの城に風の使者が手紙を届けにやってきた。

その送り主は、風の国・国王 朝日洗蔵。

新大陸をみつけた『のびた』に並び、あらたな領土を求めるのに

二国の力を合わせようという内容だった。

「奪うよりも、見つけるか・・・。」

考えながら白い旋風は頷いた。



本大陸から新大陸に向かうメンバーがポトフとハイランドから選抜された

ポトフ代表 モト・グラム・ストーン

ハイランド代表 アルカード・風読み

モト達、三人は顔見知りの風読みに笑顔で会話がはずむ。

風読みは、そのたぐい稀なる才能でハイランドの将軍の一角になっていた。

そして、もう一人の人物は、ハイランド軍師・アルカード。

彼女はローブに身を包んでおり、それ以外 武器と名のつくものを持っていなかった。

「アルカート殿、我輩ストーンと申します。そして、こちらがグラム殿です。」

「うむ。よろしく。」

アルカートは双方にあいさつを済ますと船の先頭に向かった。

「なんか、堅い性格っぽいな。」

「そうですか?女性はあれくらいが丁度いいかと。」

頷きながら手を組むストーンを無視してグラムは船に酒樽をドンドン運んでいった。

海は、平穏でこれといった事も起きず、順調に新たな大陸へ進んでいく。

到着したときの作戦などを細かく話し合う、風読み・モト・アルカード

グラムとストーンは地平線を眺めながら、呆然としていた。

「ストーン。」

グラムは目を遠くにやったまま、話しかけてきた。

「俺たちは・・・無力だな。」

「・・・・はい。」

「このままの力でポトフを守れるだろうか?」

ストーンは、言葉を返すことができなくなってしまった。

前の戦いのときといい、国の一角の人物達は“精霊の力”を扱い

戦い自体が常人を遥かに上回っていた。

もう、人間の力だけでは勝てない領域に入っているのである。

(どうすれば)

ただ、その言葉だけが二人の頭を埋め尽くしていく。

そんなことを考えていたが、やがれ船は目的の大陸に上陸した。


装備を整えながらグラムは顔を叩いて気合をいれた。

ついた浜辺に人らしきものは、これといって見つからない。

「野営地がもっと先にある。そこに仲間もいるからまずはそこを目指す。」

アルカードは全員に指示を出すと先頭隊に出て、道案内をしていった。

野営地は、小さな村くらいの規模だったが寝食をするには最適な環境に整えられていた。

食料の確保もできており、

ずいぶん前から物資の補給などが盛んに行われているようだった。

「ここで暫く休んだら作業にかかるぞ。」

今回はかなりの大掛かりな都市の建設で

人数のほとんどがこのために用意された人員である。

つまり、グラムとストーンの役目は最低限の人数での護衛である。

しかも、人間ではない“トロール”と言うモンスター。

のびたの軍事力はこれを容易に防いだが他国は、そうはいかない。

協力なくしての都市建設は、はっきりいって不可能に近い。

たびたび20~30匹の数でくるトロールたちをグラムたちは防いでいたが

ある日・・・。

「なんだあれは?」

監視役の兵が近くの山を眺めていると砂煙がバタバタとあがる風景が目に映った。

山から下りてきたそれは少なくとも300以上の数だった。

その情報を聞いたアルカートはただちに人員を避難させた。

「おい、このままトロールにメチャクチャにされてまた1からやり直すのか?」

グラムはアルカートにむかって声を張り上げた。

「先ほどから何百回も言ったが、こちらは圧倒的に非戦闘員が多いいのだ。

 避難させるしかなかろう。ただで際、間に合わないのだから。」

「よーし、なら時間を稼いでやる。その間に全員を避難させろ。」

「ちょ、ちょっと待て!!」

アルカードが止めようとするがグラムとストーンの部隊はトロールの方へ向かっていった。



明らかな劣勢にたたされながらもグラムたちは踏ん張っていた。

グラムの鉄棍はトロールたちの口にぶち込まれ、脳を吹き飛ばしている。

矢継ぎ早に攻撃してくるトロールに怯むことなく蹴散らす姿に畏怖すら感じる。

地面ごと叩きつける大剣がさらにトロールたちを後退させるが

戦力差が持久戦になったため響いた。

「このままでは、野営地に侵入されてしまいますぞ!!」

二人の動きが一瞬だけ止まったときだった。

一斉にトロールが手持ちの斧を無数に投げつけてきたのだ。

足や腕に食い込んだ、斧の刃は二人の膝を簡単に地に押し付けた。

「こ、こんな雑魚ごときに・・・。」

二人がその場でしかトロールに対抗できない間に後ろへの進行を許してしまったのだ。

その直後、大地はものすごい地響きを立てて割れ、トロールたちを止めてしまい。

降り注ぐ矢はトロールたちを後退させてゆく。

「二人とも、無事か?」

その後にアルカードはグラムたちに駆け寄ってきた。

「今のは?」

「風読みとモト軍師とやらの精霊の力だな。」

「なんと・・・。」

二人は立てるような状態でないまま、無理やり立ち上がろうと各々の武器を

大地に突きたて、立ち上がろうとする。

「バカ!!出血がひどいんだ。もう休んでいろ。」

アルカートは二人に座るように命令するが尚も二人は立ち上がろうとする。

「前の戦で失態をさらしたんだ。もう二度も裏切るわけにはいかない!」

グラムは膝を揺らしながらなんとか立ち上がる。

「我輩はモト殿に忠誠を誓う一振りの剣となったのだ。ここで止まるなど・・・。」

前のめりに大剣に寄りかかりながらもストーンも立ち上がってみせた。

それを見ていたアルカードは少し微笑んで見せてみた。

「ポトフはいい駒をもっているな・・・いや、モト軍師がかな。」

そういうとアルカードは両手を合わせて、しばらくすると大地に両手をつけた。

「どけ・・・トロールども。」

アルカードの前に現れた小さな旋風は

やがて大きな竜巻となりトロールたちを飲み込んでいった。

「何をした?」

グラムは息を絶え絶えにアルカードに話しかける。

「これも精霊の力さ・・・みんなは避難しているから、味方に被害はない。」

「これも・・・精霊?」

グラムは八つ裂きになっていく大量のトロールを見たまま、意識を失ってしまった。



目を開けるとそこには眩しく月がギラギラと輝いていた。

「強くなりたい。」

グラムは聞こえてきた声の主に目を向ける。

「ストーンか・・・・そうだな。」

二人は体中、包帯だらけで夜風に当たっていた。

「そんなに強くなりたいか?」

二人は目をいっぱいに見開き、アルカードを見る。

「だが、お前たちには精霊の力を扱える器じゃないぞ?」

「ああ、もうそれは聞かされた。」

「人は人のまま強くなるには、多くの犠牲を払わなければならないと・・・。」

「ならば、その多くの犠牲とやらを払ってまで、守りたいものがあるのか?」

グラムは言った。

「己が信念を貫くための強さを。」

ストーンは言った。

「守るべき人を守れる強さを。」

アルカードは双方に言った。

「ならば、各自の武器を掲げるがよい。そして、私が言う忠告をよく聞け。」

双方の武器はアルカードが触ると少し青光りを見せると静かに元に戻った。

その日を境にグラムとストーンは強大な諸刃の剣を得たのであった。


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