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第4話

第四話


ポトフ復国と三代目・国王 白い旋風の就任式から三ヶ月。

都市が一つしかないポトフの守備陣は集中して他国からの侵略を阻止していた。

その指揮を主に任されていたのは、軍師・モト。

彼女の指揮により侵略は阻止されているものだった。

もちろん、彼女の指示により動く数々の精鋭のおかげでもある。

大将軍・ニセ禅師

将軍・N^3

衛兵長・沙羅

暗部長・ナチ

遊撃八驃騎軍の1番隊・2番隊隊長 グラム・ストーン

彼らの功績がなければ今のポトフはなかっただろう。

そして、新たな作戦『マーラル奪還』が始まる。



マーラル奪還

ポトフのもう一つの拠点・マーラル。

今、この都市は火の国・ローディスの支配下に置かれていた。

大国であるローディスの領土は広い。

そのため守備陣の人数をある程度、均等にしなければならなかった。

軍事会議により決定された命令は、『マーラル奪還』

兵達の士気は日に日に高まっていく。

無論、幹部達も・・・・一人を除いて

ニセ禅師は土竜を壁に掛け、ジッと見つめている。

(オグマ様・・・・私は、まだ土竜を使いこなせていません。どうしたら?)

彼は、今日も寝付けずにいた。

「・・・・・はぁ~。明日は、戦だというのに。」

外を見ると月は眩しいくらい輝いていた。

その幻想的な世界の下では、ナチが投げた石をストーンが打ち返しており

グラムはすごく酔っているらしくモトに酒を勧めつつ追い回し

N^3はナンパに失敗したのか隅っこで宝石を弾いている風景が展開されていた。

「大丈夫か?この国。」

彼は今になって心配になってきた。

そして、今日も寝つきが悪かった。


一夜明けたデネブから沢山の兵隊が出てくる。

霧に包まれた朝の空気は新鮮で清々しい・・・ニセ禅師は器用に馬上したまま眠る。

マーラルに着く頃には、全軍の士気は最高潮に達しようとしていた。

準備は着々と進められ、モトの合図とともに遊撃八驃騎軍が突入した。

ストーンとグラムの隊の奇襲により、相手の陣形はバラバラに乱されていく。

混戦になるとさらに周りから兵が取り囲んでいく。

兵の数はポトフのほうが上回っている。

ニセ禅師もモトも遠くからその風景を観察している。

「時間の問題ですね。」

「ああ、これならマーラルを奪還できる。」

二人が安心して話しているときだった。

突如、戦場の中心から高々と火柱が舞い上がる。

「な、なんだ!? あれは!?」

モトは、驚きながらも馬に跨りその場に向かう。

ニセ禅師は見覚えのある火柱に冷や汗が頬を伝っていく。

「このようなところに炎王直々にだと!?」

モトに遅れつつニセ禅師も急いで向かった。



敵味方関係なくその場にいた全員は動きが止まる。

無論、ストーン・グラムも・・・・。

「随分、粋のいいのがいるじゃないか。だが、これ以上は進ませんぞ。」

ニセ禅師と同じ型の紅い刀を持っている人物こそ、この火柱を起こした張本人。

「はい、そうですかって。言える状況じゃねぇぞ。」

「何者か知らぬが我輩等もここで止まるわけには、いかぬ。」

「ほう、今の炎では温いか。ならばこちらも少し本気でいくか。」

「ぬかせ!!!」

グラムが渾身の一撃をはなつと男は、いともたやすく刀でいなした。

構わず、グラムは次の攻撃を仕掛ける。

すると、男は地面に刀を突き刺した。

「もらった!!」

その言葉の後にグラムは高々と舞い上がる炎に数十mも後方に吹き飛ばされた。

「二番。ストーン!!」

不意打ち気味に振り下ろされた大剣を片手でもった刀で簡単に受け止める男。

ストーンは歯を食いしばると全身の力で男を後退させようとするがまったく動かない。

「こ、このような細身の体で・・・なんという怪力。」

「力だけじゃない。」

言葉の後にストーンは大剣に違和感を感じる。

と、いうよりものすごい熱さを感じる。

見ると、大剣に半分ほど刀が食い込んでいる。

「なんと!?」

刀と交えている部分が真っ赤になり、刀身が溶けているのだ。

男が斬り飛ばすと大剣は、上半分が飛んでいってしまった。

「これは・・・・一体?」

「我が名は、炎王・ルシード。楽しかったぞ、ストーンとやら。」

刀から放たれた炎はストーンを一瞬で包み、その場に昏倒させた。

「ストーン!?グラム!? 貴様ぁー!!!!」

飛び掛ろうとしたモトだったが、ニセ禅師が静止させる。

「軍師よ。周りの指揮をとれ。今や我が軍の指揮はバラバラだ。」

「しかし!!」

「こやつは、私が止める。」

有無を言わせぬニセ禅師の片目がモトを冷静にさせる。

モトは残存の兵を集め、隊列を整えていった。

「だれかと思えば、二代目ポトフ国王・ニセ禅師ではないか。」

「よもやこのようなところで貴様に会えるとはな・・・ルシード。」

「これもまた運命(さだめ)。」

「それも、よかろう。」

抜刀された刀同士が美しい金属音を奏でた。

「さすがオグマが認めた男。刀技については私と同等・・・もしくは。」

張り詰めた顔で追い詰めていくニセ禅師。

彼の刀はもはや常人には見ることもできぬ領域まで進んでいる。

「だが、お前は本当の地竜の力を引き出せていない。」

その言葉にニセ禅師の動きが止まる。

「我等が扱いし、火竜・土竜・水竜・風竜。これらの刀には精霊の力が宿っている。

 その力を使えば、一つの都市を破壊することなど造作もないことだろう。

 しかし、お前は未だに力を引き出すことができていない。

 どうしてだと思う?」

ルシードの言葉にニセ禅師は唾を飲む。

「お前は、そのような器ではなかったのだ。」

今の言葉は彼の心を十分に動揺させるものだった。

顔にこそ出さないが、ニセ禅師の動きが極端に悪くなるのが誰の目からもわかった。

その隙を見逃さなかったルシードの一太刀がニセ禅師の腹部を切りつけた。

片手を止血がわりに被せるが思いのほか出血が酷い。

それでもニセ禅師は片手以外は体勢を変えなかった。

「だからと言って、私は土竜を手放すわけにはいかんのだよ。

 偉大な王に託されたこの刀を。」

「見事!!だが容赦はせん。」

振り払った刀から勢いよく炎が出され、ニセ禅師の体を焦がしていく。

だがニセ禅師の膝はおれず、地につくことがない。

「このまま、チリと化すか?」

ニセ禅師が刀を大地に突き刺した瞬間、ルシードは異変にいち早く気づいて回避した。

「私は、死ねないのだよ。オグマ様に会うまでは。」

地面から突き出た石がルシードまで少しのところで止まった。

「これが限界か・・・さあ、我らが永き因縁に勝負をつけようではないか。」

刀が炎に包まれニセ禅師へ迫ってくる。

突如、ニセ禅師の前に壁が突き出し無数の石柱がルシードの左右に出現すると倒れてきた。

下がろうとするが後ろにも壁が用意されており、逃げ場所がなくなった。

「調子にのるなよ。」

刀を叩きつけると同時にすさまじい爆発が石柱・壁を粉砕した。

「ふざけた真似を。オグマ!!」

驚いたニセ禅師は残った眼で後ろを振り返る。

遥か遠くにいる人物・・・しかし、その瞳にはしっかりと見える。

「オ、オグマ様!!!」

「久しぶりだなニセ禅師・・・そして、ルシード。」

オグマは遥か遠くにいたはずなのに、すでにニセ禅師の近くまで来ていた。

その異様な雰囲気に味方であるはずのニセ禅師に鳥肌を立たせる程である。

「さて、続きといこうか。ルシード。」

オグマは剣を抜き、ルシードに向けて構えられ、ニセ禅師の刀もルシードに向けられた。

「王クラスを二人も相手するほどバカじゃないんでね。」

刀を納めたと同時にルシードの立ち位置だけが大きな影で覆われた。

上を見上げた二人の目に飛び込んできたのは、まぎれもなくドラゴン。

舞い降りてきたドラゴンに飛び乗ると瞬く間にその場からドラゴンは空に行ってしまった。

「ドラゴン使いのしゅうか。ルシードめ、遊びにきただけだな。」

少し悔しそうに手を叩くオグマはドラゴンが見えなくなるまで視線を外さなかった。

「いいのですか?マーラルは。」

「何、ポトフ復国の祝いだ。全軍撤退させたのだからほぼ被害もないさ。」

ルシードの答えにあきれたしゅうは、それ以上の質問をあきらめた。


「それで、オグマ様。一体今までどこへ?」

オグマを前にポトフの幹部一同が揃う。

「ワシの後継者を探しにいっていた。」

一同、驚きの表情で後ろから入ってきた男に目を向ける。

「名をツヴァイ。歳は幼いが、これがなかなかの才の持ち主。」

「っと申しますと、この男・・・・。」

ニセ禅師が聞き返すとオグマは待ってましたと言わんばかりに口を開く。

「精霊の力を扱える器だ。」

再び一同は、驚きに包まれた。


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