第3話
第三話
飛来してきたドラゴンの鳴声が白い旋風とストーンの横隔膜に響き渡る。
腰をドッシリと構えていても、吹き飛ばされそうな勢いだ。
ストーンは、しっかりと大剣に手をかけ、握りこんでいる。
「おい、ストーン。まさか、こんな伝説上の生き物と殺る気か?」
二人ともドラゴンから目を離さずに言葉を交わしていく。
「ははは・・・・。白い旋風殿も人が悪い。
これから我輩が言うことがわかっておられるのに。」
「そうか・・・。だが、少しこいつの相手をしてもらわないと。」
ストーンは、あきらめたように視線を送る。
「もって、5秒・・・・それ以上は。」
「十分だ。恩にきる。」
ストーンが叫ぶと同時に白い旋風は宝刀に向かって走っていく。
ストーンは大剣を目一杯振りかぶると、岩をドラゴン目掛けてきり飛ばした。
ドラゴンは翼で難なく受けきると、勢いよく広げストーンを吹っ飛ばす。
(ち、力の差は歴然。白い旋風殿~(涙) 早くしてくだされー。)
白い旋風は、その風でちょうどこけたところだった。
倒れているストーンの目の前に来たドラゴンは、踏み潰すため片足を大きく上げる。
聞き覚えのある風きり音がしたかと思うとドラゴンの頭部にショテルが当たる。
「ストーン!!! 逃げるぞ。」
待ってました。っと言わんばかりにストーンは涙目でドラゴンの横を走り抜ける。
「ショテルも効果がありませんな!!」
「はなから効くとはおもわんよ。気休め程度だ。」
宝刀を左手に持って狭い洞窟に再び飛び込む。
「これなら、少しくらいは時間が・・・。」
「いや、無駄だ。」
振り返らず白い旋風は走っていくのを見ると、ストーンは振り返る。
頑丈な岩の壁をチーズのように牙と爪で削り飛ばしてくるドラゴン。
その勢いは衰えることはない。
「ず、ずるい!!」
「こんなヤツが存在しているのだ。理不尽なことなどいくらでもおきる。」
二人は、転がるように洞窟を抜けて外に出た。
その後ろから豪快に洞窟をぶち壊して登場したドラゴンは土に似た色の鱗をしている。
「これは、腹をくくるしかありませんな!!」
「もう逃げても、追いつかれるな。」
しかし、急にドラゴンは大人しくなって後ずさりを始める。
疑問に思った二人は、後ろの人物に目を向ける。
「やれやれ、遅いかと思ったらこんなものが住み着いていたとは。」
「「ニセ禅師(殿)!!」」
顔の半分くらいが包帯で隠れているが間違いなく、その人物はそこに立っていた。
「まあ、言いたいことは色々あるだろうが土竜を・・・白い旋風。」
投げ渡された刀を手にするとニセ禅師はゆっくりとドラゴンの前に歩を進めていく。
すると二人の目の前では、目を疑る光景が再び展開される。
「ドラゴンが・・・後ろに?」
「後退している!!?」
ニセ禅師の残った左目が瞬きをせずドラゴンを見つめる。
後退していたドラゴンは低く喉を鳴らしていたが、突然踏みとどまり口を大きく広げ、襲い掛かる。
カチッ。と音がするとドラゴンの右腕が地面に落とされた。
叫び、苦しむドラゴンは転げるように暴れる。
「お前のおかげで土竜が盗られなかったこともある。命まではとらん。」
ドラゴンは歯ぎしりをしながらニセ禅師を睨む。
常人なら間違いなく恐怖に包まれ、動くことすらできないだろう。
ストーンと白い旋風は、先ほどから動くことができない。
ニセ禅師は息をおもいっきり吸い込むと刀を抜き・・・
「退け!!」
刀の剣先を向け、全身の闘気をドラゴンにぶつける。
瞬く間にドラゴンは空に逃げていった。
ストーンはそのやり取りの終幕にペタリと腰を落とす。
「伝説の生き物を伝説の騎士が・・・。」
「さすが地竜王。」
ストーンは、不思議な顔で白い旋風に顔を向ける。
「ニセ禅師の所以だ。デネブに現れたドラゴンを倒したというな。
あの刀は、そのドラゴンの牙と爪で作られたんだ。
しかし、どうしてニセ禅師が?」
「これから、フェイに向かうのだよ。」
白い旋風は、わかったように口元を緩めるがストーンは再び不思議な顔をする。
「しかし、みなの姿が・・・。」
「モト達には、デネブに残ってもらった。準備をしてもらうために・・・。
そういえば風読みと言うヤツから『さらば』と言う伝言を預かったぞ。」
「風読み殿から!? そうですか・・・。しかし、なぜフェイに?」
「なに、金剛将軍を向かえにな。」
二日を費やし、着いた街「フェイ」
この街の主導権争いは、ほかの街とは比較にならないほどの激しさがある。
原因は、ここで見つけられる大量のクリスタル。
資金源を確保したいなら間違いなく大国は、ここを狙うのだ。
ちなみに今はのびた国の街となっている。
「ずいぶん広~い街ですな。サープといい勝負ですぞ。」
「ここで取れるクリスタルは、かなりの高値で市場に出回っているからな。」
一際大きい宝石店の前に三人は立っている。
「え?ここにですか? 将軍なのでしょう?」
「そうなのだが、商売もする男で名をN^3。
またの名を金剛将軍、フェイを中心とした地域の防衛を任せていた。
ポトフの国費、約3分の1が彼による財力で賄われていた。」
「なんと!?」
「しかも、N^3が扱う武器が・・・また・・・。」
白い旋風が少し困った顔をするとニセ禅師も苦笑いになる。
「まあ、いけばわかる。」
三人が店に入ると、目の前にはいかにも高価なクリスタルが飾られており
周りにも色とりどりのクリスタルがズラリと並べられている。
「おお!陛下!!陛下ではありませんか。」
静かな店内に声が響く。
なにやら光り輝くオーラに包まれた人物・・・というより、光っている。
三人は目を擦りながらN^3を見直す。
「服にクリスタルを散りばめてみたのですよ。」
白い歯を輝かせて、爽やかに笑ってみせるN^3。
三人の顔が引きつる。
「そんなことよりポトフの復国だ。デネブに帰るぞ。」
「待ちに待った時がきたのですか。」
準備を済ませたN^3と共に三人はフェイを後にした。
荒野を馬で駆けながらニセ禅師の隣にいるN^3。
彼の剣を携えるところにある袋が気になるストーンは白い旋風に聞くが
何度、白い旋風に聞いても「おもしろいから。」っという返答しかこない。
一人の疑問を残しながら、四人はポトフを目指した。
~デネブ~
「ど~れ、派手に暴れるぞ。全員準備はいいか?」
ニセ禅師がモト達に声をかける。
「数は500だ。外と中から同時にしかけるぞ。」
「驚くだろうな。この守備の数では。」
白い旋風のあとにグラムがおもしろそうに喋りだす。
「モトさん、いよいよですね。」
「ええ、この日を待っていました。ポトフの復活を。」
沙羅とモトは、握りこむ武器に力が入る。
「よし、いくぞ!!!」
ニセ禅師の合図とともにデネブ侵略が始まった。
この日を境に再びポトフが復国を果した。
その情報は、ポトフを支配都市としていた『のびた』にすぐに渡った。
それを聞いた 闇の女王・こすずめは不敵な笑いを響かせる。
「随分と利子つきで復活したものだな。」
「早急に・・・。」
「いや、そのまま泳がせておけ。」
「よろしいのですか?」
「ああ、ちょうど退屈していたからな。」
再び、こすずめの笑い声が部屋に響いた。