第2話
第二話
ラーミディの宿屋から四つの人影が滑り出す。
一人は、身の程の鈍く光る鉄棍を掲げ
一人は、身の程を越える分厚い「剣」らしきものを背負い
一人は、大きな弓を手に持ち、矢の束を担ぐ
最後の一人は一つの鞘に納まった二本の刀を・・・双剣を腰に携えていた。
~デネブの街・途中~
四人は道の真ん中で頭を寄せ合っていた。
原因は、先刻モトが出した提案である。
『せっかく、四人もいるのだから二手に別れて仲間を探しましょう。』
この意見に他の三人も納得して返事をしたのだが
どのようにして分けるかで問題になっている。
「しょうがない、くじできめよう。」
痺れを切らしたグラムが二つ赤い印をつけた四本の木の棒を差し出した。
「うむ。公平ですな。」
「運に任せて・・・。」
「え~っと。」
それぞれが適当に棒を掴み、取る。
すると、次のようなコンビが結成された。
ストーン&グラムの「パワータッグ」に対し
モト&風読みの「スピードタッグ」が結成された。
グラムとストーンは、どこかテンションが低い・・・というか、落ち込んでいる。
「モトを頼むぞ。」
グラムは風読みの肩を叩く。
「頼みましたぞ!!風読み殿。」
なぜか、目に涙を浮かべ風読みの両腕を掴むストーン。
「い、痛い。ストーン、強く握りすぎです。(汗)」
マジでやったのか冗談でやったのか、不明である。
かくして、四人は二手に分かれマーラルでおちあうことを決めて出発した。
~ストーン&グラムのお話~
「デネブはモトのほうに任せて、どこへいく?」
グラムは、ストーンに道を任せる。
「昔、風の噂で聞いた伝説の騎士とやらを会いに、・・・。」
「それは、どこだ?」
ストーンは立ち止まり空を見上げながら口を開く。
「たしか・・・ネス。」
「・・・のびたの本拠地か。」
~モト&風読みのお話~
「デネブ・・・昔、ここに今の四国にはない五国目の国が存在したとか。」
「ええ。大地の国・ポトフ・・・隣国を怯えさすほどの実力で一時期は統一を果たすも
疫病で国の兵士たちや国民が死んだため著しく戦力が
衰退し、ついに自然消滅をしたという。」
「そんなことが・・・。」
風読みは今のデネブの街を見渡しながらモトのあとをついていく。
そして、瓦礫が多々ある広い場所で二人は立ち止まった。
「そして、ここがそのポトフという国の城があった場所です。」
「ここが・・・。モトさん、あなたは一体?」
「私は、ポトフの元騎士です。」
不意に背後で物音が聞こえ、モトの背中へつぶてが飛んできた。
抜刀したモトの柳葉刀は石を真っ二つして、はじき返すが
相手は手にした得物で突きを放ち二つとも粉々にした。
「失礼だが先ほどの話を聞いていた。私もポトフの元騎士でね。」
「デネブには、何人か残っているでしょうね。」
「私の名前は沙羅。祖父がポトフの衛兵長をやっていた。」
「私はモト。ポトフ復国をめざすため仲間を・・・。」
「言葉は無粋、力で納得させよ。」
沙羅はピュっとレイピアの剣先をモトに向ける。
モトも左の刀を向けた。
沙羅のレイピアの剣先はとてつもなく細く、糸のような細さだった。
常人が扱えば一撃で折れてしまうに違いない代物。
沙羅はそれをいとも簡単に扱って、石を粉々にしたのだ。
間違いなく強者である。
「では・・・参る。」
沙羅の手元がキラリと光るとともにモトの髪の毛が何本か散っていく。
細く細く鍛えられた先は、信じられない程しなりながら刀と刀の間をすり抜けた。
沙羅のレイピアは確かにすごいが、それを扱う沙羅の身体能力は群を抜くものがあった。
関節の柔らかさに加え、手首の強さがこの技を生み出す。
ハンドスピードは、モトの一枚も二枚も上を行っていた。
さらに直線的攻撃が主体のレイピアが最短距離をまっすぐと進んでくるのだから
一振りする間に何発の突きが放たれるか。
「スピードでは、私が勝っているようだ。」
沙羅は構えなおすとレイピアを左右に振り始める。
「じゃあ、いいや。」
ボソっとしゃべると右の刀を納め、沙羅に突っ込んでいく。
「死ぬ気か!?」
少し動揺しながらも沙羅の放つ光速のレイピアはスピードを緩めない。
そのまま、モトの体の一部へレイピアが突き刺さる。
前腕に突き刺さったレイピアは抜くことができない。
モトの腕はメキメキと音を立てながら筋肉でレイピアを締め上げる。
激痛に顔を顰めることなく、まっすぐに沙羅の目を見つめる。
そして到頭、沙羅の心は折れた。
「参りました。モトさん。」
モトは力を抜くとスッとレイピアを抜いてもらう。
「しかし、無茶をなさる。」
「どうせ避けきれないのなら、と覚悟を決めたのです。」
沙羅は、気の抜けた顔をしたかと思うと大きな声で笑い始めた。
「たいしたお方だ!!」
二人とも笑い出し、地面に座ったところで風読みが近づいてきた。
「ハラハラするなぁ~。モトさん腕出して。」
「ごめん。風読みさん。」
城があった瓦礫の上で三人は笑い合った。
~グラ&ストの話(略)~
「着くまで二日もかかるとは。」
「それもそうですが、この状況はなぜです?」
今、二人はネスの門の前で止められている。
理由は、いうまでもなく二人の容姿である。
「怪しいヤツ等め!大方、盗賊かなにかだろう?」
「たしかにグラム殿は、そのようなことを昔しておりましたが今は改心されて・・・。」
「ちょっと待て、ストーン(汗)。」
「やはりそうか!!」
たちどころに警備兵、三十人が二人を囲んでしまった。
「おとなしくするならばそれなりの処罰で許すが、抵抗するなら容赦はせんぞ。」
「抵抗はしません。」
「本気でいっているのか?」
ストーンは、笑いながら剣を地面に突き立てる。
「ここは、従うのだ。グラム殿。」
疑問に思いながらもグラムも、鉄棍を地面に置いた。
~牢獄~
「くっそ~。酒はないのか?酒は?」
「落ち着くのだ。グラム殿。」
夕陽が落ち、暗くなるころに牢獄では食事の時間になっていた。
当然、酒などないがそれ相当の食事にはありつける。
「なんで、おとなしく捕まったんだ?」
ストーンは得意気に口元を緩め、口を開く。
「噂はここからですぞ。」
「っと、言うと・・・そいつは囚人か?」
「なんでも、前にあったポトフという国の幹部の一人だそうで相当な強さで隣国までその名を轟かせていたそうです。間違いなく次期・国王に選ばれる人材とか・・・。」
「それが、伝説の騎士の所以か。」
頷くとストーンは鉄格子を掴み、無理やりこじ開けていく。
「そして、その騎士はのびた国の最深部・地下牢に今も閉じ込められているという。」
二人は両側の鉄格子を一気に引き抜き、牢を出た。
「じゃあ、中から助け出すためにワザと捕まったってわけか。」
「しかも、嘘をつかず・・・ッブ!!」
ストーンの笑いながら話す横顔をおもいっきり殴るグラムは、ちょっとキレかけていた。
「とりあえず!!自分の得物がないと話にならんぞ。」
「あれだけの大きさ・・・手短なところにあるはずですぞ。」
地下牢の入り口の廊下で兵士達の話し声が聞こえたため
二人はつきあたりで身を潜め聞き耳を立てる。
「おい。昼間の盗賊二人の所持してた武器・・・あんなの振れるのか?」
「大の男が5人がかりでやっと運んだ代物だからな
しかも二人もそんなヤツがいるなんて・・・よく抵抗しなかったな。」
「ただの力馬鹿だったんじゃないか?」
「そうに違いない。ギャハハハ。」
兵士達は、腹を抱えて大笑いするがその二秒後、二度と笑えない状況にされた。
「我が愛剣・ジョナサンをどこにやった?」
「オレの鉄棍・ロゼッタもどこだ?」
二人とも言っていることが芸人がかっている。
「そ、そこに。」
すぐ近くにあるのに二人は、気づいていなかった。
二人とも自分の得物に手をかけると頑丈な地下牢の扉をぶち壊して降りていく。
最深部にいくまでの各牢屋からは、人間のものとは思えない声が響き渡っている。
「気味が悪いな~。」
「拷問部屋が近いですな。」
グラムは少し扉を覗き込んでいると目の前に囚人がぶつかってきて腰を抜かす。
びっくりしているグラムを見ながらストーンは、笑いながら先を進む。
やがて、二人は最深部・地下牢の扉の前へ着いた。
「随分、厚みのある扉だな。」
「あながち噂も嘘では、なさそうですな。」
そうとは言いながら鉄棍の一撃は扉を軽々と壊してしまった。
二人に鍵は不要である。
中に入るとしばらく放置されていたのか、かび臭い匂いが鼻をつく。
牢の外にあった松明を掲げ、部屋を照らすが人の姿など見つからない。
「ストーン、ここには誰もいないんじゃないか?」
「う、ん~~。」
ストーンが困っているとどこからか音が聞こえる。
二人は、さらに奥を照らす。
するとダラリと顔を前に倒して、両手・両足を鎖でしばられ
ぶら下がっている人間がいた。
生死を確かめるべくストーンは近づき、服をつついてみる。
「も、もしもし・・・。」
「なんだ?食事の時間か?」
今までぐったりしていた男は顔を上げる。
長髪でよく見えなかったが、その顔の片目は切り抜かれていた。
「いえ、その~食事ではなくて、伝説の騎士といわれる方を探しているのですが。」
「知らんな。」
「ポトフという国をご存知でしょうか?」
「なんだ?ポトフは消滅したのでは、ないのか?」
「ポトフを知っているあなたは?」
「いかにもポトフの騎士だが・・・いや、元・騎士というべきか。」
「なら、間違いはないだろう。」
グラムは言うと鉄棍で鎖を砕き、ストーンが男の体を下ろす。
「どうする気だ?」
「あるお方にあっていただきたい。」
男は少し笑うと口を開く。
「そのためにここまで降りてきて、一人の男を助けに来たのか。
たいした男達だ。我が名はニセ禅師。」
牢屋の外が騒がしい。
「やれやれ、もう来たのか。」
「ニセ禅師殿、話はここを切り抜けてゆっくりと。」
グラムは鉄棍にニセ禅師を座らして背負う。
「では、参りますぞ!!」
狭い階段を上りながら斬り進むのは相当な体力を消耗する。
いきを切らしながらストーンは進んでいく。
さすがに城の全兵を相手にすることはきつい。
城の下水道にいくまでが勝負である。
「まだ、衛兵しか動いていない。チャンスだ、代われストーン。」
大剣を引きずりながらニセ禅師を担ぐ。
グラムは竜巻の如く道をつくっていく。
兵は一気に減ったが二人の体力は、ほぼカラに近かった。
息を切らしながら狭い下水道の鉄格子を壊し、のびたの城を後にした。
「今回は運がよかったですな。」
「もう、懲り懲りだ。」
「ところで何処に行くのだ?」
疑問に思っているニセ禅師に二人は同時に答える。
「「マーラル。」」
~モト&沙羅+風読みの話~
マーラルを目指す三人の足取りは早い。
理由はモトの傷の回復に三日を費やしたこと。
デネブからマーラルまでは後少しである。
しかし、一つ変わったことがある。
モトの腰に携えてあった鞘は、一本から二本になっている。
「モトさん、なかなか絵になりますね。」
「そうですか?」
モトは、嬉しそうに風読みに言葉を返す。
「沙羅さん、ありがとう。」
沙羅は帽子を少し深くかぶりながら会釈する
双剣・剣刺・・・・山形の刃をもっており、突きを使用することを主にしがちだが
引くことによる攻撃で相手の得物を削り斬ることもできる。
三人は遠くにある橋に目を向けると誰かが大勢に囲まれている。
「なにか危険なにおいがするんですけど。」
「どうします?」
沙羅は帽子を触りながらモトを見る。
すでにモトは橋のほうへ向かって走っていた。
モトは遠巻きに橋の様子を見る。
ようするに大勢のほうが『盗賊』で、一人が槍を持った傭兵に見えた。
普通の状況なら、瞬く間に一人の男が身包み剥がされていただろう。
だが、その予想は逆になった。
盗賊どもの頭はきれいに突き飛ばされ、頭部の無くなった体だけが道に転がる。
その戦闘を間近で見ていたモトは唾を飲む。
今まで逢ってきた戦士達よりも遥かに強い人物。
まさしく、最強と言う使い古された二語そのもの。
「貴様、なにを見ている。」
後ろを振り返った男はモトを睨む。
獣のような鋭い眼光がモトを捕らえ、畏怖させる。
「わ、私は・・・ただ・・・。」
なかなか口から言葉がでず、虚しく時間が過ぎていく。
「だから、なんだ?」
男はズカズカとモトに近づいていく。
モトは自然に足が後ろに下がってしまって、体が泳いでしまった。
男がもう一歩、足を前に出した瞬間、矢が地面に突き刺さる。
男がモトの後ろを見ると風読みが弓を再び構えている。
「なかなかやるな。矢が見えなかったぞ。」
不敵に笑う男は風読みに視点を変える。
「なにが見えなかったですか。しっかり、よけてるじゃないですか。」
男は風読みに向かって突進してくる。
「自信なくすなぁ~。キャッチフレーズが泣くよ。」
風読みはため息をついて弓を下げる。
槍を回しながら風読みの首めがけて刃が襲う。
なにか不思議な効果音が聞こえた瞬間、男の槍は穴だらけになる。
「これ以上の戦闘を望むなら、私がお相手しますが?」
小刻みに震えているレイピアはキラリと光り輝く。
沙羅は帽子を触りながらレイピアを向ける。
穴だらけになった槍はもう使い物にならず、男は槍を投げ捨てる。
「先に仕掛けてきたのは、そっちだろ?」
二人は疑問に思いながら顔を見合わせる。
「だって、さっきモトさんを・・・。」
「あいつに話しかけただけだろうが。」
「「・・・・・。」」
耐え難い沈黙が流れ、三人はモトに視線を向ける。
モトはただ首を縦に大きく振る。
その反応を見た沙羅は帽子を深くかぶり、風読みは頭を叩く。
「いや~ 申し訳ない。」
手をこねながら風読みは男に近づいていく。
「槍は、近くの街にて準備するので許していただきたい。」
沙羅は帽子を取り、頭を下げる。
「俺もやる気だったから、構わん。」
近くの街を目指しながら四人は歩き始める。
モトは先ほどから話にくそうだ。
「ところで、あなたの名は?」
風読みが男に話しかける。
「俺の名は紅月。傭兵をやりながら修行をしている。」
紅月はモトに視線を向ける。
「っで。お前はなにがいいたかったんだ?」
「な、なんでもありません。」
モトは焦りながら視線を逸らす。
紅月はその反応に笑いながら先頭を進んでいく。
「どうしたのです?モトさん。」
「私 あの人、苦手です。」
沙羅は苦笑しながら紅月の背中を見つめた。
やがて四人はマーラルへと着いた。
「じゃあ、俺はここまでだ。縁があればまた会おう。」
風読みとモトは、立ち去ろうとする紅月に頭を下げる。
「私は鍛冶屋まで紅月さんのお供をして参ります。」
沙羅は、そういうと紅月と共に街の中へ消えていった。
「じゃあ、僕らはグラムとストーンを探しますか。」
モトは頷くと風読みと街の中を歩いていく。
「かぁ~!!薬代もバカにならねぇなぁ~。」
一際大きな声が、それでいて聞いたことがある声が二人の耳に入ってくる。
「グラム。もう、来てたんですね。」
「お~ モトか。風読みはしっかり護衛をしたみたいだな。」
大声で笑うと風読みの肩を軽く叩くグラム。
「あれ?ストーンは?」
「あいつは、ちと野暮用でな。」
グラムが説明しようとしたところで聞き覚えのない声が横から聞こえる。
「彼には私の私物を取りにいってもらったよ。」
「この方はニセ禅師さんだ。」
グラムが名を言う前にモトは片膝をつき頭を下げる。
「陛下。よくご無事で。」
キョトンっと、グラムと風読みは立ち尽くす。
「誰かは知らんがよしてくれ。ポトフは無くなったのだから。」
「失礼しました。わたくしは陛下が上位についたときに一兵卒でしたモトと申します。」
「ニセ禅師さん。この人があんたにあって欲しかった人だ。」
「ほう。これは、なんと勇敢な女戦士だ。」
モトはさらに頭を下げる。
「しかし、グラム一体どこで陛下を?」
「な~に のびたで大暴れしただけさ。」
唖然としているモトをよそに風読みはクスクスと口に手をあて笑う。
「それでストーンは?」
「この先のアクアに向かった。そこでモトたちと合流してからいくつもりだ。」
「なにかと物騒な世の中だからな、これからやることに自分の得物くらい必要だろう。」
~ストーンの話~
「はて・・・ここらでいいのか?」
一人、森の中で迷子になったことも気づかず呟くストーン。
この森に入るまで何度、近隣の村の人に止められたことか。
この場所をたしかめるのに聞くたび。
『あそこは行かないほうがいい。』
『物の怪にやられるぞ。』
『白い怪物が住んでいる。』
と、物騒なことばかりを耳にするのだ。
「まあ、ニセ禅師殿の言うことだから、只事ではないことは察しがつくが。」
そんなことを言っている間に運よく洞窟の前に着く。
喜んでいると背中からこれまでに感じたことのない威圧感を受ける。
振り向くと白い馬にのった白く美しい髪が印象的な人物が佇んでいた。
まるで何かの物語に出てきたような人物にストーンの目には映った。
「この場を去るなら、危害は加えないがその洞窟に入るのならやめたほうがいい。」
「ほう、なぜです?」
白一色で飾られた人物のマントの隙間から湾曲した刃が現れる。
しかもそれは馬の側面に何本も装備されている。
視線を外した瞬間、妙な風きり音をたてながらショテルが飛んできた。
驚いたストーンはしゃがんでよけるが再び、二本のショテルが左右から飛んでくが
豪快な風きり音が鳴るとともに二本のショテルは弾き飛ばされた。
「こちらもただでは、やられるわけにはいきませんな。」
無言のまま、男は二刀のショテルを構え、ストーンに襲い掛かる。
大剣を高々と掲げ、馬ごと斬るつもりで振り下ろすが馬の速度が一瞬にして変わる。
(こ、この馬。速い!!)
男の実力もさる事ながら、馬も普通ではなかった。
目をやるといつの間にか馬上に男はおらず
見失っていたら、間合いにはとっくに侵入されており二刀の刃が振り下ろされた。
間に合わなかったため、ストーンは柄の部分で刃を受け止め、押し合いになる。
力でこそ自信のあるストーンだったが、不思議なことにだんだんと気圧される。
このままでは、力負けしてしまうため大剣の腹ごとショルダータックルをして
男を仰け反らした。
「そのような体から我輩の力を押さえつけるパワーがあるとは・・・ニセ禅師殿もやっかいな用事をたのんでくださる。」
「なんだと?」
突然、男はショテルを下げ、ストーンに問いかける。
「今、ニセ禅師といったのか?」
「いかにも。ここにあるものを取りに来るようニセ禅師殿に頼まれたのだ。」
「それを先に言えばいいものを。」
すると、男は武器を納め、ストーンに近づいてきた。
「私の名は、白い旋風。ニセ禅師の宝刀を預かり、守りし者だ。
しかし、ニセ禅師は・・・・。」
「つい先日、我輩とグラム殿がのびたの城から助けだしたのだ。
今は、我輩の仲間と合流しているころだと思います。」
「そうだったのか・・・いきなり、すまなかった。」
「いえいえ。それで、その宝刀とやらは・・・この洞窟に?」
「ああ、変な噂のおかげで近づくものが減っていたのだが
なにか財宝があると盗賊などが聞きつけ盗みに来ていたのだが、どうもおかしいのだ。」
ストーンは急に黙った白い旋風を疑問に見る。
「私はしばらく来ていなかったのだが、どうも何者かが洞窟に入るものを・・・。
それで、場所を移そうと思って今日来て見れば、この有様。」
二人は洞窟を少し見ると、その中に入っていった。
~洞窟・内部~
「やはり人が入った形跡がありますな。」
ストーンは地面を松明で照らしながら、無数の足跡を見る。
「気をつけろ、ストーン。この洞窟の岩で傷を負えば、死んでしまうぞ。」
白い旋風は、慣れた足取りで道を進んでいく。
しばらくすると明るくとてつもなく広い場所に出てきた。
その真ん中にはニセ禅師の宝刀が・・・。
「ありえない。私が以前来たとき、このような場所はなかった!」
辺りは何か強力な何かで、無理やり形を変えられていたのが誰の目からでも明らかだった。
天井があった場所は大きな穴が開いており、太陽が見える。
その太陽から一つの黒い点が、どんどん大きくなって近づいてくる。
「なにやら、とんでもないものがここに住みついていたようですな。」
ストーンは大剣に手をかけ、白い旋風に語りかける。
「本当にこんなモノが存在していたのか?」
二人は飛来して来たモノに目を疑う。
「伝説上の生き物だと信じていた・・・この世にいるなんて。」
二人は同時に口を開いた。
「「ドラゴン。」」