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第12話

戦場から戦場へ

休息も無く平和を求めるわけでもなく恨みで動くわけでもなく

ただただ、強さのみを求めて今日も男は戦場を駆ける。

振りかざす槍で何百の命をかりとりながら・・・戦場へ。

その行為はやがて強者に出会う。

そして、紅月は出会った。

とてつもなく大きな力をもつ、雷将・レーネに。

世界で唯一、雷の精霊をもつゼノビア国所属の女性で長くからゼノビア王家に仕える名家の一人娘だった。

その比類なき強さは現国王であるR2をも凌ぐと周りに言わしめた程である。

すべてを兼ね揃えているその人物と出会ったのはやはり戦場だった。

ゼノビア軍に雇われた傭兵として参加した戦場でレーネの戦いを見た紅月は目を奪われる。

そして、彼は笑った。

超えるべきハードルを見つけたとき彼は子供のように無邪気に笑った。

自軍からの攻撃。

否、強者を求めた男からの挑戦にレーネも笑った。

対峙した瞬間に男が越えてきた死線の数、殺してきた人間の数が同輩にも先達にも並ぶものがいないことを悟った。

“殺せ、殺せ!!”

内側からの殺意が自分を塗りつぶしていくのがわかる。

そして、飛び掛ると同時に意識は途切れた。



「気がついたか?」

知らない声が聞こえる。

瞳を開けば白い天井が。

「ここは?」

「私の家だ。しかし、君の行動には驚いたよ。」

「何?」

自分が寝ているベットの隣に座っている女性に目を向ける。

「私に飛び掛ってきたんだぞ。」

笑いながら話すことではないはずなのに彼女は笑っている。

そんなレーネを紅月は可憐に思った。

しばしの沈黙の後、紅月は我に変える。

「お、お前があの時の?」

姿が華奢に見えたが女だとは思ってなかった紅月は困惑する。

「そうだが・・・。私を男だとおもったのか?」

返答に困る紅月に再び、彼女は笑いだす。

「なにも知らないで私に飛び掛ったのか。本当におもしろいやつだな。」

しばし笑い続けた後、レーネは紅月に近づいた。

「私についてこい。君となら楽しそうだ。」

さらなる高みへの一歩。

「お前を殺そうとしたヤツなのにか?」

「だからこそさ。なんならいつでもかかってくればいい・・・どうだ?」

もはや答えるまでもなかった。

「とりあえず、私とともに行動をするにはそれなりのことをしなければならないな~。」

「それなりのこと?」

ニタニタと笑いながらレーネは何かを思いつく。

「紅月、君は頭脳明晰か?」

紅月は頭を横に振る。

「なら、鉄があれば剣や盾を作れるか?」

再び横へ振る。

「ほかには料理がうまいとか商売上手とか・・・。」

「さっきから何が言いたいんだ?」

「つまり、君の特技らしい特技は戦いだよな?」

「・・・まあ、そういうことになるな。」

「よし。面倒は抜きにして手っ取り早くいこう。」

そういって彼女は部屋を出て行った。



「その手っ取り早いやり方ってやつがこれか・・・。」

二日後、闘技場に呼ばれた紅月の前には現国王・R2とレーネ、そしてもう一人。

「貴様が紅月か。」

レーネの隣にいるR2が口を開くと空間が歪んで見え、思わず足が後退してしまうほどの存在感に手に汗を握る。

「レーネのいる部隊は俺の直属部隊だ。弱いヤツはいらん。強さをみせろ。」

ストレートな物言いにポカーンとしている紅月を尻目にR2は観客席に歩いていった。

「君、殺されるなよ~。」

笑顔でいいながらR2の後をレーネはついて行く。

視野がレーネにいった時だった。

バサっと地面に何かが落ちる音がした。

目の前にいたローブを被っていた人物がいない。

否、地面をすれすれで駆け出し紅月の間合いに侵入している。

細身の剣を心臓目掛けて突きだされ浮き足立つところだが、紅月は違った。

いとも容易く槍で叩き折ったのだ。

R2のとなりでレーネはガッツポーズをきめる。

間髪いれず、横から振り出した槍が空を切った。

「武器がなくなったぜ。」

台詞をきめたと同時に相手の顔を見て、紅月はギョとする。

「どうした?女が珍しいか?」

距離をとっている女は両手をダラリと完全に脱力した状態で紅月を見ている。

紅月は少し鼻を啜ると槍を掲げたままゆっくりと歩み寄る。

「ほぉ~。真珠に能力を使わせるか。」

「私だって使わされましたからね。」

R2は意外という顔でレーネをみる。

「あいつは?」

真顔のR2を尻目にレーネは急に笑い始めた。

「素人・・・・っというか、精霊の力の存在すら知りません。」

「じゃあ、なぜあんな量のオーラがでてるんだ?」

対峙している真珠の目の前の男からはR2と同等、もしくはそれ以上の精霊の力が溢れ出ている。

(どういう男だ???)

表情を崩すことはないが莫大なエネルギーを前に真珠の四肢先端に力が入る。

「今まで指導者に出会わなかったことは紅月にとって幸運だったかも知れませんね。」

レーネは紅月から目を離すことはない。

その蒼い瞳はまっすぐと紅月を見ている。

そして、客席から身を乗り出し・・・。

「いけー!!!」

笑いながら発せられた言葉と同時に紅月は地を勢いよく蹴った。

大きく振りかぶったその一撃は闘技場全体を揺らし、地面を粉々にして宙に舞い上げた。

「げ、国費が・・・。」

ちなみにゼノビアは財政難の真っ只中。

視界が閉ざされた真珠の真後ろを取った紅月は槍を投げつけるが不思議なことが起こった。

真珠はまるでそこに槍がくることがわかっていたかのようにわざとゆっくり横をあるいて避けた。

しかも目をつぶったまま。

再び、駆け出した紅月は左拳を下腹部に標準をあわせて放った。

にゅっと伸びた足が紅月の上腕を押さえつけてそれ以上の動作を許さない。

右手で払いのけると下段の回し蹴りを・・・・。

しかし、先ほどと同じく伸びた足が紅月の大腿を押さえつける。

その足に目が言った瞬間、頬に冷たい手が触れた。

油断・・・否、そんなものではない。

パンッとないはずの水の塊が勢いよく爆ぜた。

反射で閉じられた瞳はコンマ1秒、光を失い暗闇の世界へ。

その暗闇に入った瞬間に後頭部へ振動が・・・。

そして衝撃は連動して上肢を下がらせ、膝を揺らした。


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