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第10話

第十話

デネブにいるポトフ国王こと白い旋風。

復国したばかりのこの国には問題が数多い。

今日も彼の机には書類が山積みであり、彼はそれに目を配っているところだ。

「心配か?」

不意をつく一言に片目をつり上げた。

「心配?それはありません。」

「なぜだ?」

「理由はないですけど・・・ただ。」

問いかけたニセ禅師が今度は片目をつり上げる。

「やられるために復国したわけじゃないですから。」

口に手を当てながらニセ禅師は笑いが止まらない。

「まったくだな。」

窓から二人は戦の方向に目を向けた。

すると城にいながら地響きが。

窓を見ると彗星の如き光が戦場に向かって飛んでいった。

「あれは・・・なんだ?」

そこへ沙羅が血相を変えてやってきた。

「こ、国王!!国宝が飛んでいきました!!」

国宝とは文字どうりそれぞれの国にある宝であり象徴である。

何百年も前に国ができた同時に神より授かったのが国宝と呼ばれており

どの国も城の最下層に封印してあるものだったのだ。

それが今しがた封印を自ら破り飛んでいったと言うのだ。

「何百年も封印されていた代物が一体何を?」

夜空に描かれた光の線が朧になっていった。


「大きな獣に変わった人間?そんなことができるのはこすずめ直属の直轄部隊、闇獣の称号をもらった一人だろう。」

モトの説明を聞いてN^3は答える。

「闇獣?」

「なんでも特殊な精霊を使うやつらで、強さもこすずめが認めたほどの者たちのことをのびたではそう呼んでるのだ。しかし、人が化け物に変われるとは・・・末恐ろしい。」

「私を含め、グラムとストーン三人でもまったくかないませんでした。」

「そりゃそうさ。なんせその闇獣たちは一国の王レベルの力を持つものたち。ニセ禅師と戦うといっても過言じゃないよ。」

激闘の場へ馬をすすめるモトは二人の安否に不安で頭がどうにかなりそうだった。

近づくたびに空から降ってくる岩や木が増えてくる。

「こ、こりゃすごい。呪物の力で得たにはあまりにも強力だ。」

馬から飛び降りたN^3は落ちてくるものを避けながらその場に近づいていく。

「ストーン、グラム!!」

モトも転がり落ちるようにその場にいき叫んだ。

目の前には人間の動きを超越した三者の戦いが繰り広がれていた。


黒い影がすれ違うたびに火花が散り、鮮血が飛び交う。

モトの真上を飛んでいったのはグラム。

明後日の方向に折れ曲がった左腕を構う事無く立ち上がりモトを掠めるように走り抜ける。

「将軍!!」

困った顔でN^3は答える。

「私の能力は対無属性者用だから有属性者であるあちらさんには効果はないんだ。」

「ならばグラムとストーンを。」

「可能だが・・・今、ヤツと互角に戦えるのはあの二人だけだぞ。君と私では手に余る相手だ。」

「いいえ。私一人で。」

「んなぁ無茶な・・・。」

N^3は横を見ると彼女の目は本気になっている。

「それでいいんだな?」

「お願いします。」

蛇剣を抜刀して気合をいれるモト。

刃のない剣の柄を向けると血だらけのストーンとグラムがクリスタルに包まれ動きが止まった。

疑問を感じながら、らあくは視線をN^3に向ける。

「くだらんことを。」

怒りで力任せにN^3に向かい走っていくらあくの道を大地が裂けて阻んだ。

視線を向けるが一本の蛇剣が刺さっている場所にモトはいない。

「どこにいようが構わん・・・焼き尽くしてやる。」

黒い炎がらあくの全身を包み、周りに勢いよく炎を飛ばす。

クリスタルで固めたストーン・グラム像の後ろへN^3は転げよる。

「めちゃくちゃすぎる!!なんとかせんとこっちが死んでしまう。」

柄に持っていた小さなクリスタルを差し込むと自身の精霊の力を練りこむ。

グラムたちの像の前に聳え立った大きなクリスタルの壁はらあくの炎を完全に防ぎ

その間にロープで二体の像を結びN^3は馬のところまで引っ張っていく。

炎を放つのをやめてみれば、その場にあった木や岩などの地以外ものはなくなり

らあくを中心に新地ができたようになっている。

黒い瞳がギョロリと辺りを見渡す。

そのとき、右手から滲み出る自分の血に気づき飛び引いた。

地中から這い出てきたモトは血の付いた剣刺を再び大地に突き刺し

残った剣刺・蛇剣を抜刀してらあくへ構える。

下手に持った双方を矢継ぎ早に大地に突き刺しまくると、地から突起物が突き出しながららあくにせまるが

退く様子もなく正面からぶち壊しながら突き進んでくる。

蛇剣をらあくに向け投げ飛ばすがヒョウとよけられてしまい地に刺さる。

柳葉刀を抜刀し構えるがらあくに突き飛ばされ、高々と体が宙に舞い上がる。

地面に落ちると喀血して呼吸がしにくくなり足がおぼつかないが目だけはらあくをしっかりと視野にいれている。

「勝てないことは前の戦いでわかっているだろう。さっさと街を捨てて逃げないのか?」

深く息を吸い込むと口の中の血を吐き出して迫るモトは問いには答えない。

炎を吐き出せばモトを包みこむが剣刺の水の属性が所持者に火に対し抵抗力を与えている。

しかし、皮膚や髪の毛が焦げていきマントに火がうつり

再び弾き飛ばされ地面に叩きつけられるが剣刺をその場に突き立てた。

「なら、早く殺せよ。イヌ。」

顔にこそ出していないが体全体を取り巻く黒い炎が勢いを増したのは言うまでもない。

一瞬にしてモトの右・前腕、上腕を一噛みにした。

噛み付かれたままで引きずられているモトは残った三肢でらあくにしがみついている。

そして、大きく息を吸い込んでから口の中にたまっている血を目に向けて吐きかけた。

視界が真っ赤なカーテンに遮られたらあくは速度を少し落としてしまう。

そこでらあくの前足に片足を突っ込むと踏み砕いたと同時にその場に転んでしまう。

涙で血を洗い出しているらあくの耳元にまだ暖かい血を流すモトがそっと呟いた。

「腕でも足でもなんでもくれてやるよ・・・・・そのかわり・・・・・。」

ゴクリと唾を飲む音が大きくなる。

「お前の“命”をくれ。」

地面にそっと左手をつけると各場所に取り囲むように突き刺した剣が光り始める。

「何をした?」

「大地の蛇剣と水の剣刺との精霊の力で地中深くに一緒に沈んで窒息死。」

「それは残念だ。」

意味深な言葉を残したまま二人は地に吸い込まれていくように沈んでいった。


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