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指名していいよな?  作者: ブルーローズ
第三章 恋の始まり
7/12

別れと始まり

桜子は治療が終わったあと、トイレに行った。

トイレの中でメッセージアプリを見ると、メッセージが来ていた。


『わかった。いいよ、別れても』

『グイグイ迫ってごめんな』


やっと彼氏と別れられた。

これで自由の身だ。

こいつは何かとイチャイチャしたがる、肉食系だった。

付き合い始めはまさかそんな男とは思わなかった。

グイグイ来られて、デートのたびに少しずつ好感度が下がっていき、デートに行くのが嫌になってしまった。

で、こういう結末になったわけだ。


桜子は深く息を吐き、頬を緩ませた。


「なんか嬉しそうだな」


溝田が階段を上がってきた。


「あー……彼氏とやっと別れられて。肉食系だったんで、ちょっと……」

「そうか」


溝田は小さく息を吐く。


「そんな小葉(こば)を困らせるようなヤツ、別れて正解だ。俺ならそんな顔させない」

「え?」

「お互いの気持ちに大きなズレがあるようじゃ長続きはしない。お互いがちゃんと想い合ってないとダメだ」


桜子は小さくうなずいた。


「困らせたり、泣かせたりさせるヤツは彼氏失格だ。恋人の段階から幸せにするつもりでいなければな」


溝田の表情が柔らかくなる。


(すごい大人な人なんだなぁ。10も歳が違うだけでこんなに考え方違うんだ)


桜子の鼓動は早鐘を打つ。


(こういう考えを持つ人と付き合ったり、結婚できる人は幸せだろうなぁ)


小葉(こば)、お前に伝えときたいことがある」

「伝えたいこと……?」

「あぁ。俺はーー」

「溝田先生ー!患者さん来ましたよー!」


ふたりはピクッと体を震わせた。


「今行く」

「あのーー」

「また今度な」


溝田は階段を駆け下りた。

桜子は不思議そうに首を傾げたーー


***


昼休みに入り、メッセージアプリを開く。


『ちょっと気になる人できたかも』


少しして高校の友達から返事が帰ってきた。


『ウソ!良かったじゃん!どんな人?』

『う〜ん……無愛想で、口数少なくて、なんか恐い感じ』

『え?』

『でも……さりげない優しさがあるというか。なんか、たまに優しくしてくれる』


桜子は少しニヤけた。


『この前、生理痛で動けなくなったとき、介抱?してくれたの。お茶入れてくれて、家まで送ってくれた』

『えー!ヤバ!脈アリじゃん!』

『どうかなぁ?見てられなかったのかも』

『いいや!それは脈アリだね』


(溝田先生がわたしを?いやいやいや、ないない!こんなダメ助手なんかを。何でもこなせちゃう美人さんが似合うよ)


『別の日には「彼氏と別れて正解だ」って言ってくれた。あんな人だったからさ』

『きゃー!キュンだ!!もっとエピくださいっ!』

『ちょ、興奮しすぎ!やめてよ〜』

『わたしキュンが足りないのよ。もっと桜のキュンエピ聞きたい〜』


桜子は画面をじーっと見た。


『「お前細いんだからもっと食え」って塩漬けしたナッツくれた、とか?』

『うんうん。ちょいキュンだね。確かに桜はもう少し太っても大丈夫よ』


(溝田先生が彼氏になったら……って、何考えてんの!ないってば!わたしなんかがおこがましい!というかそういう目で見てないでしょ!……だよね……?)


確かに最近、優しくなった気がする。

働き始めの頃のような冷たさは和らいだし、恐怖心は前よりない。

まだたまに恐いけど。


(最近ドキドキするけど……これが恋なのか、わたしの免疫がないからなのか……)


『アプローチするとかして、様子見てみたら?』

『……はい』


なんだかドキドキしてきた。

体も熱くなってくる。


(うわぁ、どうしよう!)


桜子は深く息を吐いた。

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