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指名していいよな?  作者: ブルーローズ
第二章 さりげない優しさ
6/12

意識


2日後ーー


桜子は溜め息をつきながら、医院に入った。


(一昨日なかなか寝れなかった。昨日も寝付き悪かったし……。誰かさんのせいだ!)


「おはよ〜」

「おはようございます」

「おはよう」


桜子は階段を上がった。


「おはよう」

「おはようございまーー」


声がした方を見ると、溝田が立っていた。

バチッと目が合い、慌てて桜子は目を逸らした。


「?」


溝田は不思議そうな顔をした。

桜子は階段を上がろうとしたとたん、足を踏み外した。


「!」


溝田は慌てて手をつかみ、引っ張る。

引っ張られた衝撃で、顔が彼の胸板に当たった。


(ぎゃ!また顔が胸板に……!)


離れようとすると、背中に手を回されていて、身動きが取れない。


小葉(こば)って普段からそんなに危なっかしいのか?」

「えっ、あっ、まぁ、ドジではあるかも」

「気をつけろ」


そっと彼女の体を離すと、階段から遠ざけた。


「階段、本当に気をつけろよ」


溝田はスタッフルームに入っていく。


(うわぁ、もうムリじゃん!意識するなってムリがある!)


溝田は顔を手で仰いだ。


***


「ライト微妙に当たってない」


桜子はライトの位置を直す。


(仕事中は変わらず恐い〜)


「バキュームは?」

「あっ、はい!」


(うぅ……。もう少し優しく言ってくれてもいいじゃん)


桜子は冷たい溝田をちらっと見て、頬を膨らませた。


小葉(こば)はコツをつかめばできる人だと思ってて』


(あの言葉はなんだったの?)


桜子は必死にアシストをした。


***


溝田は壁にもたれて桜子を見た。

桜子は溜まった洗い物をしていた。


「……」


丁寧に器具を洗っていて感心する。

なぜなら他のスタッフが洗うと、汚れが残っていたりするときがあるからだ。

桜子は時間に余裕があるときは、器具に付いたサビを落とそうとしている。

綺麗な器具でドクターに仕事してもらいたい、という気持ちが伝わってくる。


(器具が綺麗になってると、気持ちいいんだよな。それを小葉(こば)はわかってくれてる。逆に汚いとイラッとする)


桜子は洗い物を済ませると、小さくうなずいた。

彼女は器具を洗うのが好きなようだ。

アシストしているときと表情が違う。

溝田は溜め息をついた。


(俺があんな顔させてんだよな。もっと優しく言わないと、本当に恐がられてアシストも付いてくれなくなる)


また溜め息をつき、視線を落とした。

仕事のことになると、ついあんな態度を取ってしまう。

彼女には嫌われたくないくせに。

そんな自分が嫌になる。


「……先生……溝田先生」


いきなり視界に桜子の顔が映った。

驚きで意識が戻ってくる。


「何?」

「時間なので、患者様をご案内します」

「あぁ……うん」


桜子はカルテを持って待合室のドアを開けた。


(びっくりした……。っていうか……可愛かったな。のぞき込んできたの)


彼女は背が低いので、こちらを見る姿は可愛らしい。

1週間くらいだろうか。

この数日は特に彼女を意識してしまい、平静を装っている。


「先生、お願いします!」


桜子が案内した席に歩み寄る。


「変わったご様子はないそうです」

「ん」


溝田はカルテを見る。


「あっ、小葉(こば)、そのままアシストついて」

「えっ、あっ、はい」


彼女の体がこわばったのがわかった。


「虫歯ちょっと治すだけだから」

「はい……」


桜子は唾を飲み込んだ。

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