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指名していいよな?  作者: ブルーローズ
第一章 嫌いなんだから
2/12

心配


数日後ーー


桜子は大きな溜め息をついた。

今日もライトが上手く当てられなかった。

他のスタッフには「さっさと動いて!」と怒られてしまった。


(わたし、歯科助手向いてんのかな……)


涙がこぼれてきた。


「どうしたの?」


ベテラン衛生士が声をかけてきた。


「わたし、役たたずだなって……」

「そう思うなら頑張ればいいじゃない。職場で泣いちゃダメ」

「……グスッ……」


溝田は桜子を見た。


「役たたずって言われないように頑張ればいい話でしょ?職場では泣かない。わかった?」

「……はい……」

「……」


溝田は視線を落とし、そっとその場を去った。


***


(短大では3年勤めなさいって言われたし、頑張るしかないか)


桜子はタイムカードを打刻し、昼休みに入る。

お弁当を持ち、スタッフルームに入った。


「……」


溝田はチラッと彼女を見る。


「……小葉(こば)さん」

「はい……」

「ん」


溝田はナッツを差し出す。


「……ありがとうございます」


ナッツを口に入れると、目を丸くした。

溝田がもうひとつナッツを差し出したのだ。


「え……?」

「ちょっと、陽ちゃん、何強制してんの」


ベテランの助手が溝田の左肩を叩く。


「いや、美味いからおすそ分けしてるんすよ」

「嫌だったら全然断っていいからね」

「あっ、いえ、大丈夫です。いただきます」


桜子はもうひとつナッツを食べる。


「ありがとうございます」


桜子は会釈すると、座敷の隅に座りお弁当を食べ始めた。


***


午後の診療が始まり、少しして溝田は壁にもたれた。

視線の先には一生懸命奮闘する桜子がいる。


「……」


しばらくして治療が終わったのか、桜子がアシストから解放された。


「関水さん、小葉(こば)さん大丈夫?」

「セメント何とか練れてました。たぶん大丈夫」

「ふぅん」


桜子を気にかけている衛生士、関水はニヤけた。


「そんなに気になります?」

「……別に」

「ふ〜ん」

「大丈夫かなって」


溝田は桜子を目で追いかける。


「心配なんですね」

「……別に」


溝田は階段を上がった。


***


桜子は治療の準備をして、チラッとチェアーに座る溝田を見た。


「……器具合ってますか……?」

「……ん」


少しして桜子は治療をのぞくと、目を丸くした。

トレーの上に抜いた歯が置かれていた。


(えっ、もう抜いたの!?10分しかたってないよ!?)


「すご……」

「ガーゼは15分噛んどいてください」


溝田はカルテに書き込む。


「終わって」

「あっ、はい」


桜子はエプロンを外した。


「お疲れ様でした」


溝田は去っていく。


「溝田先生、抜歯の腕すごいのよ。秒で抜いちゃう」

「すごいですね」

「うん。患者さん全員に挨拶してるし、患者さんのことここのドクターで1番考えてるし、いいドクターだと思うよ」


(そんな一面あるんだ。でも、無愛想なんだよなぁ。)


桜子は小さく溜め息をついた。


***


『ねぇ、今度いつ会える?』

『シフト教えて』

『会いたい』


桜子は小さく溜め息をついて、メッセージアプリを閉じた。


(面倒くさい……)


もう一度メッセージアプリを開いた。


『しばらく予定わかんない』


少ししてメッセージが来た。


『なんで?』


(あぁ、面倒くさい……!)


桜子は大きな溜め息をついた。


『なんで予定わかんないの?』

『今のスケジュール教えて』


桜子は既読を付けて、メッセージアプリを閉じた。

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