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指名していいよな?  作者: ブルーローズ
第四章 近づく距離
11/12

困惑

昼休みー


桜子はスタッフルームに入る。


小葉(こば)


溝田は小さいタッパーを差し出す。


「食え」

「あっ、ありがとうございます。じゃあ1個」


桜子はタッパーの中のナッツを1個食べる。


「まーた陽ちゃん餌付けしてる」

「餌付けじゃないっすよ」

「すみません。わたしなんかに気遣っていただいて」


溝田は桜子を見つめる。


(今なんかって言ったな、自分のこと)


「?」

「何でもない」


桜子は不思議そうな顔でうなずいた。

座敷の隅っこに座り、お弁当を開ける。

溝田は小さく息を吐きながらそれを見た。


「......」


溝田は喫煙室に入った。



『あんま自分のこと「なんか」って言うな』


溝田からメッセージが来ていた。


『自信持てって言わなかったか?』

『つい癖で』

『大丈夫だから自信持て』

『はい』


桜子は小さく息を吐く。


なんだろう、なんか、溝田先生とメッセージしてると、癒されるというかなんというか、心が軽くなるような……


しかし、スタッフと医師の恋愛は禁止。

もし、バレれば何かしらの処分が下される。


溝田先生に迷惑かけるわけにはいかない!

だから、本気で好きになっちゃいけないよね


桜子は小さくうなずいた。



「お先に失礼します」


6時になり、桜子は他のスタッフに声をかけると、階段を上がる。


「終わったー」


タイムカードを打刻すると、伸びをする。


「桜」


スタッフルームから溝田がちょうど出てきた。


「お疲れ」

「お疲れ様です」

「気をつけて帰れよ」

「はい」


桜子は小さくうなずく。


「送ってやれなくてごめん」

「いえいえ!すぐ近くなので、大丈夫です」

「……」


溝田は桜子を見つめる。

彼女は不思議そうに首を傾げた。


「何でもない」


(かわいい)


溝田は桜子から視線を逸らした。


「溝田先生失礼します」


桜子は背中を向ける。


「陽一」


桜子は驚いた顔で振り向いた。


「名前、陽一なんだけど」


桜子はまばたきしたあと、目を泳がせた。


(ん?これはそう呼べってこと?)


「あー、はい、えっと……失礼しまーす」


桜子は困惑した様子で階段を下りた。


(なんか俺おかしかったか?)


溝田は首を傾げた。



翌日ー


桜子は溜め息をつきながら階段を上がった。


(そういえばお試しで付き合ってるんだっけ。だから名前呼びしてほしいのかな?)


ガチャ


「桜」


溝田の声が聞こえて、慌てて辺りを見回す。

彼以外誰もいない。


「おはよう」

「お、おはようございます。……よ、陽一、さん」


チラッと彼を見ると、嬉しそうに目を細めていた。

心臓がうるさい。


「あの、ちょっと、ハードルが……ごめんなさい!」

「え」

「他の人に聞かれたらマズイですし」


階段を上がる音が聞こえてくる。


「そういうことなので」


桜子はロッカールームに入った。


溝田は首を傾げた。


ハードル……?

名前呼びが……?

普通だろ、お試しだけど付き合ってるんだし

苗字だと雰囲気がないし


溝田は小さく溜め息をついた。

どこか距離が縮まらない感じがしてもやもやする。

スタッフルームに入ると、喫煙室に入った。

イスに座り、タバコをくわえた。


カチン


溝田は灰色の息を深く吐いたーー


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