表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
指名していいよな?  作者: ブルーローズ
第四章 近づく距離
10/12

フォロー

桜子は患者を席に案内した。


「あのさ、いて」

「え?」

「アシスト」


桜子はまばたきした。


「桜がいい」


ドキン


桜子は恥ずかしそうに目を泳がせた。


「おはようございます。溝田です。よろしくお願いします」


桜子は慌ててアシストにつく。


(今、名前で呼んだ!?)


溝田は席を倒した。

桜子は戸惑いながらバキュームを持つ。


(あ、あれ?手が震えてる……?)


桜子はバキュームを持つ手を見た。


「……バキューム、ここでいい」


溝田は彼女の手を握って、バキュームを患者の口に入れた。


「大丈夫か」

「アシストって緊張しちゃって」

「緊張することはない。最近の桜は上手くやってる方」


(やっぱり名前呼び!?こんな状況でアシストとかムリ!)


桜子は深呼吸した。



桜子はアシストから解放されると、深く息を吐いた。


「最近、溝田先生に気に入られてるのね」


先輩衛生士が近づいてきた。


「えっと、気に入られてるかどうかはわからないですが……」

「溝田先生のアシストばかりじゃない。他のドクターのアシストもつきなさいよ」


桜子はうつむいた。


(うぅ……そう言われても……)


「好きなドクターのアシストばかりつくな」

「ご、ごめんなさ……」

「お言葉を返すようですが」


桜子の後ろから溝田が歩いてきた。


「あんたも同じドクターにばっかついてるようにお見受けしますけど。しかもそのドクターの指示には早く反応し、他のドクターの指示の反応は遅い」


衛生士はくちびるを噛んだ。


「あんたの方が好きなドクターにくっついてるように見えるけど」

「……すみません」


桜子は溝田を見た。


「あの……」

「それに小葉(こば)に教えてるんです。アシストを」

「溝田先生……。すみません、下手くそで」

「そうじゃない。上達するようにって思ってな」


(それって下手って言ってるのと同じじゃ……)


桜子はうつむく。


「ドクターである俺が教えた方が上達が早くなる。ここのスタッフは教え方が雑だ。治療の流れもアシストしてればわかるとか、バキュームも端っこにいとけばいいとか……」


(溝田先生がこんなにしゃべってるの初めて聞いたかも)


「わかりました。気をつけます」


先輩衛生士はさっさと離れていった。


「あの、ありがとうございました」

「思ってることを言っただけだ。本当に教え方が雑で困る」


溝田は目を細めた。


「桜は俺が守る」


溝田は桜子にしか聞こえないように小声で言った。

桜子は目を見開く。

涙が溢れてこぼれた。


「泣くな。泣かしたみたいになるから」

「ごめ……だって……」

「あと、もっと自信を持ってやってみたらどうだ。間違ってるときは教えるから」


桜子はうなずいた。

溝田はあきれ笑いしながら涙を拭ってやる。


「あの……」

「何だ」

「いや、えっと……」


あれ?

胸騒ぎがする

大丈夫かな……?


心臓が大きく動いている。

頭に響きそうなほど。


これは忠告かも

これ以上好きになってはいけないって


前に聞いたことがある。

「Dr.に手を出して消えた助手が何人もいる」と。


「大丈夫ですから」


桜子はそっと溝田の手を振り払い、その場を離れていく。


「……?」


溝田は首を傾げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ