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異世界帰りの俺が魔王軍を殲滅するまで  作者: 霞犬
序章 地球に帰って
4/21

4,消えた人々




…人が少ない。否、少なすぎると言った方が適切か。目的の山へ走りながら辺りを見渡す。



(…なるほど)



私はすれ違う一般人を観察し、ある1つの仮説を立てる。



(多分これは…この地域全体に何かしらの異能が使われているな)



この周辺ですれ違う一般人にはある共通点がある。それは「異能を持っている」こと。私にそれが分かるのももちろん異能のおかげだ。


私…A級ハンター、勇崎(ゆうざき) (はやて)の異能の1つ。


『魔力感知』のおかげである。


基本人間は生きている限り魔力を保有している。だがその中でも異能を扱う者は、そうでない者と比べて保有する魔力量が多い傾向にある。先程から確認できる一般人は皆、異能を扱えるだろうと推測できる魔力量であった。だがそれだけわかってもどうしようもない。



(速度を上げよう)



『身体強化』の出力を上げる。



(何か…嫌な予感がする)



ーーー少しして山の麓に到着した。



辺りを確認するも怪しいものは見つからない。マップピンの位置をもう一度確認すると、山の頂上に位置が更新されていた。この現象を引き起こしているやつは頂上にいる。何が目的でこんなことをしているのか見当もつかないが…



犠牲者が出ていないことを祈ろう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「うわああああん!!!もう終わりなんです!!ここで私も死んじゃうんです!!!!」


「…」


「うっ…ひっく、うぅ…、皆…」


「…なあ」


「うぅ…っえ?あ、あぁあああぁぁあ!や、やめて!あなた、私を殺しに来たんでしょう!?」


「いや、ちが…」


「ひぃいいぃ!ち、近づかないで!それ以上近づいたら…た、ただじゃおかないわよ!」


「…」



山に向かっている途中に泣き声…いや、叫び声が聞こえたのでそこへ行くと、座り込んで泣きわめいている女の子がいた。


年齢は17くらいで華奢な体型。長めの黒髪を後ろで束ねている、オドオドした様子のタレ眉の女の子だ。学校の制服らしきものを着ている。



「俺は何もしないよ」


「そっ、そうやって騙すつもりでしょう!私は騙されませんから!」


「…」



そう言って彼女は身震いをして、じっと俺のことを睨みつける。今この周辺で起きている異常事態において、彼女の身にも何かが起こったのだろう。



「…なあ、何があったのか教えてくれないか?その怯え方は少し異常だ」


「…っ」



俺がそう問いかけると彼女の顔は一気に青ざめた。今にも失神してしまいそうな勢いである。



「あ、あなたはハンターですか?」


「いや、違う」


「…なら、話すことは…ありません。今すぐどこかに行ってください」


「…」


「…ハンターじゃない人に話しても、意味ないですから…、っ!?」



突如として耳を塞ぐ彼女。



「…どうした?」


「…っえ?き、聴こえないんですか…?悲鳴が…」


「俺には何も聴こえないが」


「うそ…なんで…」


「…少しだけでもいいから、何があったか教えてくれないか」


「っく…うぅ…」



しばしの沈黙。頭の中で出来事を整理して、諦めたように彼女はぽつりぽつりと話し始めた。



「は、話しても無駄だと思います…けど、一応。わ、私…さっきまで友達数人と一緒に帰ってたんです…。そ、それで、楽しく雑談をしていたんですけど…」


「…」


「…目の前で突然、私以外が消えました」


「…」


「そ、それであの…私、パニックになっちゃって、ただひたすら消えた友達の名前を叫んでいたんです。そしたら何故か、姿は見えないのに声だけは聴こえてきて…」


「…」


「丁度その時でした。友達が叫んだんです」


「…なんて?」


「『逃げて』って、ただ一言…。その後、友達の声は聴こえなくなりました…。ただ…」


「…」


「その後から…度々、至る所から悲鳴が聴こえるんです。断末魔のような…。それに加えて段々血液の匂いが充満し始めて…」


「血液の匂い…」


「に、逃げたんです!とにかく走ってその場所から離れました…!でもどこまで行っても悲鳴や匂いは消えなくて…。ついには疲れて歩けなくなって…わ、私…ここできっと死んじゃうんです!」



…今の話を聞いてわかったこと。まず第一に、俺と彼女では認識している…いや、認識できる知覚情報が違うという点。そしてそのことから、消えたように見える人達は実際に消えてるわけではなく、恐らく感じられないだけだと思われる。


ーーー彼女だけは感じられるようだが。



「…そうか」


「もう駄目なんです…。き、きっと魔人の仕業に違いありません!私も…あなたも!死んじゃうんです…」


「1ついいか」


「…な、なんですか?」




「自己紹介しないか?」




「………へ?」


「…」


「い、いや、まあいいですけど…。えっと、葉桜(はざくら) 理子(りこ)、17歳です…」


「葉桜さんね。俺は八嶋 透、26歳だ。」


「あの、名前なんて知って何の意味が…?」


「死にたくないんだろ」


「?」



元勇者としての善性が働いたのか、はたまた何か思うところがあったのかは分からないが、俺は彼女を助けることに決めた。



「今から俺と一緒に行動するんだ。友達、助けよう」


「…ぁ」





「よろしく、葉桜さん」




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