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異世界帰りの俺が魔王軍を殲滅するまで  作者: 霞犬
序章 地球に帰って
1/21

1,全てが終わって

1作目です。

よろしくお願いします。




目を開けた時、最初に見えたのは公園で遊ぶ子供たちだった。砂場で山を作る子、ブランコに乗っている子、滑り台で遊ぶ子。そしてそれをベンチから見守る母親らしき女性たち。


この視界の全ての情報から「平和」という言葉が思い浮かぶ。満足に食事ができ、明日の命の不安もなく眠り、暖かい家庭がある。


そんな世界を作る。誰もが死に怯えなくていい世界を。


…それが、俺が正義を振るった意味。




目の前の光景は俺が目指していた平和そのものだ。しかし同時に、この光景は俺の脳を混乱させていた。公園も、健康な人間たちも、言語も…


その全てが懐かしい()()のもの。


俺が生まれた星、地球。既に平和であり『勇者』という存在が必要ない世界。ここは俺が救おうとした世界ではない。


これはもしかして走馬灯というやつなのだろうか?だけどこんな場所に見覚えなどはない。そうして硬直していた時だった。



「おじさん、なにしてるの?」



不意に子供に話しかけられた。俺を認識しているのか、その大きくつぶらな瞳に見つめられる。どうやらこれは走馬灯ではなく、実際の出来事のようだ。俺はその子供を見つめ返すと、しゃがんで話しかける。



「縺薙s縺ォ縺。縺ッ」


「へ?」



…話してから気付いた。久しく日本語なんて話していないということに。発音の仕方を完全に忘れてしまっている。困惑した様子の子供は俺を外国人だと思ったのか、小さい声でハローと言い直してきた。俺は少し待てというジェスチャーをすると、何度か小さく発声し、改めて子供に話しかける。



「あ、あー、あ〜…」


「…?」


「こんにちは」


「っ!こんにちは!」



何とか日本語を話せた。子供の方も話が通じて安心したようだ。



「それでおじさんはなにしてるの?ずっとぼーっとしてたけど」



当然の疑問だ。俺は183cmほどの長身、それに加えて25歳というおじさんとも呼べる歳。乱雑に伸びたぼさぼさの黒髪から覗く青眼の下には大きなクマ。子供たちからしたら警戒の対象だろう。真昼間の公園で何をするでもなくそんな男が突っ立っている。



「…おじさんは、何をしてるんだろうね。自分でも分からないんだ」



俺は本当は何をしたかったのか。あの世界で俺は『勇者』として正義を振るった。誰もが笑顔でいられる世界を作るために。


本当に?本当に俺はそう思っていた?


俺は…俺はただ…



「ふーん、へんなの!」



そう言うと子供は走り去って行った。1人、ぽつんと取り残される。…状況は何となく分かった。


7年前、俺は異世界に呼び出されて、『勇者』として魔王討伐の旅に出た。地獄のような日々だった。でもそれも終わった。…そう、終わったのだ。


俺は魔王との戦いで命を落としたはずであった。だけどどうしてか、今もこの心臓は脈を打ち続けている。ああそうか、俺は…










7年ぶりに日本に帰ってきたのか。




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