犯罪未然防止システム
C国の王は頭を悩ませていた。
C国は周りを海に囲まれた島国で、その素晴らしい大自然はもちろん、恵まれた食材、歴史的な遺産などからかつては観光地として賑わっていた。
自然、遺産などが現代の文明により駆逐され、汚染された国は数知れないため、ありのままの自然を持つC国の景色は『Cの景色を見るまで死ぬな』言われるほど美しい。
しかし近年、C国の治安悪化が国際問題となり、観光客の数は年々下降の一途を辿っていた。
観光業はC国の一大産業ゆえ、観光の衰退は国の衰退だ。
王は治安改善のため犯罪を減らすことは不可欠だと考え、各地の専門家から意見を聞くことにした。
「刑の厳罰化が一番でしょう。」
「街に配備する警官の数を増やしましょう!」
「犯罪組織を徹底的に監視してみては?」
様々な意見が寄せられたが、王にはどの意見にも今ひとつ納得できなかった。
そんな中、C国一と名高い学者がこう提案した。
「犯罪者の思考や行動原理を分析するシステムを導入してはどうでしょうか。」
興味を持った王は問うた。
「どういうことかね?詳しく話を聞かせてくれ。」
「ええ。犯罪者の多くは見つからないように隠れて犯行に及ぶ場合がほとんどです。また、中には好きで犯罪を犯したわけでは無い連中も存在します。犯罪の起こり得る状況下に置かれて『魔が刺した』と供述する犯人も数多くいるように。」
「ほうほう、なるほど。」
「例えば13人もの女を襲った受刑者Sは他の受刑者にこう自慢していたそうです。『L市の繁華街の入り口にパチンコ屋があるだろ。あそこの裏の路地は人通りが少ない上にうるさいから叫ばれても誰も来ねぇんだ。ヤるのにはうってつけだよ。』と。つまり…」
「つまり、犯罪者の言動から犯罪を未然に防止するヒントを得られる、ということかね!」
王は興奮気味に割り込んだ。
「左様でございます。しかし、取り調べ中には有益な情報を吐かない犯人も多いです。S受刑者のようなタチの悪い犯罪者なら尚更です。こういった情報は刑務所の中での会話でこそ拾え得るのです。」
犯罪未然防止システムの計画はすぐに進められた。
王はこの計画のためには資金や人手は惜しまなかったため、C国の技術の粋を集めた極めて高性能なAIを作り出すことに成功した。
このAIは『C国にさらなる光をもたらすように』との願いを込め、"ヘイムダル"と名付けられた。
ヘイムダルは国全体を管理する全てのコンピュータシステムと連動しており、ヘイムダルが指示を送れば即座に実行される。
王は大いに喜び、早速実験を命じた。
模範囚と呼ばれる素直な受刑者を呼び出し、犯した罪の内容を事細かに話させた。
この受刑者は数々の窃盗を働いた罪で収監されていた。
「窃盗なんて簡単でしたよ。どの店も服の中にモノを隠して店を出るだけで盗み出せましから。」
ヘイムダルは彼の話を全て分析し、全ての店の扉に商品感知センサーを導入させた。
結果C国の窃盗事件はみるみると減少していった。
「これを刑務所に設置し、受刑者の話を全て分析させることで犯罪はなくなるのではないか!」
反対する者は居るはずもなく、その日のうちに刑務所へ導入された。
「C国の光差す明るい未来に乾杯!」
王達は祝宴を開き、時間が経つのを忘れて酒を飲み交わした。
ヘイムダルが刑務所に導入された日の夜、一人の受刑者が涙を流していた。
彼は冤罪で囚われており、何度も再審を訴えていたが聞き入れられなかった。
彼は人望のある政治家として地元では有名な善人であった。
「ここから出られたら、この国を良くしていくのになぁ」
彼の心からの一言をヘイムダルが聞き逃すわけはなかった。
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翌日、異様なまだと街の騒音で目を覚ました王は、その光景を見た瞬間全てを理解した。
ヘイムダルがもたらしたのは光ではなく、ラグナロクだったのだと。
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