第三話 思った以上の超能力
心の中が、脱・極貧生活でいっぱいになっているところに芹さんから話かけられる。
「履歴書を見たところ、君は一人暮らしだろう?この報酬額はさぞかし魅力的に映ると思う。まあほどほどに焦らず頑張りたまえ。」
顔に金にしか興味ありませんって書いてあったみたいだ。恥ずかしい...。1人暮らし関係なく貧乏なので非常に魅力的です。はい。
芹さんが顔を半笑いから真面目な表情に戻す。
「さて。話をアプリに戻すが、このアプリには他にも色々な機能がある。例えばーー」
要約すると、
・アプリ内に自分のアカウントが存在している。
・自分のアカウント名は超能力者のランク順位の番号で登録されているため個人を特定するのは難しい。ただし例外もある。(ランク0001など、そのランクをずっと維持している有名な超能力者は特定できる。)
・初期のランクは9500。俺もこの数字からスタートだ。
・ランクは依頼達成ごとに少しずつ数字がさがっていく。逆に失敗すると上がる。ランクは低い数字の方が凄いみたいだ。
・依頼の受注は、自分のランクが9000番代でも0001などの高ランク依頼を受けることができる。だが大体失敗するのでWSOは推奨はしていない。
・超能力者同士でアカウントを教え合うことができ、双方の許可があった場合にフレンド登録ができる。その際に通話機能とメール機能がお互いに使用ができるようになる。
なるほど。IDを教え合うとフレンドになれると。L◯NEみたいなもんか。
「それともう一つ説明しなくてはいけないことがある。超能力者のルールについてだ。
まず大前提として、超能力は世間一般では公表されていない。七草君も今まで知らなかっただろう?」
「はい。今回の件で初めて知りました。」
「そう。超能力は国家ぐるみで秘匿されている。なので不用意に超能力を見せびらかすことはお勧めしないね。我が社や国の機関に処理されてしまう。くれぐれも気をつけるように。」
「き、肝に銘じます!」
処理という名の殺処分だこれ!
「分かってもらえて嬉しいよ。言い換えれば、バレなきゃ日常で超能力を使ってくれても構わない。
...そういえば七草君の超能力はどんな能力なんだね?能力の系統が分かれば色々アドバイスができるんだが。」
「ええっと...」
「ああ、言いづらいなら言わなくてもいい。自分の商売道具だ。喋りたくない気持ちも分かる。
だが私はここのWSO支部でも上の方の立場だ。口の固さには自信があるし、もし他人の超能力を本人の許可なしで他人に教えると私も処理されてしまうからね。比較的安全だ。どうだね?」
「いえ、実ははっきりとは分からないんです。多分これかな?というアタリがあるだけで確証が持てなくて...」
「ほう。どんな能力を予想しているか教えてもらっても?」
まあ別に危険な依頼を受けるつもりもないし、言ってしまっても大丈夫かな?ちょっと楽観的すぎる気がするけども、自分の能力についてアドバイスがもらえれば助かるし。
「多分、瞬間移動かなと思っているんですけど。」
駅のホームから落下してしまった際にまた一瞬でホームに戻っていた。
だから単純に考えると恐らく瞬間移動...だと思う。
「ほほう!瞬間移動!」
「凄いんですか?」
あの冷静そうな雰囲気の芹さんが驚いた表情をしている。瞬間移動ってそんなに良い能力なのか?漫画だと結構メジャーな気がするけど。
「もし本当に瞬間移動だったら君にはとてつもない価値がつく。なにしろ瞬間移動の超能力者は数が非常に少ないんだ。だが利便性は計り知れない。需要があるのに供給が間に合っていないんだよ。
そして瞬間移動は移動できる距離が遠ければ遠いほど優れている。移動による戦術的な価値は天井知らずだ。」
なるほど...思っていた以上に凄い能力みたいだ瞬間移動。
「瞬間移動の超能力者は何人かいるんだが、その中でも自分が身につけている物ごと大陸間を瞬間移動できる人がいる。その人物は噂によると、1つの依頼料が10億を超えることもあるそうだ。」
「じゅっ!?」
10億!?10億ってなんだ!?俺の主食のもやしが何パック買えるんだ!
これは俺の能力に期待せざるを得ない。
......しかし一つ問題がある。
「あの〜、俺自分から意識して超能力が使えたことがないんです。」
そう、俺はあの線路に落ちた日以来超能力を使えていない。だから検証ができず、自分の能力の詳細が分からなかったのだ。
瞑想をして内なる力を解き放とうとしても、ネットで転がっていた黒魔術の呪文を詠唱しても不発。隣のマンション住民から壁ドンされた苦い記憶しか残っていない。壁が薄すぎるんだよ俺の住んでるボロアパート。
「ああそれは仕方ない。超能力は発動のトリガーがあるんだ。自分で気づくのは難しい。」
「なるほど!どうやるか教えてもらっても?」
「ああ、構わないよ。他の超能力者にも積極的に教えているしね。
......ズバリ言うと、超能力の発動トリガーは強い感情の動きなんだ。七草君も心当たりがあるんじゃないか?」
心当たり...。
あ!ある。あの時、線路に落ちたあの時俺は強い危険を感じた。あれが原因かも知れない。
「あります。駅のホームから落ちてしまって。電車に轢かれそうになった時だと思います。」
「それはまた随分と危険な体験だったね。だが恐らくその経験で君は超能力に目覚めたんだろう。」
「なるほど。...あれ?でもちょっと待ってください。超能力の発動トリガーが電車に轢かれかけたことだとしたら、能力を使いたい時はまた電車に轢かれそうにならないといけないんですか?それってかなり不便な気が。」
「それは安心してくれていい。先程私は強い感情の動きが超能力の発動のトリガーになると言った。何も恐怖だけが感情の動きじゃないんだ。
他にも色々ある。喜怒哀楽とかもそうだろう?」
早とちりしてしまった。喜びとか悲しみでも感情が強く動けば超能力が発動できるみたい。でもどうやって?
「では実際にやってみるかね?」
「え?いいんですか?」
「ああ。流石に場所は移動するが。
もし君の能力が瞬間移動ではなく火炎放射だったら部屋が丸焦げになってしまうからね。あと私の秘書も呼ぼう。」
部屋を移る理由は分かるが、秘書?秘書を呼ぶ必要なんてあるのか?
芹さんは先程の固定電話を取り、またどこかに電話をし始めた。
色々喋った後、受話器を置き俺に向き直る。
「よし、地下の能力確認室の使用許可をもらった。
私の秘書もそちらに待機させてある。移動しようか。」
芹さんとエレベーターにのりB1階へ。地下まであるって本当どんだけ広いねんこの会社。
エレベーターを降りると金属でできた頑丈そうな扉が目の前に出てきた。その扉の前に先程芹さんに携帯を持ってきた金色のメガネの女性が立っている。
この人が秘書だったのか。今更だが軽くお辞儀をしておく。
「では中に入ろうか。」
いくつものロックを解除し、扉を開けて中に入ったその先は、これまた広くて天井が高い部屋だった。ちょっと薄暗いな。
そして部屋にはビルの重さを支える柱と、中央に見える怪しげな機械とパソコンしかない。
芹さんとその秘書が中央の機械がある場所へ移動する。
「これをつけてくれたまえ。」
「...この機械は?」
この部屋の中央に位置する怪しすぎる機械は、一見すると洗脳装置にしか見えない。悪の組織にありそうなアレだ。対◯忍に登場しそうな。
ヘルメットのようなかぶりものに電極がたくさん生えていて、そこから伸びるコードがパソコンに繋がっている。
本当に大丈夫かこの機械?怖いんですけど。
「はは。皆んなこの機械を初めて見た時、君のように顔が引き攣るんだ。
私はその表情を見るのが好きでね。だから超能力者の卵の、面接官を買って出ている面もある。」
「悪趣味すぎます。」
芹さんのドS発言に秘書さんが流れるようにツッコんだ。いつもこんな雰囲気で上司部下漫才してるのかもしれない。
この秘書さんとは仲良くなれそう。ツッコミ仲間として。
「さて冗談はこれくらいにして。
実はこの装置は感情の強さを数値で表してくれる機械だ。人によって抱く感情は個人差がでる。この機械で一番強く心が揺れ動く感情を探そうって訳さ。
強い感情が無ければ超能力は発動しない。だからこれは非常に重要なことを知ることができる機械なんだ。」
なるほど。理にかなっている。
ちょっと気が引けるけどかぶってみるかぁ。
部屋の中央の機械の側にいる芹さんと秘書さんに近づく。
「分かりました。付けてみます。」
「それがいい。では、...よいしょっと。どうだね?どこか違和感はないかね?」
「大丈夫です。」
椅子に座った俺に芹さんが洗脳装置モドキをかぶせる。ちょっと頭が機械の重みでふらつくが、特に違和感などはない。
「では実験を始めるか。橘君、起動してくれ。」
「はい。では七草様、装置の電源を入れます。リラックスして下さい。」
秘書さんは橘と言う名前らしい。だがそんなことはどうでもいい。今からする実験とやらで凄く緊張してしまっていた。
秘書さんが手元にあるスイッチを押す。
カチッという音と共にブゥンと頭の機械から音がする。
リラックスしろとは言われたけど無理そうだ。さっきから心臓の音が聞こえるくらいうるさい。
「ふーむ。緊張しているようだね。感情のパロメーターが乱高下している。これではどの感情に特化しているか分からないね。」
「す、すみません。」
秘書の橘さんが操作するPCを覗き込んで芹さんが呟く。
怪しい実験じゃないとわかった今、ちょっと時間を置いてくれたらリラックスできそうだが...。
「構わないよ七草君。君以外の人もよくそうなるからね。
じゃあ橘君、今回も例のを頼む。」
「.........。はい...。」
フォローもできるナイス上司だ芹さん。俺のバイト先の店長にも見習わせたいね。
しかし橘さんに何をさせるつもりなんだろう。凄い嫌そうにPCから離れて俺の前に移動してきたけど。
「では...やります。」
「盛大に頼むよ橘君!」
なんだなんだ?芹さんのテンションが高い。ちょっと怖いんですけど。
「......七草様、私から視線を逸らさないで下さいね?」
「は?はい。」
コミュ症だから人を見続けるの辛いんだけど、どうやら実験に必要なことなので素直に従うことにする。
「...。」
「橘君!いつまで突っ立っているんだね!いつも超能力の発動前にやっているだろう!」
もったいぶる橘さんに痺れを切らした芹さんが野次を飛ばす。
え、超能力の発動前にやってることって...?
「はぁ〜...分かりました。やります。」
大きなため息が橘さんから漏れる。凄いやりたくなさそうだ。
一体何をするんだ?
場がシン...と静かになる。
あれ、芹さんがなんかニヤついてる。ん?橘さんは妙に顔が赤いような...
「ら、ライトニング・パワー・トランス!
聖なる力が私に守る力を与えてくれる!
闇の力を持つ悪き存在よ!退きなさい!
プリティー・ゴールド!ここに降臨!
光に代わって断罪よ!!」
...ハッ!余りの現実感のない光景に思考が停止していた!
目の前で、20歳は超えてるであろうクール系超美人が顔を真っ赤にしながら、女児アニメの変身シーンを振り付けまで再現しながらクルクル回転して決め台詞だ。思考停止も無理はない。
俺はそのアニメを知らないが、振り付けに相当キレがあった。かなり完成度は高そうだ。
「フッ...クッ...クク...。」
芹さんが下を向いて肩を震わせ笑いを堪えている。一方俺は、現実感のなさに唖然としていて笑いは出てこなかった。
橘さんはと言うと涙目で真っ赤な顔を俯かせ、歯を食いしばっている。凄く恥ずかしそうだ。
...やばい、ちょっと可愛い。
ん?顔が真っ赤で気づかなかったが、橘さんの目がぼんやり赤く光っているような?
「フククッ...。お、気づいたようだね七草君。そう、超能力は発動可能になると目がぼんやり赤く光るんだ。
そして橘君の超能力の発動トリガーは羞恥心。
夜な夜な自分の部屋で、好きな女の子向けのアニメの変身シーンを練習していたら親に見つかってしまったらしい。それで恥ずかしさのあまり超能力に目覚めたそうだ。ブハハッ!!」
笑いを我慢しきれなくなった芹さんが盛大に吹き出す。橘さんはそれを睨みつけている。いかん、俺も笑っちゃいそう。
!!
とんでもないことに気づいてしまった。聞かないほうがいいと思うが聞かずにはいられない。
「あの...橘さん?でいいですかね?ちょっと聞きたいことが。」
「...何ですか。」
あ、芹さんに笑われてちょっと不機嫌そう。でも橘さん呼びは許してくれるっぽい。
「もしかして、さっきのプリティ・ゴールドを意識して眼鏡が金色なんですか?」
「......だーはっはっは!!ひーっひーっひー!!」
あのクールダンディな芹さんが床に倒れて笑い転げてしまった。
「なっ、な、七草君!君は私を笑い殺す気かね!?ひーっ!なんという超能力だ!敵を笑い殺す超能力!これは強敵だぞ橘くーん!ひー!!ひー!!」
「ははは、ついツッコみたくなってしまいまし...ヒッ!」
「...」
マズイ。額に血管を血走らせた橘さんがこっちを見ている。
この後芹さんと一緒に土下座して許してもらった。
ーーー
「さあ気を取り直して実験再開といこうか。」
「はい。」
「うん、ちゃんとリラックスできているね。これなら実験に問題はなさそうだ。」
「はい、よかったです。」
さっきの橘さんの変身シーンですっかり緊張が解れたみたいだ。もしかしてさっきのは俺の緊張を解くためにやってくれたのかも。
...いかん、思い出したらまた笑いが込み上げてきた。我慢しよう。
「おっとぉ七草君、笑いの感情のパロメーターが上がってきているぞぉ?どうしたのかな?」
...この野郎、分かってて聞いてきてやがる。
あっヤバい。橘さんの視線が凄く痛い。思い出させるのやめて。もうこれ以上美人に嫌われてたくないッス。
「ふふ、冗談だ。
橘君に超能力を起動してもらったのは、何も君をリラックスさせる為だけじゃない。橘君の超能力は防御系なんだ。七草君の超能力が何か分からない以上、身を守るためもあったのさ。」
「なるほどそうでしたか。」
あーわざわざ秘書を呼んだのはそういう意図があったのね。
早く言ってくれよもう。
「よし、いい加減実験をしようか。
まずは怒りから。今まで1番怒りを感じたことを思い出してーー
実験は数十分で終わった。
今まで感じた1番思い出に残ってるそれぞれの感情を思い出し、数値化するだけだった。
そして俺も...どうやら橘さんと同じだったらしい。
俺の感情が1番動いたのは羞恥心だった。
「どうやら君も羞恥心が1番高いようだね。」
「そのようですね...。」
「まあ気にすることはない。大体の人は恥ずかしいことに強い感情の動きがある。」
PCのモニターを見ると、羞恥のグラフ数値がダントツ1番だった。くそっ!俺のようなコミュ症は大体恥ずかしがり屋だったのを忘れていた。これじゃあ橘さんを笑えなかったじゃないか。一体俺はどんな恥ずかしいことをやればいいんだ。
...まあ橘さんからの射殺すような視線が和らいだのは収穫ではあったが。
「では今から超能力の発動までしてみようか。
発動トリガーは......そうだな。七草君、少し聞きたいことがあるんだが。」
「? 何でしょう。」
「君は今まで彼女はいたことあるかね?」
「......。」
「いたことはあるかね?」
「......。」
「いたことは「ないです。」」
「おおそうか。じゃああの発動トリガーが使えるな。」
いや別に?いつでも作ろうと思えば?作れたんですけどね?
家庭の事情もあるし?バイトも忙しいからね?そんなことにかまけている暇は無かったっていうか?別にモテないわけじゃないんですけどね?環境とか時代がね?俺を逃さなかったというか?
でもそろそろ本気出そうかなと思ってるんですけどね?
...おい橘ァ!肩震わせて笑ってるんじゃねぇぞ!
「どんな発動トリガーなんでしょう。」
「ちょっと耳を貸してくれたまえ。」
「え?はい。」
芹さんが俺に近寄って耳打ちしてきた。ゴニョゴニョ。
ほほう。これは今笑っている橘さんに一泡吹かせられるな!
なんか芹さん顔ニヤついてる?
...まぁいいか。
橘さん!もう一度羞恥にまみれるがいい!いくぞ!芹さん直伝の発動トリガー!
「橘香織さん!あなたのことが好きだ!!付き合ってください!!!」
これが直伝の『告白』トリガーだ!芹さんに橘さんのフルネームまで教えてもらったぜ!
今日会った見ず知らずの男に告白される恥ずかしさを思い知れ!
「だぁーはっはっは!!ほ、本当にやるとはっ!君って奴は!ひーひっひ!」
また芹さんが床を転げ回っている。...なんで?
「あ、あなた、芹さんに何を吹き込まれたか吹き込まれたか知らないけど...騙されてるわよ?」
またまた顔が真っ赤になった橘さんが俺にそう告げる。
...なんでなんで?
俺が橘さんに告白して恥ずかしめようとする作戦のはず。
橘さんに告白?
誰が?誰に?
俺が?橘さんに?
......。
なーにやってんだ俺はああぁぁああぁ!!
相手も恥ずかしいけど俺も恥ずかしいじゃねーか!
童貞には恥ずかしすぎる!俺如きがなんでこんな超美人に告ってんの!?あああ!穴があったら入らせてえええ!!
とんでもない羞恥心が全身を駆け巡ったその時、体の奥がカッと熱を持った!
「おお!成功だ!やはり童貞にはこのトリガーが良く効くなぁ。」
「...おめでとうございます。」
芹さんが笑い転げるのをやめてこちらを向き、橘さんは苦笑いをしながら祝福の言葉をくれた。
嬉しいけど恥ずかしい。
「あ、ありがとうございます。」
「今度から超能力を発動させる時は誰かに愛の告白をするといい。そうだな、できるだけ大勢の中でやるとより効果的だ。ププッ。」
な、なんか橘さんに告白して能力が発動したから素直におめでとうを受け取れないな。芹さんが面白がってただけじゃん。まあいいけど。
「おっと七草君、発動はまだだよ。私が橘君の後ろに行くまで使わないでくれたまえ。...よし、オッケーだ。いつでも超能力を発動しても構わない。」
「了解です。」
橘さんがバリアみたいなのを自分に展開している。あれが彼女の超能力か。
芹さんが橘さんの影に隠れた。よし、もう超能力を使ってもいいだろう。
瞬間移動をする様に、全身を駆け巡る熱に力を込める。超能力を意識して使うのは初めてなのに、なぜか扱い方がわかった。超能力者は皆んなこうなのかもしれない。
......!!
おそらく超能力が発動した。どうなったか芹さん達に聞いてみようとしたら芹さん達の動きが止まっていた。
お!
も、もしかして、創作でも有名な時間を止める能力か!?
......いや、ほんのちょっとずつだが芹さん達が動いている。しかし俺の動きは変わらない。いつものスピードだ。
これは俺以外をスローモーションにする能力?というより俺のスピードが上がってる感じか。これが俺の超能力?
ーーいや違う。
だとしたらあの日、駅でのことが説明できない。あれは気づいたら落ちた線路から駅のホームに戻っていた。今は意識がある。
...うーんまあ家で検証か。
そういえば超能力って発動したらいつまで使えるんだろうか。使う度にあんな恥ずかしい思いはしたくないぞ。
とりあえず能力の発動を切る。
「な、七草君。今君の姿がブレたと思ったが。どんな感じだったのかね?」
「ええと、多分スピードが上がる超能力みたいです。初めて超能力を使った日は、どうやら落ちた線路から、超スピードで駅のホームに駆け登ったようです。」
「おお、なるほど!結構強い能力じゃないか?瞬間移動ではなくて残念だが。」
嘘をついた。
おそらく俺の超能力はスピードを上げる能力じゃない。まあ超能力の全容が分かっても教える気もないが。
正直言って他人に自分の能力がバレるのは怖い。
面接の際に芹さんも、自分の商売道具の超能力を言いづらいか?とも言っていたし、別に隠してもいいだろう。
そして疑問に思ったことを直ぐ聞いてみることにした。
「あの聞きたいんですが、超能力を発動トリガーで使えるようになった後、どのぐらいの時間使えるんですか?
いちいち能力を使う度に恥ずかしい思いをするのは嫌だし、手間がかかるのですが。」
「ああ、すまない教え忘れていた。
それは個人差があるので私にも分からないんだ。自分で調べるしかない。」
「超能力者同士の戦いだと、その情報が生命線になります。人に教えるのは辞めておいた方がいいですよ。」
芹さんと橘さんからアドバイスをもらった。
確かに超能力者同士が持久戦になった時、相手の持続時間知ってた方が有利だもんな。良いことを教えてもらった。
とりあえず能力が使えなくなるまで1日待ってみるか。
30分に一回能力を使って使用不能になるまでの時間を計ってみよう。
「では今日の面接は終わりだ。また超能力で分からないことがあったら聞いてくれ。電話をしてくれても構わない。」
「何から何までありがとうございます。本日はありがとうございました。」
「いやいいんだ。ただでさえ日本は超能力事業で遅れているからね。このぐらいはお安い御用さ。」
今日の面接の終わりを芹さんが告げる。電話でのアフターケアまでつけてくれるとはありがたい。
「最後にアドバイスをひとつ。最初受ける依頼はあの9800番の依頼にしておきなさい。依頼主の彼女は面倒見がいい。きっと依頼のノウハウを教えてくれるはずだ。」
「覚えておきます。」
9800番って、あの別の任務の同行者募集中って依頼か。
まだ残ってたら受けてみようかな。
「では改めて本日は丁寧に教えていただき、ありがとうございました。また会う機会がありましたらよろしくお願いします。」
「はは。これはご丁寧に。こちらこそいっぱい笑わせてもらって楽しかったよ。」
「ゴホンッ!」
「おっと失礼。じゃあ見送りだけさせてくれ。」
「私からもお疲れ様でしたと言っておきます。
...地下であったことはお互い忘れましょう。」
「はは...はい。」
3人でエレベーターに乗り、一階に到着。玄関まで見送ってもらい、WSOを後にした。
「芹さん今の方があの?」
「ああ。あの七草だ。何故こんなところにいるのか驚きだがね。」
ーーー
とんでもない問題ができた。
家に帰った俺は早速超能力の検証をした。
大体発動から丸1日ぐらい超能力が発動できるみたいだ。結構長くて良かった。3分しか連続で使えなかったら3分毎に羞恥プレイだったな。危ない。
と、まあ問題はそこじゃなくて、俺の超能力にある。
俺のスピードが早くなっているのではなく、俺自身の時間を操れるらしい。
DVDの再生機能のように、早送り、一時停止など、自分の時間なら何でもできる。
線路に落ちたあの日、俺は死の恐怖から自分に巻き戻しを使っていた。
これかなり強くねーか?
思った以上の超能力だ。瞬間移動なんて目じゃないぞ。
...この能力が後に、日本最強の能力として知られるのはもう少し先のお話。