表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【羞恥系超能力者、七草将史!】  作者: 伊藤 五面
13/14

第12話 母子草家のお礼


お次の依頼は護衛依頼。

詳細な内容は後からアプリでメールされるらしい。

メールがくるまで時間がかかりそうなので、とりあえず俺はバイト先へ向かった。


バイト先に着いてもメールはまだ来ていないようだ。

やべ、もう時間だ。早く着替えないと。


バイト中も、頭の中は次の依頼でのことでいっぱいだ。

どうやって依頼人を守ればいいんだ?とか、依頼人の大臣を狙う敵は強いのか?とか。

依頼内容メールが来ればすぐにわかるけど考えずにはいられない。


上の空で皿洗いをしていたからだろうか、例の性悪デブ店長から更に仕事を押し付けられてしまった。

ああくそ、今は能力を使えないからサボれずキツいってのに。


超能力は毎日使いたいのはやまやまだが、いちいち誰かに告白しないといけないのが面倒だ。今後の課題にしよう。手軽に能力を発動できるようにしたい。


色々考えていたらバイトの終了時間になっていた。

掃除や片付けをして、タイムカードを切って退勤する。

はあ、今日も店長はうっとおしかったな。

そうだ、もう貯金あるし辞めようか?......いや何かあった時のことを考えてバイトは続けておこう。それに働いてもないのに急に大金を使ってたらおかしいからね。


そんなことを考えながら帰路に着き自宅へ向かう。


さーて今日の晩御飯は何にしようかな、っと。自転車を定位置に止め、オンボロアパートの階段を上がる。

今何時だっけ。時間を見ようとスマホを確認するとWSOのアプリに通知が来てる。

お、護衛依頼の詳細だ!アパートの階段を上がっている途中だったが、急いで詳細を開く。


ーーー


813:外務大臣護衛依頼


東京で開かれる会議に参加するために私、外務大臣・小松親仁(こまつ しんじ)の護衛依頼。信頼できる情報筋から私を狙っているとの情報が入った。


そして同行者1名も同時に護衛を希望する。

移動手段は〇〇駅から車(防弾仕様のリムジン)で東京に向かう予定。その間の安全の確保を頼みたい。



日時◯/● 13時〜東京到着まで

報酬金額:60,000,000円+指名依頼金:1,000,000円


ーーー


まず目についたのは報酬額だ。6千万円。これまたとんでもない金額。

2億円を手に入れた後だと少なく感じてしまうが、それでも途方もない数字だ。っていうかこんな大金をポンポン出す超能力者の世界ってどうなってるんだ。


そして依頼ランクの813という数字。

前回の鳥兜と交戦した依頼ランクは暫定999。それよりも高く設定されているということは、この依頼がそれより難しいってことを証明している。最低でも大臣が用意した防弾リムジンを突破できるほどの敵が来る可能性が高い。......今から胃がいてぇ。


そして依頼人の外務大臣・小松親仁さんとは別に、守らなければならない人がもう1人いるみたいだ。

これ、さらっと書いてあるけどかなりキツいよね?護衛する人が2人とか単純に負担が2倍じゃん。うーん厳しいな。


唯一問題ないのは日時だ。

その日は大学の講義も取っておらず、バイトもない。これだけはラッキーだ。


依頼の日までに、素人なりに準備しておこう。とりあえず遠距離攻撃の手段とか欲しい。何でもありそうなホームセンター行くか。



自分の考えにキリをつけてスマホから目を離すと、階段を登っている最中だったことを思い出した。おっと、こんなところにいたら他の人の邪魔になるな。

錆びて老朽化した階段を登り切って、いつも見慣れた通路が目に映る。階段を上がって3つ目のドアが我が家だ。


ん?

俺の家の扉の前に誰かが体育座りで座っている。その人の隣には大きな旅行バック。



「やっと来ましたか。来るのが遅いんじゃないですか?」



そう言うなり声の主が立ち上がった。

声が随分と高い。それになんか特徴的だ。どこかで聞いたことあるような...。


年齢は高校生ぐらいだろうか。背は低く小柄だが、驚くほど整った顔立ち。その美人さは、どことなく御形さんに似ている気がした。

髪色は暗い茶色で髪型はツインテール。

そしてなんと言っても目を引くのが服装だ。

彼女の着ている服は、クラシックメイド服。スカート丈の長い、実用性が高そうなメイド服だった。安っぽいコスプレじみた物ではなく、一目で仕立ての良い物と分かるもの。本物のメイド服だ。


よくそんな服着てここまで来たな...。恥ずかしくない?

なんでそんな奇抜な人が俺の家の前に。



「あの。どちら様ですか?」


「はぁ?お姉様から何も聞いてないんですか?」


「お、お姉様?」


「ハァ......わかりませんか?愛お姉様に決まってるでしょう。」



愛......あ、御形さんか。

そういえば分家がどうとか、お礼がどうとか...言ってた気がする。



「すみません、思い出しました。御形さんが分家がお礼するとか言ってた気がします。」


「あら。ミジンコみたいな記憶力ですね。」


「ミジ......」


く、口が悪いなこの子。美人が台無しだ。

そしてこの人間離れした美貌は、御形さんの分家......親戚だからこそだったのか。御形さんの家系全員美人そうだもんな。



「さあ、さっさとご主人様の部屋に入れてください。お礼ができません。」


......ご主人様?


「ちょっと待ってください、お礼ってここでじゃダメですか?ありがとうって言ってもらえればそれでいいんですけど。助けた時に御形さんにも感謝はされてるし、わざわざ家に入る必要がない気が。」


「そんなことだけで母子草家に戻れば私は当主様に殺されてしまいます。私が無様に殺されるのが見たいのであれば止めませんけど?」


「ぐっ......じゃあお入りください。散らかってても文句は言わないでくださいね。」


なんでお礼を言う側の方が高圧的なんだ。

しかもテコでもここを動かないって雰囲気だ。こちら側が折れて家に招かないことには話が進まなさそう。

それにお礼って何のお礼だろう?宗家の御形さんを守ったから分家の人がお礼をしに来たのかな?


とりあえず話を聞くため家の扉を鍵で開ける。


「どうぞお入りください。」


「失礼します。うわ、狭くて貧乏臭い玄関ですわね。」


ほっとけ。


ぶつぶつ俺の家にケチをつけるメイドさんに居間まで来てもらい、座布団に座ってもらう。



「それで、お礼って一体何のお礼なんですか?」


「いきなり本題ですか。お茶とかでないんですか?それにこの座布団、少々カビ臭いですよ。3日に1回は干してください。......まあいいでしょう。お話しします。」


う、うぜぇ...


「先日の任務依頼でご主人様が鳥兜修斗の殺害をしたと、お姉様から母子草家に連絡がありました。そのことについてのお礼です。」


「それが結果的に御形さんを守る形になったから、分家がお礼に来たって感じですか?」


「違います。ミジンコ脳如きで私の話す言葉の先を理解できると思わないでください。」


「......。」


「確かに宗家の次期当主であるお姉様を守ったのは評価しますが、その場にいなかった分家の母子草がお礼を言いに来ることはあり得ません。なので母子草家とは別に、今回の件で宗家から謝辞がくると思います。」


「じゃあ何故母子草の人がわざわざここに?」


「鳥兜修斗を殺害したことが、母子草家がご主人様にお礼を言いに来た理由です。」



ん?どういうこと?


「すごいマヌケ面で愚考していますねご主人様。100%、ご主人様の知能では正解に辿りつけないのでお答えしますと、鳥兜は母子草家にとって復讐対象であったのです。」


「復讐対象?」


「ええ。

鳥兜は美術館襲撃事件の実行犯なのは知っていますね?

実はその時、宗家の御形家様方も居合わせていました。」


あ。その宗家の方っていうのは御形さんか。


「そしてその宗家の護衛についていたのが母子草家。

......ここまで言えばお分かりですね?

母子草家の護衛は御形家様の次期当主を守りきれず殉死。私達母子草の評価は地に堕ちました。」


なるほど。合点がいった。


宗家を守りきれずに殺された母子草家の護衛。恐らくだが相当宗家に怒られたんだろう。何たって宗家の次期当主の護衛失敗だもんな。取り返しがつかないレベルの失態だ。

それで汚名返上の為に血眼になって鳥兜を殺そうとしたはず。だが鳥兜の行方は分からないし、能力も強くて見つけても倒せるか怪しい。

そこに俺が鳥兜を倒したと御形さんから連絡が来たと。

それがお礼の理由か。なるほどなるほど。


ん?

でもちょっと腑に落ちないな。

見方を変えると、俺が母子草の仇を横取りしたともとれるぞ。そこは別に気にしてないのかな?



「足りない頭で理解できましたか?」


「はい。大まかには理解できたかと思います。」


「それは重畳。ではお礼の品も是非お受け取りください。」


「お礼の品......ですか。」


やっぱりお金とかかな?以前なら、喉から手が出るほど欲しかったけど今は依頼金でもの凄い潤ってるから別に要らないな。

フッ......俺も金持ちの思考回路になっちまった。



「ええ。価値がつけれなくて非常に貴重なも()です。世界を見渡してもこれほど美しいものは珍しいですよ。」


「貴重で美しい......宝石とかですか?

いや、価値がつけれない()......国宝とか?」


「私です。」


「え?」


「私がお礼の品です。これから住み込みで働かさせていただきます。」



???


「申し遅れました。私、母子草華純(ははこぐさ かすみ)と言います。不束者(ふつつか)ですが末長くよろしくお願いします、ご主人様。」




ーーー




『はい。御形です。七草君?』


「あ、もしもし御形さん?七草です。すみません突然電話しちゃって。ちょっとお聞きしたいことがありまして。」


『何?』


あまりにも意味不明な状況になったので、母子草家の親元、宗家である御形さんに助けをもとめることにした。

......どうでもいいことだが、御形さんと電話できるなんて恐らく大学で俺ぐらいじゃないんだろうか。ちょっと優越感。


それは置いといて、今の状況を御形さんに説明する。



『母子草家のお礼が母子草華純......。』


「はは。ちょっと意味分かんないですよね〜。何言っちゃってるのって感じで。」


『いえ。理解はできる。今の母子草家と御形家の立場が入れ替わっても同じく人を謝礼として送り込むでしょう。』


Wats!?なんで!?



『あなたは今、母子草の復讐対象を横槍を入れて奪ってしまっている状態。あなたに悪意がないにしても母子草としては面子(メンツ)が立たない。だけど母子草の本音は鳥兜を始末してくれたことに感謝しているはず。

そこで母子草の若い女性を送り込むことで、その女性と仲良くなった七草君が、女性の......母子草華純の為に義憤に駆られて鳥兜を殺したって筋書きにしたいのでしょう。かなり強引だけど、母子草家の面子と、曲がりなりにも鳥兜を殺して宗家の私を守った七草君を庇うために必要なこと。』


んな滅茶苦茶な。



「あのー......断ったりって。」


『それをすれば華純は勘当。七草君も母子草家から敵視される。』


八方塞がりじゃねーか!!



『華純は分家でもかなり優秀なメイド。超能力も使えるから邪魔になることはない。よかったね。

じゃあ。』


「あっ!ちょ、ちょっと御形さん!」


プッ。ツーツーツー。

電話が切れてしまった。



「うふふ。お姉様ったら優秀だなんて。嬉しい。」



女子高生のメイドが家に住み込みで働くって......。

こ、これからどうしよ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ