ヘルミー vs. ラロジエ
ヘルミーは闇杖『ヴァジキゲル・ルゲキジァヴ』を持ち、ラロジエを挑発している。
ヴァジキゲル・ルゲキジァヴを持つとヘルミーはいわゆるバーサーク状態になる。ただ、本人の意識はあるらしくもとに戻っても何があったかは覚えているらしい。
以前ウィネのダンジョンであの武器を持たせて初めてこの状態になったとき、目の前にいたオレたちに対して同じような感じで挑発をしてきたのでオレが力を解放してヘルミーを正座させお説教するついでに武器に関していろいろ聞きだした。
まずヘルミーはあの武器を持つと身体能力が大幅に上がる、そのため今のヘルミーでは15分程度しかあの武器を使用できず武器が消えるとヘルミーは気を失う。
またあの武器を持つと血を求めるらしくそのような発言をするようになり挑発的になる。その理由はあの武器で相手が出血するような攻撃を加えるとヘルミーの身体能力がその都度少しずつ上がるらしい。
他にもいろいろと変わったところはあるのだが、オレたちの間ではあの武器は神器クラスの武器という認識で一致した。あの武器はアースターが以前に神器ではないと言っていたのだが、それは神視点で神器ではないだけで、人からすると神器クラスの武器という感じである。まあ本当の神器というのはオレの持っているアースターの短剣だったり、以前戦ったドリエメさんの金色の武器のことを言うんだろうけど。
「トカゲだと!!! ガキがなめてんじゃねーぞ!!!」
「どうした、来ないのか……面倒だから我から行くぞ」
ラロジエは怒っているが仕掛けようとしないので、時間が限られるヘルミーが先に動き出した。
ヘルミーが今までの動きとは全く異なる動きで一瞬でラロジエの間合いに入りハルバードを振り下ろす。ラロジエがそれを腕で受けようと構えたが何かを感じたのかすぐに後ろに飛んでヘルミーの攻撃を避けた。
「いい武器を持ってんじゃねーか、ますます欲しくなったぜ」
「お前の実力はだいたいわかった……では、始めようか」
「あぁ!?」
ヘルミーがそう言うと先ほどよりも早い動きで間合いを詰め横からハルバードを振る。ラロジエはとっさに上に飛ぶことでそれを避け翼を動かしながら宙に浮いたが、すでにヘルミーはラロジエの目の前におりハルバードを振り下ろす格好になっていた。
「くそっ!」
ラロジエは両腕をクロスのようにし今度はハルバードを身体強化した腕で受け止めたが、ヘルミーの攻撃の衝撃でそのまま地面に叩きつけられ腕から少しだけ血も出ている。
ただ、ラロジエはすぐにヘルミーがいる場所まで戻りヘルミーを殴る構えに入ったが、ヘルミーはラロジエの拳をハルバードの柄の部分で受け止めようとした。それを見た瞬間ラロジエはその攻撃をフェイントにして尻尾でヘルミーに攻撃を入れようとする。
この攻撃に対してヘルミーは全く反応できていなかった……が、尻尾がヘルミーに届く前に手前にある何かで受け止められた。
「ヒーロさん、あれは? 間違いなく反応できていなかったようですが」
「あれはただの気力の板みたいなもので、あの武器が自動でヘルミーを守るために発動してくれるらしい。だからヘルミー自身が反応できていなくてもあの程度の攻撃なら問題なく防いでくれるな」
「武器が勝手にですか……」
リアは実際に目で見ているわけではないので具体的に何が起こったのか詳細まではわからなったようだ。
あれもあの武器の特性の1つ、自動防御である。つまりヘルミーは攻撃に集中できる。
ラロジエはヘルミーに受けられるとは思っていなかったのか一瞬スキができてしまい、そのスキをヘルミーが見逃さずラロジエの首を狙ってハルバードを振り下ろした。
ラロジエはとっさに片方の翼を使いハルバードを受け流すことで致命傷を避けヘルミーから距離を取ったが、避けるために使用した翼は横に一部裂けた。
「俺の翼が……」
「くっくっくっ、いいぞ、もっと我に血を捧げよ」
ちなみに、いまヘルミーは空に浮いている。普段はまだ空に浮く練習をしているところであんな感じに自然に浮くことはできないのだが、あの武器を持っているときは浮くことができる。
「人族のガキが……少しは痛めつけて遊んでやろうかと思ったがもう終わりにしてやる」
ラロジエがそう言うとラロジエの体が光だし徐々にそれが大きくなっていく。10秒もしないうちに目の前には全長30mぐらいのワイバーンのような龍が現れ、ラロジエの力も大幅に上がった。
おそらくリアから聞いていたラロジエの実力というのはこの姿の状態のことだろう。
「本来の姿になったからにはお前に勝ち目はないぞ!」
龍ってあの状態でも話せるんだ。
「もう攻撃をしてもいいのか。我も暇ではないのでな」
「なにっ! お前の攻撃なんぞ俺の鱗の前では無意味だ!!!」
それを聞いたヘルミーが攻撃の態勢に入り、ハルバードの斧の部分に力を溜めラロジエの頭めがけて飛び上がった。
「大きくなったところでトカゲはトカゲだ。死ね、ウィンドカッター」
ヘルミーはウィンドカッターをハルバードの斧の刃の部分にとどめラロジエの頭に向けてハルバードを振り下ろした。
ラロジエは明らかに油断していたが頭に当たるのはまずいと感じたのかヘルミーの攻撃を避けたが、振り下ろされたハルバードの斧からウィンドカッターではありえないような威力の風の刃が出てラロジエの片翼の一部を切断した。
「俺の翼がっ!? なぜウィンドカッターごときで俺の翼に傷が入るんだ!!!」
あれもあの武器の特性である。あの武器は武器を通して魔法を使うと威力が数倍になる、しかもヘルミーの得意な系統に合わせてなのか風系の魔法に関してはさらに威力があがる。
あの武器の名前は闇杖だから闇系の魔法の威力が上がるのは理解できるんだけど、なぜ風系の魔法が特別扱いなのかは謎である。
「ちょっと早いけど、そろそろヘルミーは限界かな」
ヘルミーは自分でも限界を感じたのか舞台の上に降り立った。
あのレベルの相手で、しかも初めての命のやり取りだとさすがにいつもより力を使っていたんだろう。ヘルミーは予定よりも早く限界がきてしまったようだ。
「ん? なんだ? ガキがフラフラじゃねぇか! 今までなめた口を聞いていた分痛めつけてやる!」
ヘルミーが持っていたハルバードが手から消えヘルミーは倒れそうになったところでオレが一瞬でヘルミーに近づきお姫様抱っこした。
「お疲れさん」
「なんだ、お前は! 邪魔をす――」
オレはラロジエを消し舞台から降りてリアのところに戻った。
「ヒーロさん、ご苦労様です」
「それじゃ、オレたちは帰るか」
「はい」
「ミノタウロスのほうはダドさんが勝って、相手は帰ったみたいだけどいいんだよな?」
「はい、あのミノタウロスはそこまで勝手をしませんのでバンジャックの元にいても問題ないかと」
いずれにしてもダドさんに一任したからどうこうするつもりはないけど。
「レーアさん、とりあえず終わったのでオレたちは帰りますね」
「はい……えーと、あの六魔天人のラロジエはどこにいったんですか?」
「オレが消しました」
「えっ!? 消した?」
「レーアさん、国には私から伝えておきますので必要以上のことは言わないようにお願いします」
「は、はい、承知いたしました」
「シャルリットさん、ヘルミーのことだけど後日ゆっくり時間を作ろうと思うので待っていてください」
「は、はい、お待ちしております」
こうしてレーアさんの親子とは別れ、オレはヘルミーを抱っこしたままワープホールは使わずにリアとダドさんの場所に移動した。
「ダドさん、お疲れ様」
「お疲れ様です。思っていたより楽に終わりました」
「みたいだな。魔王の側近だからもう少しマシかなと思ってたけどこっちも大したことなかったよ」
「ヒーロさん、それはヒーロさんやウィネさんのダンジョンがおかしいだけですからね」
さて、襲撃を仕掛けておいてその上司に対して何も聞き取りをしないわけにはいかない。
このあと久しぶりに創造神様の仕事をするためにその魔王さんに会いに行こうか。
ヒーロ「なあ、なんであの武器を持ったときは自分の呼び方が『我』になるの?」
ヘルミー「バーサーク状態なのに『わたくし』というのはやはり違和感が……」
ヒーロ「『わたくしに血を捧げよ』……まあ、たしかに変か。バーサーク状態なのにいろいろと気にしてるんだな」
ヘルミー「そこに触れられると気恥ずかしいですわ」




