競能会への襲撃
決勝が始まるまでは時間が取られることになった。というのも、リアからグラストル王国の王室に連絡がいっており観客や闘技場の周りの人たちを避難させるように動いてもらったからである。
普通なら決勝すらしないと思うが、リアが襲撃をしてくる六魔天人の2人をここで潰したいと伝えておりその対応もリア側で行うとしたので闘技場にはオレとヘルミー、そしてレーアさんとレーアさんのお父さんのみが残る手筈になった。
さすがにレーアさんのところに何の説明もしないわけにはいかないので説得力を増させるためにリアにはこちらに来てもらっている。
そしてオレたちがレーアさんのところへ説明に行こうとしたとき闘技場の異変を感じたのか先にオレたちがいる控室にレーアさんの親子が訪れた。
「失礼します。外で何かあった…………ロ、ロリアデラ様!?」
「レベルト・レーアさんですね。以前に社交界で挨拶をいただいたかと思いますが」
「はい、レーア家当主のレベルトでございます」
「申し訳ありませんが、これから六魔天人の2人がこちらに襲撃に来ます」
「襲撃!?」
「六魔天人のラロジエがシャルリット・レーアさんの武器『不視ノ非真』を狙っています」
「シャルの武器を……」
シャルリットさんが脇に持っていた不視ノ非真を誰にも渡さないというような感じで胸の前で抱きしめた。
「私たちの陣営はバンジャック側の勝手をこれ以上許さないためにここで六魔天人の2人を対処します。そして後日バンジャックには本日起こったことを突きつけ今後勝手なことはしないように言うつもりです」
「なるほど……私たちはどうすればよろしいのですか?」
「シャルリットさんにはここに残っていただきたいと思います。闘技場で戦うのが一番被害が少ないと思いますので、当然私たちもここには残ります」
「娘を守っていただけるのであればロリアデラ様のご指示に従います」
さすがリア、すんなり納得してもらえた。オレが説明していたら何を言ってるんだって怒られてそう。
「このあとですがシャルリットさんには外に出ていただきます。それでラロジエの相手はまずここにいるヘルミーさんにしていただきます」
「えっ!? なんでヘルミーが……」
シャルリットさんからしたら不思議だろうな、リアがいるのになぜヘルミーが対応するのか。
「ただヘルミーさんでは対処しきれないかもしれませんので、その後の対応は私の恋人でもあるこちらのヒーロさんにしていただきます」
「こ、恋人!?」
わざわざ言わなくてもいいのに。これで人族のいろんな人にオレがリアの恋人であることが知れ渡ることになるかもしれない。
「ヘルミーは普段オレと暮らしていて一緒にトレーニングをしているんですが、今回来るラロジエという魔族がちょうどいい実戦の相手だったのでヘルミーにその相手をしてもらいます。ただ、リアも言ってましたがヘルミーでは途中までだと思うのであとはオレが引き受ける感じです」
「ヘルミーさんは普段から私の側近のシーやラーとも訓練をしていますのですぐに倒されるようなことはないと思います」
「ヘルミー、あなたいったい……」
さて、のんびり会話していると六魔天人の2人が近くまで来たみたいだな。
「どうやら近くまで来たみたいなので外に出ましょうか」
「あの、私も一緒に出てもよろしいでしょうか。娘が心配でして」
「大丈夫ですよ。オレとリアがいますから側にいてください」
「ありがとうございます」
オレたちが外に出るとさきほどまで観客の声が響いていた闘技場がしんと静まり返っていた。
「ヒーロさん、あの武器を出すまでの1分ぐらいですが足止めをお願いしてもよろしいでしょうか」
「了解」
「あのっ! それでしたら私がやります!」
「シャル……」
「ヘルミー、あなたに何があったのかはわからない……けど、今日のヘルミーを見ていたらどれだけ訓練をしたかはわかるわ。ただ、私も学院選抜の優勝者よ! 何もせず守られるだけでは納得しないわ!」
「了解ですわ。足止めはシャルにお願いします」
「うん、任せて」
「それだったらシャルリットさんはヘルミーが武器を手にしたらすぐにこちらに戻るように、巻き添えを食らってしまうので」
「はい、わかりました」
ここでオレたちの目の前にある舞台のところに明らかに龍族が人化したような背中に翼が生え尻尾もあり緑色のごつごつしたような肌の魔族が降り立った。
もう1人のミノタウロスは別行動か、であればあっちの上空にワープホールを作ってダドさんに来てもらうか。
「なんだぁ、ロリアデラがいるじゃねぇか!」
「ラロジエ、あなたのやることは筒抜けですよ」
「けっ、どうりで人族が少ないと思ったぜ」
「あなたの欲しい武器はこちらにありますが、どうしますか? ちなみに、今回私は手を出しません」
「はぁ!? どういうことだ、ロリアデラが手を出さないとは!?」
「私は武器には興味ありませんので。ただし、ここにいる人族の方々は抵抗しますが」
「くっくっくっ、なるほど。なら、無理やり奪えばいいということだな」
「あなたにそれができるならですがね」
「なめんじゃねぇ! そんなガキども一瞬だろぉが!」
ここでヘルミーとシャルリットさんが前に出て舞台に上がっていく。
「あなたの相手はわたくしたちがいたします」
「わ、私の大事な武器は渡しません!」
「けっ、俺も舐められたもんだな」
魔王の側近が人族の子どもから堂々と相手するとか言われたら、たしかに舐められてる感じに思うだろう。
「シャル、1分で大丈夫ですわ。わたくしが武器を召喚すればあとはわたくしが相手いたしますので」
「うん……」
シャルリットさんが少し前に出て不視ノ非真を脇に持ち構える。
「おいおい、まさか1人ずつ相手をするのか。本当に舐められてるじゃねえかよ!!!」
シャルリットさんは先手を取られるわけにはいかないと思ったのか、素早く不視ノ非真を抜刀しラロジエに対して斬撃を飛ばした。
ただ、ラロジエぐらいの実力者からするとその斬撃は大したことはなく、実際手を払っただけで対応できた。
「その程度でよく戦いをいど――――ん? なんだあれは……」
「えっ? ヘルミー……」
ヘルミーは少し下がったところで右手を真上に掲げ、しばらくするとヘルミーの上5mぐらいのところにぼんやりと黒い召喚陣のようなものが現れた。
召喚陣は徐々にハッキリしていき直径3mぐらいになると、今度はその召喚陣が黒い靄のようなものを纏い始める。ここでヘルミーがいつものとは違う低いトーンの声で詠唱を始めた。
我の声を聞け
我は血を求めるものなり
すべてが我に刺されるだろう
すべてが我に潰されるだろう
喜べ 我が血の雨を降らせてやる
喜べ 我がすべての血肉を食らいつくしてやる
みなが我に血を捧げるぞ
さあ 我とともに行こうぞ
姿を見せよ ―――― 闇杖『ヴァジキゲル・ルゲキジァヴ』
ヘルミーの詠唱が終わると黒い召喚陣から禍々しい色をしたハルバードがヘルミーの右手に納まるように降りてきた。
ヘルミーはハルバードを持つと一気に力が増大し、ヘルミーが纏ってる空気も変わっていく。
「なんだぁ、あのハルバードは……いいねぇ、いいねぇ、あの武器もついでに頂くとしようか」
結局ラロジエも興味本位でヘルミーが武器を召喚するのを見ていたから時間稼ぎはそこまでいらなかったようだ。
武器を手にしたヘルミーはラロジエに向かって空いている左手の手のひらを上に向け手招きをするようなジェスチャーをする。
「そこのトカゲ、我が相手してやろう。お前の血を我に捧げよ」
うーん、あの武器を持ったときのヘルミーにはいまだに慣れない…………声もいつもと違うしあのかわいいヘルミーはどこへ行ったんだろうか。
ヘルミーの武器が初めて登場してから4カ月経ってようやく名前を出せました。
次話はダド vs. タンになりますので、武器の詳細はその次になります。




