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競能会 本選 - 3

 本選の1回戦が終わったあと、30分ほどの休憩時間に入った。


「結局、こっちの控室はオレたちだけになったな」

「やはり選抜の方は違いますね」

「何度も言うようだけどヘルミーのほうが基礎力は上だから何とでもなるよ」

「はい、わたくしも負けるつもりはありませんわ。何と言ったって結果を出さないとヒーロさんにお願いごとができませんからね」


 お願いごとか……これまで半年ぐらいヘルミーはわがままも言わずにトレーニングに明け暮れていたから、何かしてあげたい気持ちはあるけど。


「さて、次のトリーヌさんだけど。さっきも言ったけど影縫いの術はくらってもいいから。ただ、相手に気づかれないように体のどの部分が動くのか、もしくは動かせそうかだけは認識しておくように」

「もし全身が動かなければ」

「まぁ、そのときは魔法を使ったらいいよ。ヘルミーの頭上を覆うように土なり植物なりを少しの間出して自分の影が消えるようにしたら動けると思うよ」

「なるほど、影が無くなれば良いのですね。その程度の魔術なら動かなくても出せますから大丈夫そうですわね」


 動けないことはないと思うけどね。あの子とヘルミーの実力を比べたときにヘルミーの身体強化であれば突破できそうだし。


「そろそろ行くか」

「はい!」


 オレとヘルミーは控室を出て、2回戦つまり準々決勝の1試合目のために舞台のほうに向かった。

 トリーヌさんは先に舞台の側で待っており、オレたちが着くとしばらくして審判の人がマイクを持って舞台に上がった。


「皆さんお待たせしました、それでは準々決勝1試合目を始めていきたいと思います! ――――予選からの出場で唯一1回戦を勝ち上がったヘルミー・ハウラプト!!! そして対するは、珍しい能力を使い1回戦を難無く勝ち上がったアヤメ・トリーヌ!!!」


 名前を呼ばれた2人が舞台に上がっていく。2人が5mほどの距離を取り中央のあたりで立ち止まるとトリーヌさんのほうは不敵な笑みを浮かべていた。


「ふふ、私はシシさんのようにはいかないわよ」

「…………」


 1回戦の試合を見て何か戦い方を変えてくるのか、もしくはそのままなのか能力が忍術なだけに何をしてくるのかわからない。


「それでは準々決勝1試合目…………はじめ!!!」


 試合開始の合図とともにトリーヌさんは1回戦の試合と同じように体の前で印を結んだ。


「忍法『影縫いの術』!」

「くっ……」


 予想通り1回戦と同じく影縫いの術だったが、ヘルミーは控室で言っていた通り避けることはせずそのまま食らった。

 やはりあの感じだと影の一部しか指定できない感じだな……おそらく腕を中心に止めてるようだけどあのぐらいなら間違いなくヘルミーは力づくで動ける。


「悪いけどさっさと決めちゃうよ…………忍法『分身の術』!」


 おお、5人に増えた。分身の術も使えるのか、やっぱり忍術は能力としてはかなり優秀な気がする。

 ただ、トリーヌさんがまだ未熟なのか気力の流れとか気配の感じからどれが本物かどうかわかってしまう、たぶんヘルミーでも見分けがつくんじゃないかな。


 5人のトリーヌさんがヘルミーを素早く囲み攻撃を仕掛けようとしたが、影縫いを食らっているヘルミーは身体強化をして右にいる本物のトリーヌさんのほうを向き殴る態勢を取った。


「えっ!? なんで――ぐっ!!!」


 トリーヌさんはヘルミーに殴られる前に両腕をクロスのような形にしてヘルミーの拳を受けたがその衝撃で5mぐらい後ろに下がることになった。そして、さきほどまでいた分身もヘルミーに攻撃を与えることなく消えた。

 ヘルミーはすかさずトリーヌさんに近づこうとすると、トリーヌさんも素早く手を動かし何かしらの印を結んだ。


「火遁・火球の術!」


 今度は火遁か、あの感じだと他の属性もありそうだからやはり忍術は使いこなせればヤバイ能力になりそう。

 トリーヌさんの目の前にファイアボールのような火の玉ができヘルミーに向かって飛ばされた。ただ、ヘルミーはそれを見てもそのまま直進してトリーヌさんのほうに向かい火の玉を殴った。


「えっ!? えぇぇぇ!!!」


 ヘルミーに殴られた火の玉はそのまま霧散した。

 ヘルミーの拳は気力で守られているからあれぐらいの威力なら火傷もしないだろうけど、迷いなく殴りにいったな……オレが言うのもなんだけどあれだと本当に脳筋な戦い方だな。

 

 そして、ヘルミーはそのままトリーヌさんの間合いに入り、さきほどと同じように右手で殴ろうとしてトリーヌさんがガードの構えを取ったところで、すかさず攻撃する手を左手に切り替えトリーヌさんの脇腹に打撃を入れた。

 フェイントを入れたせいで威力は100%ではないが殴ったところが脇腹の骨のないところだったからかトリーヌさんは脇腹を抱えるようにしてその場に倒れた。

 トリーヌさんは自分で生活魔術の治癒ができないぐらい苦しんでいたので審判がこれ以上続行できないと判断したのか近づいてくる。


「そこまで! 勝者、ヘルミー・ハウラプト!!!」


 トリーヌさんの忍術はいろんなことができるだろうけど、やはり一つずつの質が低いため食らったとしても対応ができてしまう。

 結局のところ能力者は土台がどれだけしっかりしてるかが大事になる……まぁ、そんなことを言ってるオレは能力者じゃないんだけど。


「お疲れさん」

「はい、冷静に戦えたのが良かったですわ」

「やっぱ実戦の訓練をしているだけはあるな」

「シーさんやラーさんのほうがやはり凄いですからね」


 今回はこうやって同年代の子と実際に比べることができて育て方が間違っていないことが確認できたからオレとしても良かった。

 オレとヘルミーはそのまま控室に戻り、次の試合のアーノエル君を見ることにした。


「ヒーロさん、やはり絶対防御の上から殴る感じになりますか?」

「ヘルミーの場合は魔法よりも殴ったほうが威力が出るから、絶対防御に対しては間違いなく殴ったほうがいいだろうな」

「周りから見たらわたくし脳筋ですよね……」

「さっきの戦いを見て思ったけど脳筋だな……オレがそうさせてるんだけど」

「シャルにどう思われているんでしょうか……」


 ヘルミーの変わりようについてはオレのほうにいろんな疑いをかけられていそう……下手したらものすごく嫌われているかも。

 そんなことを考えている間に次の試合が始まろうとしていた。


「今度は絶対防御を使ってくれるかな」

「同じ選抜の方ですからね」

「さっきはああ言ったけど実際殴るかどうかは見てから判断するか」


 次のロールさんとアーノエル君の試合はロールさんが先手で魔法を放ち続けて、アーノエル君はその場から動かずにそれを絶対防御で受け止めた。


「なるほどね……」

「どうでしょうか?」

「あれだったらオレのカードやアナの結界の能力のほうが防御力は上かな」

「比べる相手が違うような……」


 絶対防御か……たしかにアーノエル君の能力者としての実力から考えるとかなり上の防御力をもった結界だと思う。

 ただやはりアーノエル君の実力が追いついていないので能力が名前通りの力を発揮できていない。


「やっぱり作戦は殴るでいいかな」

「どのくらい殴ればよろしいでしょうか」

「ヘルミーの威力で殴れば最初は受けられるだろうけど、数分も殴ればおそらくアーノエル君が絶対防御を維持できなくなって本人に衝撃が届くと思う」

「なるほど、たしかに維持するだけでも体力はいりますでしょうからね」

「もしくは、途中でアーノエル君がレイピアで攻撃してくるかも」

「その場合は……」

「レイピア自体殴ったらいいんじゃないかな。あのレイピア、たぶん試合用だと思うし」

「はは、やはり脳筋ですわね」


 襲撃のことを考えると、決勝に親友が上がってこればヘルミーの「試合」としてのこの戦い方は次が最後になる。

 さすがに襲撃してくる龍族相手に殴るだけではどうにもならないからあの武器を出さざるを得ない、ヘルミーの本番はそこからだな。


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