アレクルトの恋 - 3
久しぶりの「アレクルトの恋」ですが、エリナ視点です。
「はぁ……意味が分からない……どう報告しろって言うのよ」
アリュアートさんとヒーロさんたちが帰られてから私は自分の仕事部屋でヴァレールさんに報告する調査結果をまとめようとしていた。
「マップ自体は変わっていなかったしトラップが少し増えていただけ……結論、普通のダンジョンってことでいいのよね……10層までたどり着いていないけど」
今回の調査の目標が10層までのマッピングだから仕事が完了していないように思うんだけど、このまま報告していいものか。
「あぁぁ、とりあえずヴァレールさんに報告しよう。ロリアデラ様が絡んでいる以上早く報告したほうがいいでしょうし」
はぁ……アレクルトに告白しようと思ったけど、その前にいろいろと起こり過ぎてそれどころではなくなっちゃったな……。
さっそく私はヴァレールさんに報告するためアベラルド家を訪れ、現在ヴァレールさんと向かい合って座っている。
「えーと……すいません! 結論から言うと10層まで行けませんでした!」
「今回は大変だったみたいですね、アレクルトから聞いていますよ。窮地に陥ったこと、救援の方々のおかげで助かったことを」
あぁ、アレクルトが先に状況を説明してくれていた……アレクルト、ありがとう!
「力不足で申し分けありません。マップ自体は変わりなかったんですが、トラップがところどころ配置されていまして……その中でも転移トラップが問題でして」
「マップの件は9層まででも十分です。しかし、調査団が追い込まれるほどだとダンジョンはまだ公にできないですね」
「えーと……その件なんですが、どうやらいまは大丈夫みたいです。トラップも普通のものしかなくなったみたいで……」
「え? そうなんですか?」
「今日の朝早くに昨日救援に来ていただいた方とアリュアートさんが庁舎に来られたんですが、どうやら魔王のロリアデラ様が絡んだそうで……」
「ロリアデラ様が!? というか、ロリアデラ様は人族大陸に来られているのですか!?」
ああ、これどう説明しよう……。ロリアデラ様はたぶん転移門を使わずにヒーロさんのあの力で来られたんでしょうね。ロリアデラ様の件はもうアリュアートさんにぶん投げても良さそうな気がしてきた。
「ロリアデラ様の件についてはアリュアートさんのほうが詳しいと思います」
「たしかに、アリュアートさんはロリアデラ様とお知り合いですからね。うーん、しかしダンジョンはどうしましょうかね」
「もし良ければもう一度調査団を派遣するのはいかがでしょうか」
「まぁ、それがいいですよね。9層まではマッピングできているわけですし」
よしっ、うまくまとまりそう!
「一週間後ぐらいにもう一度調査をお願いできますか?」
「はい、もちろんです」
ふぅ……乗り切ったぁ。次の調査はヒーロさんのおっしゃっていた通りだと問題ないだろうしひとまず落ち着いたかな。
私はこのあと軽くヴァレールさんと話をしてから部屋を退室した。
「エリナさん!」
「ん? あぁ、アレクルト。ヴァレールさんに状況を伝えていただいていたみたいで助かりましたよ」
「いえ、それぐらい大したことないです…………あの、少しお時間大丈夫ですか?」
「えぇ、いいですよ」
「私の部屋に来ていただけますか?」
アレクルトに連れられ彼の部屋まで移動する。アベラルド家自体は何度も訪れているけど彼の部屋に行くのはこれが初めて。
へぇ、ここがアレクルトの部屋なのかぁ…………おっと、ジロジロ見てるのがバレちゃう。
「アレクルト、改めて今回は助かりました」
「いえ、自分はただエリナさんのことが心配だっただけです」
「今回はそのおかげで命拾いしたんですから……まぁ、普段は多少心配し過ぎな部分もありますけど」
「――――あの! エリナさんにお話しがあります!」
「はい?」
ま、まさか、とうとうこのときが!?
「エリナさん、私はあなたが支部長になられて挨拶のためにこの家を訪れたとき初めてあなたとお会いしました」
懐かしいわね、2年ぐらい前になるのかな。アレクルトは今よりもおどおどしていて頼りない感じだったな。
「それから私は少しでも男らしく頼りになれるように頑張ってきたつもりでした……」
まだまだ頼りないけど、あなたが頑張っていることはもちろん伝わっているわよ。
「でも、まだまだ足りません……あなたの隣に立つにはまだまだ資格なんてないかもしれません……」
私の隣にいるのに資格なんていらないの。
「でも……私はもう言わずにはいられなくなりました――――私はエリナさんが好きです! 初めて会ったときから好きでした!」
「アレクルト、実は私も今回の仕事が終わったら伝えようと思っていました――私もアレクルトのことが好きです」
「えっ!? 本当ですか!? 私なんか……」
「もぉ、自分のことを『なんか』なんて言わないように。あなたは十分立派なんですからね――何と言っても私が好きになった男なんですから」
「エリナさん!!!」
アレクルトが私を抱きしめ、私も彼を抱きしめた。そして、アレクルトが涙を流しているのに気づくと、つられて私まで涙が流れてしまった。
本当に良かった、アレクルトにこうして伝えることができて。
一度は諦めた。もうアレクルトに会えなくなると思った。
でもこうして私はアレクルトと抱き合えている、彼のぬくもりを感じることができている。
創造神様、私に彼の隣で生きる機会を与えてくださってありがとうございます。
アレクルトと恋人になったあと、私は騎士団庁舎に帰ってきて高揚した気持ちを落ち着かせるために訓練場へ来ていた。
「支部長!」
「ん? クシィ、どうしたの?」
「今朝、ヒーロさんがここに来たんですか? 隊長から聞いたんですが」
「えぇ、そうよ」
「私も呼んでくださいよぉ」
ああ、この子はヒーロさんのことを気に入ったのね。今までいい人がいないとかさんざん言っていたのに、よりにもよってヒーロさんに目をつけるとは。
「クシィ、残念だけどヒーロさんには恋人がいらっしゃるみたいよ」
「まぁ、あれぐらいの方なら1人や2人いてもおかしくないと思いますよ」
この子、そこは気にしないのね。
「それが、ヒーロさんはあのロリアデラ様と恋人みたいよ」
「へぇ、ロリアデラ様かぁ………………えぇぇぇ!? あの魔王のロリアデラ様!?」
「そう、あの魔王のロリアデラ様よ」
「――――ということは、ヒーロさんの恋人になればロリアデラ様と親密になるということだから、残りの人生楽勝ということでは」
「…………」
私もこの子ぐらい図太く生きないとダメなのかな。でも私も次期領主の人が恋人だからロリアデラ様ほどではないにしても十分な気がする。
「それはそうと、一週間後にもう一度あのダンジョンに潜るからね」
「えっ、あんなダンジョン嫌ですよぉ」
「今度は大丈夫よ。ヒーロさんたちがダンジョンマスターに会って普通のダンジョンにしてくれてるそうよ」
「……? 支部長は何を言ってるんですか?」
やっぱりそういう反応になるわよね。
「とりあえず、同じメンバーでもう一度潜るから。それに今度は1日で帰ってくるから前よりは楽よ」
こうして私たちは一週間後に同じメンバーでダンジョンの調査に向かい、10層の階層主の手前までトラップが1個もなく10年前とまったく変わっていないことが確認され予定通り1日もかからず調査を終えることになった。
まだまだ後の話ですが「アレクルトの恋」はあと1回は書きたいと思っています。




