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相棒との出会い

 転生してから3年が経ったころ。


 アースターの力を使いこなすトレーニングを引き続き行っていたが、いまだにアースターの力を1割も引き出せていない。

 創造神様から受けた仕事もあったが、そもそも能力がないのでこの状態で森から出るわけにはいかないので、少なくともアースターの力を7、8割ぐらいは引き出せてから森を出ようと考えていた。仕事自体は死ぬまでにという約束だったのでまだ何も言われないだろう。

 

 そしてこの日もトレーニングを終え、食料を求めて森をうろうろしていた。

 たしかさきほどこっちのほうから気配を感じたような……。気配を感じた方向へ歩いていると離れたところから音が聞こえた。気づかれないように気配を消して近づき様子を伺うと、オーガとホワイトタイガーが対峙していた。

 うーん、オーガは食べたくないので食べるとしたらホワイトタイガーのほうかな。ただ、ホワイトタイガーのほうは前足をケガしてるみたいで優勢なのはオーガか。仕方ない、オレが先にオーガをやるか。


 方針を決めるとすぐに行動した。気力の塊を出しオーガに向かって腕を振るう、そしてそれは木を避けるように進みオーガの体を上下に分け、オーガは意識がなくなり死んだ。

 ホワイトタイガーは何が起こったか分からないというような表情でキョロキョロしていたが、オレが森の中から出ていくとこちらをにらみ様子を伺っている。オレは気にせずオーガから魔石を取り出し、オーガの死体を火で燃やして消した。

 さて、次はこのホワイトタイガーだが思っていたより痩せていて食べても美味しくなさそう……。そのようなことを考えてると先にホワイトタイガーが動いた。


「!?」


 おすわりである。

 えーと……あれは、抵抗しません的な感じなのかな? さらに、ホワイトタイガーは何かしらの力を使いオレの前に魔法陣っぽいのを出した。一瞬警戒したがその魔法陣から何か出てくるわけでもなくしばらく様子を見ていた。


『私と契約をしていただけますか?』

「えっ!?」


 どこからか頭の中に声が聞こえてオレは辺りを見渡したがホワイトタイガー以外誰もいない。


「契約? オレに話しかけてるのって誰?」

『あなたの目の前にいる虎です。この能力陣は私の能力によるものです』


 改めて目の前にいる虎を見ると、何となくだが何かを求めるような目でこちらを見ている。


「これは自分の能力なのか?」

『はい、私は魔物ですが、能力を持っています』

「魔物が能力を持っている可能性もあり得るのか……? ところで、具体的にどんな能力なの?」

『能力は、相手と主従関係を結ぶという能力です。ただし、使用できるのは1回限り』

「ん? それはオレが主でいいよな?」

『はい、この能力は私が仕える形になります』


 なんかすごい能力だな。主を選ぶってテイマーの逆だよな。それにしても、異世界に来て奴隷やメイドさんではなく虎と主従関係か……。


「その能力って何かいいことあるのか?」

『主には、私が側に仕える以外変化はないはずです。ただ、私は主の影響を受けます。主が強ければ私もそれに伴い修行次第では力を上げることができますし、他にも主に合わせてできることがあります。ただし、主以上に強くはなりませんし主に逆らうこともできません』

「変な能力を持ってるよな?」

『自分でも変わってると思いますが、ようやくこの能力を使うときが来たとあなたを見て感じました』


 オレにとって契約をして損することはないか……。


「それって契約したらお前とこんな感じで話せたりする?」

『はい、可能です』


 契約するで確定だな。オレはこの3年アースター以外と話していないので実のところものすごくつまらなかったし寂しかった。


「そっか、じゃあ、契約するか」

『自分から提案して言うのもなんですが、いいのですか?』

「いいよ。話相手にもなるから」

『なるほど、ではお願いします。その能力陣に触れていただくだけでかまいません』

「了解。これでいいかな」


 オレの手が能力陣に触れるとそれが輝きだし消える。すると目の前にいたホワイトタイガーも少し輝きだしそして元に戻った。

 自分の体に変化がないか見ていると、見た目は何も変わっていないが何となく目の前にいるホワイトタイガーとつながっている感じがした。


「なるほどね、主従関係ってこういうことか」

『はい、主様との間に繋がりを感じます。それに強くなれそうな気がします』

「これって、オレが死んだらお前も死ぬとか?」

『はい、そのはずです。逆はないですが』

「そっか……それよりそのケガを治すよ」


 オレは目の前のホワイトタイガーのボロボロになっている前足を生活魔術の治癒で治していく。


『主様は回復の能力もお持ちなんですね?』

「いや、オレは能力を持っていないよ」

『え……でも、この治癒は回復の能力では?』

「これは生活魔術の治癒を使っただけ。どうやら基礎がしっかりしてると生活魔術のレベルも上がるみたい」

『はぁ……?』


 それを聞いてホワイトタイガーは首を傾けどういうことだろという表情をしていた。


『では、さきほどオーガを切断した能力や燃やした能力は?』

「切断したのはオレの気力をこんな形にしたやつ」

『え? 気力をですか?』


 オレは手元にトランプのような形をした薄い板状の気力の塊を出した。


「これがそれ。これを使ってさっきのオーガを切った。ちなみにこれはどんな大きさにでもできるよ」

『はぁ……?』


 ホワイトタイガーは手元に出した気力の塊を見ながら、それが何なのか理解できていない感じだった。


「で、オーガを消したのは治癒と同じく生活魔術の火で燃やした」

『はぁ……???』


 創造神様にもらった知識によると生活魔術の治癒はかすり傷が治せる程度で火はマッチ程度しか出ないのが普通らしいので、このホワイトタイガーが生活魔術を使えるのであれば困惑する気持ちはわかる。


「まぁ、その辺の詳しい話は別の機会にゆっくりするとして、まずは呼び方を決めるか」

『私は主様で大丈夫ですが』


 うーん、そうだな……主様とかご主人様とかよりマスターのほうがなんとなくカッコいいよな。


「『マスター』にしよう!」

『承知しました。それではマスターで』

「で、名前はある?」

『いえ、私には名前はありませんので、マスターが決めていただければ』

「性別は?」

『メスです』


 メスか……オレとしてはこれは一択かな。


「それじゃ、ミコで」

『ミコですか? 承知しました!』


 ミコはうれしそうに尻尾を左右に振っていた。ミコという名前はオレが地球にいたころ実家で飼っていた犬の名前である。

 まぁ、ホワイトタイガーだけどかわいい名前でもいいよな。


「ところでミコは何歳?」

『生まれて6カ月ぐらいです』

「……その大きさで?」

『はい!』


 今で2mぐらいあるよな? このままいくとどこまで大きくなるのだろう……。




 それからオレとミコは一緒に家へ戻ってきた。


「この庭、魔物とか入ってこないからここでゆっくり寝たらいいよ、雨のときはあっちの軒下か家の中に入るかでいいから」

『魔物は入ってこれないのですね、ありがとうございます』

「そういえば、ミコは入れたな?」

『えぇ、問題なく入れましたね。マスターと契約したからでしょうか?』

「まぁ、それしか考えられないよな。それより何か食べるか?」

『よろしいのですか?』

「焼いた肉とか干し肉ならある程度置いてあるからすぐに用意できるよ」

『ありがとうございます、いただきます』


 肉をミコに与え、オレは3年もの間まともな話し相手がいなかったのでかなりミコと話をしていた。


「話し相手がいるって素晴らしい!」

『ははっ、マスターに喜んでもらえて良かったです』

「それはそうと食料だな、オレとミコの分をある程度確保しないと」

『すいません、たくさん食べてしまい』

「それは気にしなくてもいいよ。とりあえず、明日は狩りを中心にするか。ミコは動けそうか?」

『はい、大丈夫です! 以前よりも動けます』




 次の日、さっそく狩りをするため別々で行動していたが、オレとミコは離れていても同じような感じで頭の中で会話ができたのは大きかった。そしてお互い狩りをしたあと庭に戻ってきていた。


「やっぱりミコもいると集めるの早いな」

『ただ私は料理ができませんので……』

「まぁ、それは仕方ないよ。ミコは今日の分そのまま食べるでしょ?」

『はい、私はそのままでも大丈夫です』

「それじゃ、それ以外を加工しますか!」


 こんな感じで狩りをすれば食料は大丈夫そうだな。それよりも魔物の数が減らないかが心配になってきた……ミコが育ち盛りだから。




 1カ月もすると痩せていたミコがいい感じに肉も付いてきて、毛並みも整い可愛くカッコイイ感じになっていた。


(モフモフ)

『あ、あの……マスター?』

(モフモフ)

『マスター……?』

「あ、あぁ、悪い悪い。夢中でモフモフしてたわ。何年も癒しがなかったからな」

『マスターが満足のいくまでしていただいてかまいませんが……癒しになりますか?』

「なる! ものすごく癒されるな。あとミコに抱き着いてると安心感が半端ない!」

『何か嬉しい反面恥ずかしいですね』


 ミコのおかげでオレには最高の癒しができた。














 私は生まれてからしばらくして一緒に行動していた親を亡くしました。

 その後マスターと出会うまでは単独で行動しており、生きるために必死でした。狩りをし、ときには逃げ、その日を暮らすために必死に生きていました。

 

 私は魔物ですが、なぜか能力を持っていました。このおかげで簡単な魔術などは使えましたが肝心の能力の意味が分かりませんでした。

 この【契約】の能力は狩りには役に立ちません。この能力は私には必要ない、能力を使わずに生き続ける、そう思っていました。


 そしてあの日、私はへまをしました。オーガとの戦闘の際に一瞬集中を切らしてしまい足をやられてしまいました。

 私は契約の能力をこのオーガに使おうかとも思いましたが、このオーガに仕えるぐらいなら死んだほうがマシだと思いました。


 私が死を覚悟したときある人族に命を助けられました。私はその人族を一目見て運命を感じました。

 命を助けてもらったから契約したわけではありません。ただ強いから契約したわけではありません。私は心の底からその人に仕えたいと思ったから能力を使いました。


 この能力を持っている意味をようやくそのときに理解しました。




 マスターと出会ってから1年ぐらいが経ちました。

 私のマスターは気を失うまで修行をします。私は非常に心配なのですがマスター曰くこれぐらいしないと目標に到達できないらしいです。


 今日もマスターは自身を追い込み気を失っています。私はマスターが倒れるとマスターを守るように側で横になります。

 私とマスターはある意味繋がっているので大丈夫であることはわかります、ただ……


『マスター、私は毎回心配です』


 私も一緒に修行をしているので出会った頃よりかなり強くなっています。

 マスターが強くなると私もより強くなれる可能性がありますが、私が強くなったところでマスターは強くなりません。


『マスター、あなたのために私は何もできないのでしょうか……』


 マスターは私を触って癒されると言ってくれます。ただ、私は何もしていません。マスターのために何かしたい……。


『そういえば契約の能力に「契約した主に合わせる」力がありましたね』


 この力は契約した主の種族になることができます。ただ、契約した相手が竜族とかであればこの力を使うメリットはあったのですが、主が人族の場合私も人族になれますが力が弱くなるので意味がないと思って忘れていました。


『いや……もしかしたらお役に立てるかも。私もそういう時期ですしマスターもお若いですからね』


 私は自分が発情期であることを思い出しあることを思いつきました。

 さっそく私はその力を使い体が変化するのを感じました。


「これで人族になれているのかな?」


 そして、その姿のままマスターが起きるのを待ちました。


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