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ヒーロ - 過保護な神のお気に入り

 ロントニーラスの創造神がやってきたがオレでは対応できずアースターが対応してくれた。


「ふぅ……」


 結局アースターを頼らざる得なかったか。


「ヒーロ、ありがとう」

「結局オレは何もできなかったよ。オーラウゴットが言っていたこともいまいちピンと来ていないし」

「いまはそれでいいと思うわ。ヒーロは実力だけならそこらの神族には負けないし、アースター様が傍におられればいずれその域に辿り着くでしょう」

「それはそうとこのあとはどうする?」

「……ヒーロ、短い間だったけど今日は本当にありがとう」

「えっ?」

「ロリアデラに体を返す時間が来たみたい」

「ん? どういうこと?」

「力が戻ったとはいえもともと表に出られる時間は限られていたの。本来であれば以前にこの世界に来た時点で消えていてもおかしくないぐらい傷ついていたから」

「そうだったのか……」

「ヒーロ、最後にいいかしら……」


 アルテナがオレに体を寄せ見上げた。

 何をしたいかは明らかだったのでアルテナの希望を叶えるためにアルテナにキスをする。


「ん――」


 アルテナって神様なのに本当に普通の人の生活に憧れていたんだな。


「――ぁ…………ヒーロ、私の希望を叶えてくれて本当にありがとう。――――それじゃ、私はもう行くわね」

「アルテナ……」


 オレにくっついているリアの体からアルテナの気配がなくなっていきいつものリアの気配に近づいている感じがした。


「リア、大丈夫か?」

「…………ヒーロさん?」

「リア! 元に戻って良かったぁ!」

「私は――――ヒーロさん、ありがとうございます」

「全然いいよ…………って、何があったのかわかるのか?」

「どうやらアルテナ様の記憶がそのまま残っているようです……」

「えっ!?」

「それにこの感じ――――ヒーロさん、目を開けたいと思います」

「大丈夫なのか?」

「おそらくですが……いけます」

「わかった」


 リアがゆっくりと目を開けそのままあたりをしばらく見渡したが何かが石化される様子はなかった。


「石化の力を制御できるようになっています!」

「リア、やったな!」

「はい……おそらくですがアルテナ様の記憶だけでなく力も残っていて私の力と合わさったことで制御できるようになったのでしょうか」

「うーん、正確にはわからないけどリアの力が上がってる気がするな」

「そうですね、以前よりも体の調子もいいのでもしかしたらそうかもしれません」

「まあ細かいことはおいおい見ていくとして、なんにせよリアの石化の問題がなくなったということはこれからリアはフードなしで普通に生活できるということだな」

「はい、長年抱えていた問題がようやく解決できました。これもヒーロさんのおかげですね」


 今回オレは何かをやった感じは本当にないんだけど……。


「とりあえずシーたちが心配しているだろうからいったん帰ろうか」


 このあとリアの部屋に転移で帰ってきた。

 部屋に戻るとリアはソファに置いてあったフードを手に取った。


「これの役割がとうとう終えるときが来ましたね」

「1000年以上使ったのならクサナギさんも満足でしょ」

「これに関しては役割を終えたことのほうが喜んでくれそうですね」


 それもそうか、そのフードは使われないに越したことはないからな。


「これはケイコとの思い出でもありますからケースに入れて大事に置いておきましょう」


 リアがそう言うとフードのケースがある衣装室に向かったのでオレもついていった。

 衣装室の端には直方体の形をしているフードのケースが置いてありそこには予備のフードが1つ入っていた。このケースは以前クサナギさんから聞いた話だとフードがなくなり空の状態でしばらく置いておくとフードが生成されるという謎仕様のケースである。


「このケースに2つフードが入るのは初めてか」

「そうですね、ケイコから受け取ったときはすでに1つは被っていましたからね」


 そう言いながらリアがフードをケースに入れフードの役目がこれで終わりを迎え――――!?


「えっ!?」


 リアがフードを入れると急にケースが輝きだし少しして光るのが収まった。


「いまのは……」

「ヒーロさん、これ見てください。ケースの上にこのような物が……」


 リアが手に取った物は封筒っぽい入れ物だった。


「――――!? これはケイコからの手紙ですね」

「……ということはこのケースにフードが2つ揃うと出てくる仕掛けになっていたとか?」

「考えられる理由はそれぐらいですね」

「で、どんなこと書いてあるの?」

「はい――――


 親愛なるロリアデラさんへ 


 この手紙をロリアデラさんが読めているということはこの子たちの役目が終えたのかな

 もしそうだとしたら心からうれしいわ、それにうちも友人であるロリアデラさんの人生の役に立てて鍛冶師冥利に尽きるわね


 ロリアデラさんの新しい人生がより良いものになりますように

 友人のケイコ・クサナギより


 追伸 この子たちは顔に掛かる部分の布を中に入れると防御力の高いフードになるからたまには使ってあげてね


 ――――ケイコ…………」

「手紙を残していたということはクサナギさんはリアがいつか石化の力をコントロールできると信じていたんだろうな」

「はい……私は本当にいい友人を持ちました」


 リアはさきほどケースに入れたフードを取り出しクサナギさんが手紙に書いてあったように顔の部分の布を頭のほうに入れるとその布が止められるような仕組みになっており、普段でも使えそうなかわいいデザインのフードになった。


「私はこの状態でこれを使い続けたいと思います」

「似合ってるよ」

「ふふっ、ありがとうございます。私は頭にフードがあったほうが落ち着きますね」


 1000年以上付けていたら体の一部みたいな感じだろうからないほうが違和感あるかもな。

 その後リアはシーたちや配下の人たちにフードがいらなくなったことを説明するらしいのでオレは家に帰って休むことにした。


 家の庭に転移で戻ってくるとなぜかみんなが待っていた。


『マスター!』


 ミコが勢いよく近づいてきてものずごくスリスリしてきた。


「みんなどうしたの?」

「ヒーロ、ミコがヒーロのことを心配して落ち着かせるのにかなり大変だったぞ」

「ミコさんがヒーロさんがいつもと違うとおっしゃっていたので私たちもこちらでソワソワしておりましたわ」

「ああ、まあいつもと違ったのは間違いないな」


 ミコは契約の能力でオレの精神的な部分も多少伝わるらしいから、追い込まれていたときはミコにも普段しない焦りとかが伝わっていたかもな。


「心配かけてごめん。危なかったのは事実だけどアースターが助けてくれたからオレは何もなく無事だったよ」

『マスター、マスター……』


 ミコはしばらくこのままだろうな。

 このあと夕食を取っているときにリアに起こったことなど何があったのか共有をしてオレはミコと一緒に寝ることにした。










 オレは気づくとなぜかアースターに膝枕されていて下からアースターの顔を見上げていた。


「なぜに膝枕」

「たまにはいいじゃろ」

「まあいいけど……」


 アースターに膝枕されると今回もオレは口以外微動だにできなくなっていた。


「アースター、今日ほっぺた触られたときに気付いたんだけど……オレってアースターに触れると動けなくなる?」

「そりゃそうじゃろ、これだけ力の差があればそうなるのも自然というものじゃ。お主は会話ができるだけ凄いんじゃぞ」


 凄いって言われてもなぁ……ほとんど何もできないのは変わらないからな。


「それはそうと、今日は助かったよ」

「あれぐらい大したことはない」

「オウラウゴットの件もだけど、リアのことも良くしてくれただろ」

「気づいておったのか」


 リアとアルテナがいい感じに融合できたのはアースターがうまくしてくれたのではとなんとなく気づいていた。


「アースターにはお世話になりっぱなしだな」

「ヒーロは何も気にせんでよい。儂が勝手にやっておるだけじゃし宿賃代わりとでも思っておけ」


 まあ気にしたところでオレにはどうしようもないんだけど。


「そういえばオウラウゴットを消したあとも何か力を使っていたみたいだけど?」

「あれは奴があちらの世界に保険を掛けておってな」

「保険?」

「こちらで何かあったとしても自身の世界に戻れるようにな」

「へぇ……で、アースターは何をしたの?」

「奴を世界ごと消してやったぞ」

「なるほど、世界ごと…………えっ!? 世界ごと消した!?」

「ヒーロに手を出したんじゃ、儂が見逃すわけないじゃろ」


 いや、ないじゃろじゃないでしょ。


「えっと、世界を消すことが軽い感じに聞こえるんだけど……」

「儂らからすると世界を創ったり消したりすることは大したことではないからな、それに元の状態に戻すこともできるしの」

「はぁ……」


 スケールがでかすぎてよくわからない。


「まぁ、アースターの判断であればオレは何も言わないけど、誰かから文句とかは言われないのか?」

「儂に何かを言うやつなんか同格の神だけじゃな、だからお主が気にすることではないぞ」

「それならいいんだけど」


 まさか目の前にいて世界ごと消しているとは思ってもみなかった。

 ちょっと申し訳ないけど元に戻せるという話だしこれ以上は気にしないでおこう……戻す機会があるかどうかは知らないけど。


「それにしても消滅の力は使いこなせていたと思っていたんだけどなぁ」

「神族以外の視点で言えばその認識で間違いはないぞ」

「そう言われても、あそこまで対応されて力に関して理解していないとか言われたらさすがに……」

「あんな奴の話なぞ気にするな、お主は消滅と同様に無の力をお主なりに使いこなせるようになればよい」


 いまオレにできることはそれしかないからそれを頑張るしかない……。


「儂が傍におるんじゃからヒーロは何も心配することはないぞ」

「了解……それにしてもアースターは神様なのに一人間のオレになんでそこまでしれくれるんだ?」

「…………」


 アースターがオレをジトっとした目でこちらを見下ろしているが……なんかオレ変なこと聞いたか。


「えっと、なんか――!? いふぁい……」


 アースターがオレの頬を軽く引っ張ったが地味に痛い。


「ふん、それも気にせんでよい。とにかくお主は儂の力を使えるようになるんじゃ、その後は儂に任せよ」


 アースターがそれだけを言い残しオレは目を覚ますことになった。

 力のことを言われてからちょっと引っかかっていたけどアースターの言う通りあれこれ考えても仕方ない。


「とにかくオレはこのアースターの力を使いこなせるように改めて今日から頑張りますか」


ご愛読ありがとうございました。


ヒーロの物語はまだまだ続きますがこの作品はこれにて完結とさせていただきます。

何度も再開すると完結詐欺になりますのでこの作品はもう再開いたしません。


第2部を書き始めたのは第1部で置いてきた魔女の呪いやキャラ周りの設定を書きたかったというのが大きかったのでそれが書けて良かったです。

計70万文字以上書きましたがここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。


最後に書いていない設定周りについていくつか触れておきたいと思います。


・アースターであれば他の存在にも入れるのでは?

 力という点ではアースターが力を抑えればいけそうですが、アースターという存在のでかさがあるため対象に入ると対象が耐えられず消えてしまいます。

 それをヒーロがアースターとの相性だけで入れているということでアースターがヒーロにものすごく興味を示しています。


・アースターがヒーロを育てている理由

 初めて興味を持った存在であるヒーロが何をしてどのように育つのかを視ていたいだけで、育った後はヒーロといろいろとするつもりです。

 今回触れましたが今のままでは自由に触れ合ったりはできないので制限がかからないぐらいには育てるつもりでいます。


・ヒロインの寿命

 ヒーロの恋人になれば自ずと寿命は無くなります。

 アースターはヒーロが悲しむことを避けるように勝手に動いているので恋人になってからある程度経つとアースターが寿命の概念を無くしています。


・ヒーロの子供

 ヒーロはすでに人族から外れて特殊な存在になっているので基本的に子供はできません。

 ただヒーロが子供を望めばアースターが良いようにしてくれるのでその場合はできます。


・エルミナ

 バージョン:エンジェルの他にバージョン:トラクトが存在します。

 バージョン:トラクトはエルミナも認識しておらず、レベル50000以上かつトラクトの意思でのみなることができます。

 この状態はトラクトがエルミナを操作しほぼトラクトと同等のためヒーロよりも強いです。

 ちなみにアースターはこの存在に気付いていますがヒーロ自身には関係ないので無視しています。


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